「ただの陰キャ」と見くびられていた私が異世界行ったら騎士団長!? 〜拾ったタマゴから生まれたドラゴンの赤ちゃんと一緒に魔王討伐しちゃいました!〜
17才の誕生日、園田 友美子は書店でその本の表紙をしばらく眺め、棚に戻した。タイトルと可愛らしいキャラクターのイラストを暗記して。
脳内で復唱する。
「ただの陰キャ」と見くびられていた私が異世界行ったら騎士団長……、拾ったタマゴから生まれたドラゴンの赤ちゃんと一緒に魔王討伐しました
…………だったっけ? 多分、大丈夫。そんな感じ。
書店の壁の時計を見る。友美子は腕時計も携帯電話も持っていない。
午後9時47分。書店に立ち寄り、8分経過していた。
次のバイトに行かないと……。
友美子は、高校への進学を両親から許されなかった。
何故か、両親が勝手に次々と決めてくるアルバイト。朝から深夜まで毎日繰り返す。
その報酬は全て奪われた。
小遣いはない。
本など買えるわけがない。
立ち読みする時間さえない。
友美子が生み出した方法は、暗記したタイトルと表紙のイラストから本の内容を想像することだった。
唯一の友美子の楽しみ。現実逃避。
ああ、小さかったころみたいに本が読みたいな……。
また「剣と魔法の世界」に飛び込んで、大冒険してみたいな……。
そう思いながら急いで書店を出たとき、雨が降り出した。
構わず自転車にまたがる。
既に身体は疲れ果てている。
こんな……、親からも忘れられた誕生日。
私が過労死したとしても……。
トラックに跳ねられて死んだとしても……。
「異世界転生」も「チートスキル」も「ざまあ」も無縁だと彼女は知っている。
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