次期侯爵の決定
宰相の配下の報告はこうだった。
侯爵家は今次期侯爵発表の準備で忙しい。
あの家は特殊で子供が生まれただけでは跡取りにはならない。
養子をとることに躊躇がないという記録もあった。
魔法の実力で跡取りを決める。
ここまで跡取りの発表が無かった代も珍しいのではないかと思われる。
現在の侯爵である、魔術師団長が跡取りとして発表されたのは確か十歳の時のはずだ。
それがやっと決まったという事だろう。
侯爵家は使用人含め浮足立っていて、一族の魔法使いのみの集会の準備の話ばかりしているらしい。
宰相にとって侯爵家の跡取りが誰になるかという問題は興味がある。
竜殺しの英雄が跡取りとなった場合、国民に大きな人気があるため発言権が増してしまうかもしれない。
「今のうちに宮廷魔術師の発言を抑え込む仕組みを作らねばなあ」
配下は「仰せのままに」と言った。
侯爵家の考えは、跡取りを正式に決めてから祝賀会に臨みたいという事なのだろうと宰相は判断した。
「それでは、跡取りの発表とともにその祝いと竜討伐の祝賀会への要請をするように」
宰相はそれだけ伝えた。
侯爵家はその全体に魔法がかけられており、侯爵家の者が許可をしなければ本当の中身を見ることは不可能であることも知らずに。
* * *
「まあ、あなたの酷すぎる言動等もありましたが、これでめでたしめでたしですね」
配下に言われて、ウィリアムはちらりと自分の配下を見た。
宰相閣下が送ってきた者たちには適当なものを見せて、聞かせておかえり願った。
「まだ、ナナエルの名誉は回復していないだろう」
ウィリアムは言った。
「竜殺しの英雄の婚約者になるのです。一般的には名誉なことでしょう」
配下は言った。
「今まで、歴史研究科まで一緒に行く落ちこぼれ扱いだったお前が、竜殺しの配下だとわかっただけでお前が有能であると証明されると」
「それはっ!!」
「同じことだよ」
「彼女を幸せにしたいって言うのは勿論あるけれど、それとこれとは話は別だろう?」
「仰せのままに」
配下は頭を下げた。
それから「私が優秀だというのはどう知らしめれば?」と聞いた。
ウィリアムは「俺は魔法以外はぼんくららしいから、いくらでも優秀さを示すところはあるだろう?」と答えた。




