国王の耳に入る
宰相は国王陛下に正式な面会も申し込んだ。
重大な懸案であった暗黒竜の件もようやくウォード侯爵家の尽力もあって解決した。
竜を倒した英雄への褒章他懸案はあるが、国は落ち着いている。
そのためすぐに国王との話し合いの時間をとることができた。
宰相は先にあの後すぐに調査した資料を国王に渡しておいた。
侯爵家が静かすぎることは気になったが暗黒竜を倒したばかりで政略にせいを出す余裕はないだろうと報告書に記載はしなかった。
王は大きくため息をついてから言った。
「公爵令嬢は正式な婚約者ではない。
ただの貴族が勝手に仕事を引き受けて勝手に自滅した。
そういう事にできはしないか?」
最初から予測していた返事だ。
王は王子を擁護するか、少しの瑕疵なら飲むか、それとも王子を切り捨てるか。
王の直系の王子は一人しかいない。
だからこそ、婚約者に難色を示しても、学園で恋人を作っても見逃されてきた。
多くの側近がすでにいるのも彼が王になるのが規定路線だからだ。
王子を切り捨てることは無理と宰相も判断していた。
それであればもみ消すか、ある程度の小さな瑕疵だけ認めて終わらせるかだ。
瑕疵を認める場合、王子に若干の責を問う。
それしか選択肢はない。
宰相はそのためこのことについて調査をし、資料をまとめた自分に近しい部下たちの意見しか聞かなかった。
「その場合、公爵家とのある程度の軋轢は生じると思われますがよろしいでしょうか?」
「いたし方あるまい。
我が息子の将来には変えられぬ。
それに、こうなってしまえば正式な婚約白紙とならなくてよかったではないか」
公爵令嬢が候補から外れる。
執務で試したが能力不足だった。
執務はどんなに小さなものでも外部に漏らすことを禁じる。
それが落としどころだろうと王は言った。
王子は妃がとてもかわいがっている。
小さな瑕疵でもつけたくないという本音もあった。
この面会の後、宮殿でひっそりと布告がなされた。
公爵令嬢が婚約者候補から外れたこと。
代わりに別の令嬢が婚約者候補となったこと。
公爵家にもその知らせとほぼ同時に、ナナエルが能力不足だった旨と、婚約者候補として見聞きした一切の口外を禁止する旨の書状が届いた。
公爵家に届いた内容はそれだけだった。
これに一番怒ったのは公爵だともとある侯爵家の令息だったともいわれている。




