誓いのキス
「これをどうやって…… 」
興奮と焦りでどうにかなりそうなハッピー先生。
ついにはくらっと倒れ込む演技を見せる。
興奮のし過ぎでくらっとくることもあるだろう。
だが嘘を吐くのも演技をするのも慣れていない彼女はすぐに立ち上がる。
「分かりました。でも信じてもらえるか…… 」
今までの経緯を詳細に語る。
聞き終えた彼女が念を押す。
「分かりました大河さん。最後に一つだけ確認させてください。
これが何か? どうやって手に入れたか本当に分からないんですね?
そしてあなたの目的は『聖女の涙』を手に入れること。そうですね? 」
ズバズバと俺の目的まで言い当てる。
さすがはハッピー先生。頭の回転が速い。
少々不安だったがきちんと伝わったらしい。
「そうです。俺の目的は『聖女の涙』祭りに参加したいと言うのはあくまで建前。
祭りまでに何としても探し出す必要が。
だからこそ僅かな手掛かりでこの島までやって来た。
俺にはどうしても『聖女の涙』が必要なんだ」
ついにすべてを告白する時が来た。
不覚にもまだ手に入れてない島の宝について漏らしてしまった。
これでもし彼女が島を守る為に嘘を吐いたら取り返しのつかない事態に。
それは即ちカナを助けられないと言うこと。
あれほど慎重に、決して真の目的を悟らせないようにしていたのに……
彼女は俺の真意をくんでくれるだろうか。
ハッピー先生を見る。
だがいつもの自信に満ちた笑みは消え暗い。
これでは余計不安になってしまう。
「ハッピー先生。俺はあなたを信用できなかった。
来てすぐにあなたにに相談しようか迷いました。でも俺はしなかった。
あなたに止められるのではないかと。結局あなたも彼女たちも信用してなかった。
俺は自分のことばかり。そのせいで無理矢理彼女たちを覚醒させてしまった。
俺は酷い人間です。
いくらカナのためとは言え自分の都合で動いてしまった。
だからって後悔はしてません。ゆっくりしていれば辿り着けなかった。
俺には、カナには時間がなかった。
この祭りが行われている間がチャンスだと。だから。だから俺…… 」
いつの間にか懺悔していた。
ハッピー先生は遮ることなく最後まで聞いてくれた。
それだけでも信用に値する。きっと彼女なら俺の味方になってくれる。
「大河さん大丈夫ですよ。神はあなたの罪をお許しになるでしょう」
優しく包み込むハッピー先生。
「ふふふ…… 大河さんありがとう。しかし自分を責めてはいけません。
あなたの判断は決して間違っていません。
来たばかりのあなたに『聖女の涙』について教えることはないでしょう。
今でさえ難しいのだから」
ようやく心の内をぶつけることが出来た。もうこれ以上隠しごとをしたくない。
ハッピー先生も本心を見せてくれた。
「ではハッピー先生改めて協力をお願いします。
『聖女の涙』について知っていることを教えてください」
全面協力を求める。
彼女も乗り気だ。
「絶対に悪用しないと宣誓し、外の者に無闇に言い触らさないと約束して下さい」
言われるまま従う。当然言い触らすはずはない。悪用だってするものか。
俺はカナさえ助けられればいい、それ以外に興味はない。
たとえ俺がどうなろうと。たとえ彼女たちがどうなろうと。
たとえこのマウントシーが無くなろうとも。島がどうなろうとも。
最初はそんな風に思っていた。でも今は違う。今は……
「ありがとうございます。その言葉に嘘偽りはありませんね? 」
「はい。俺を信用してくださいよ」
「それでは誓いのキスを…… あら冗談ですよ…… 」
気まずい展開。意識する訳ないがあのハッピー先生が冗談を言うなんて。
「私ったらこんな時に…… 」
赤くなった顔をエプロンで覆う。
「では作り方をお教えしましょうね」
ついに夢にまで見た『聖女の涙』に手が届く。
「作り方? そんな簡単に作れるもんなんですか? 」
「いえ、そう簡単に作れる訳ではありません。
まず材料集めから。実はこれが物凄く面倒で大変な作業なのです。
通常でしたら島を離れ探し回る必要があります。
まあ都会ならいくらでも揃うでしょうけど。
ここでは一週間以上かかると思われます。
ですが幸運なことに祭りの時期でお神酒があります。
このお神酒は祭りの為に作られるもの。
マウントシーにあるものと合わせて三本しか作られません。
そしてこの神聖なお神酒にあるものを混ぜる。
そして最後に蛇の毒を一滴垂らすと完成。
『聖女の涙』の出来上がりです。
「あるものとは? 」
「焦らないでください。今からゆっくり時間をかけて説明したいと思います。
夜もまだ長いですから」
癖なのか焦らそうとする。
我慢。これも俺を試してるのかもしれない。
「では説明します…… 待った。皆さんを呼んできてくれませんか?
ちょうどいい機会ですから全員に知ってもらいましょう」
緊急招集をかける。
続く




