三つの伝説 カナとの関係
カナは意識を回復することなく今も暗い病院のベットの上。
俺はカナが目を覚ますようにできる限りのことをした。
それこそ何でも試した。ショックを与えたり話しかけたり太陽光を当ててみたり。
何か良く分からない薬まで試そうとした。この時は親族の者に止められたが。
そして最後に一か八かであのサバイバル生活で得た薬を試す。
少しだけ反応があった。目が一瞬動いた気がする。
皆大喜び。だがすぐにどうなると言うこともなかった。
また何の反応も示さなくなってしまった。
危険を承知で何度か繰り返したがそれ以上の反応は見せなった。
やはりだめか。
どうしたらいいんだ? 俺に出来ることがあるなら言ってくれカナ。カナ!
絶望する。
あの地獄では感じることのなかった絶望感。
今思えばあの世界では俺は恵まれていたのだろう。
癒され助けられ前を向けた。
それに引き換えカナはあの時のショックで眠り続けてる。
どうしたらいい?
なぜカナは目を覚まさない?
お願いだカナ。お前の声をいやあなた様の声をお聞かせください。
俺が情けない余りにお嬢様をこんな目に遭わせてしまった。
キスで済むならいくらでも。
涙を流せばいいと言うなら枯れるまで。
だからカナ。目を覚ましてくれ。カナ!
そうか……
一筋の光が見えた。
思い出したよ。島の者がからかい半分に教えてくれた伝説。
『聖女の涙』
事件後行方不明の翼が行きにしつこくカナから聞きだそうとしていた。
忌々しいあの振り返らずの橋の下に広がる闇。
俺は再びあのマウントシーへ。
すべてはカナの為。カナお嬢様にすべてを捧げるのだ。
再びグリーズ島に戻る決心がついた。
それからは事前準備に入った。
グリーズ島について文献を当たるが大した成果は得られなかった。
それでもある程度は見えてきた。
三つの伝説。
『グリーズ島の守り神伝説』
『聖女の涙伝説』
『グリーズ島の秘宝』
独自の通貨。グリーズアイランドドル。
他地域から持ち込まれ根付いた文化や風習、価値観。
島独自の結婚観。慣習。
マウントシーの館とそこに住む聖女。
一年に一度、夏に行われる陽祭り。秘祭とされている月祭り。
島の成り立ち。
この島を作ったと言われている英雄。
島に伝わるその他の言い伝え。
調査は半年以上かかりようやく確証を得る段階で再び島に舞い戻った。
俺は三つの伝説の一つ『聖女の涙』を求めこの島にやって来た。
しかし現在のところまだ何も手掛かりを掴めてない。
だからこうしてここの者。そう君たちから情報を得ようとした。
もちろん君たちの涙を集めていろいろ試してみた。
あの薬に混ぜたり舐めたり。
『聖女の涙』が君たちの涙だとは初めから思ってなかったが一応念のため。
分かっただろう。俺がどう言う人間か?
俺は彼女の為にカナの為にどんなことでもする覚悟だ。
どんな手を使ってでも『聖女の涙』を必ず探し当てる。
そうそれが俺の目的。使命だ。この島に来たのはただそれだけ。
分かったか? それから……
大河の独白はまだ続く。
「大河さん分かりました。何でも協力します。いえ協力させてください! 」
ドルチェはようやく許された。
ブリリアント、シンディー、ドルチェ。
大河の部屋に呼び出された三人は彼の独白によってすべてを知ることなった。
「あの…… 済みません」
ブリリアントが確認。
「あとの二人は呼ばないんですか? これだけ大事な話を私たちだけでは」
「僕もそう思う。ハッピー先生に報告を」
「いやハッピー先生にはだいたいのことは話してる」
「ではアリアさんとエレンさんにも…… 」
ドルチェを制する。
「アリアはまだ信用できない。エレンとはほとんど接点がないので今回は除外」
この判断は間違っていない。今はまだ三人だけでいい。
「大河さん。話に出てきた女性、カナさんでしたっけ。どう言った関係ですか? 」
ブリリアントが直球の質問を投げる。
「関係? うーんどう説明したらいいか困るが…… まあ一番大切な人…… 」
口ごもる。別に今さら恥ずかしがっても仕方ないが皆の目があるのでどうしても。
「私から説明しましょう」
ドルチェが後を引き取った。
まあ彼女に任せればいいか。
「一年前の様子から二人は幼馴染で大の仲良し。そして恋人ってところでしょう。
邪魔者のいなくなった今二人は結ばれる運命。残念ですがこれは紛れもない事実」
大げさだな。俺たちはただの…… いやまあいいか。
「そうでしょう大河さん? 」
「いやちょっと待ってくれ…… それは…… 」
ざわざわ
ざわざわ
嫌な空気が流れ始める。
「はいこの話はこれでお終い! 」
ドルチェが気遣い強制終了させる。
何となく間違って伝わった気がする。
俺とカナの関係は複雑だ。
恋人関係かと問われれば違うと否定する。
姉弟かと言えばそれも違う。血は繋がっていない。
簡単に言ってしまえばお嬢様と使用人。
ただそれをカナが良しとしない。
やっぱり幼馴染が一番しっくりくる。
どうであれ説明するのは難しい。
カナだって…… 幼き日の名残り。
カナは俺が呼びやすいから。カナカナ。
本名は別にある。
続く




