重なる過去と現在
女同士の争いは激化する。
「私が一番信頼されてます」
「違うよ。僕に決まってる」
「二人とも冷静に。一番付き合いの長い私が有利」
「一日だけでしょう? 有利って何だよ? 」
「二人とも過去の大河を知らない。彼は私を求めていた」
「過去はここでは触れない約束では? 」
ブリリアントが正論を吐く。
「ハイそこうるさいですよ」
入ってくる早々に注意を受ける三人。
「皆さん最近弛んでますよ。祭りも近いですし気を引き締めて取り組んで下さい」
ミス・マームは思うのだった。未だかつてこんなことはあっただろうか?
物静かで穏やかで冷静だった面々がこんなにも取り乱したことはあっただろうか?
大河さんがこの子たちの心を氷解したのだろう。
だが果たして一連の大河さんの行動がプラスに働いたかは分からない。
逆に追い詰めて心を破壊してしまうようなことはなかっただろうか?
マイナスに働くこともあるのだから。ここは一つ慎重に見極めていく必要がある。
大河さんか。でも懐かしい。あの頃を思い出す。
似ている。大河さんはあの頃の彼に似ている。
私を救い出してくれた王子様。ってガラでもないけど。
彼は私たちを必死になって救ってくれた。
そして楽園に。この島に流れ着いた。
私は彼の意思を継ぎ子供たちを救おうとした。
でもやり方が正しかったかまでは確証が持てない。
副村長以下島の人たちの助けを得てマウントシーの少女たちを救う。
それがあの大河さんの出現で脆くも崩れ去った。
彼が正しかったのか。私たちが間違っていたのか。
今は遠い昔のあの頃を思い出さずにはいられない。
楽園に閉じ込められた五羽の蝶。
私もその一羽。
「ハッピー先生。ハッピー先生」
「どうしましたブリリアントさん? 」
「大河さんとアリアさんの姿が見えませんが」
「ええ連絡は受けてます。遅れるそうです」
「ええ二人で? 」
シンディーが誤解を生むような発言を繰り返す。
「やっぱりあの二人…… 」
「いえ二人ではなく別々にですからそれ以上は私も分かりません」
ざわざわ
ざわざわ
「はい、お静かに。それでは始めましょう」
二つの空席。
六人のうち二人が居なければ寂しい。
でもその寂しさを埋めるほど騒がしい少女たち。
たぶん大河さんは気づいてないでしょうね。
彼がどれだけこのマウントシーを変えたか。
楽園に突如現れた彼は果たして救世主?
まだ本性を現していない侵入者?
大河さんが真実を語ってるとは限らない。
それは彼だけでなく私たちも……
同時刻。
ハッピー先生の部屋。
部屋を離れ少女たちの元に向かったのを確認し中へ。
ごそごそ
ごそごそ
「あら何を調べてるのそんなところで? 」
閉まり切らないドアの隙間からアリアの声が聞こえた。
しまった…… つけられてたか。俺としたことがアリアの監視に気付かなかった。
アリアの奴め。邪魔をする気か?
あれ以来二人の関係は微妙。言葉も交わしてない。
アリアは元に戻ったようだ。
いやもう忘れたのだろう。あの日の出来事を。
あの時彼女はおかしかった。寂しそうだった。
シンディーを犠牲にしてまで俺と関係を持った。
そんな彼女にどう声をかければいいか分からない。
完全に元の関係に戻った。
「アリアか。何の用だ? 」
「まったく大河も大胆。ハッピー先生の部屋に入って何を探ってるのかしら?
そうね。先生が午前中会議室にいる今が絶好のチャンスでしょうね」
笑ってやがる。まったく油断も隙も無い。
「そう言うお前だって同じだろ? 」
目的は同じはず。だからどちらが先に来たかの差でしかない。
結局アリアは俺に頼るしかない。
「何を言ってるの大河? 」
慌てるアリア。まさか自分が優位に立っていると本気で思ってるのか?
そうだとしたら随分甘い。そろそろ頃合いだな。
黙っていてやろうかと思ったがその態度では仕方がない。
「俺は知ってる。お前がハッピー先生の娘ではないことはもうばれてる。
まったく騙しやがって。独身だったぞ」
「ふふふ…… 何のことかしら? 」
目を逸らしごまかすがもう言い逃れはできない。
「とぼけても無駄だ。信頼の置ける情報筋からだ。
まったく初めはお前の言うまま行動したが何かおかしいと思っていたんだよな。
俺を探り何をしようとしていた? 答えるんだアリア」
さすがに言い訳はできない。まさか分かる訳ないと高を括っていたのだろうか?
しかしこっちには優秀な情報屋がいる。もう言い逃れはできない。
後はせいぜい引き延ばすぐらいだが思い通りにはさせない。
覚悟しろアリア。
ついにアリアを追い詰める。
続く




