美しき肢体 被弾のアリア
放心状態で何も手につかない。
うう…… シンディーに振られてしまった。
多少強引だったのは認めよう。しかし受け入れてくれたっていいだろ?
グランドに戻るもシンディーが気になる。ボーっとしたままいつの間にか夜に。
どっと疲れた。
さあ切り替えて風呂にでも入るか。
うーん。やっぱりいい。
でかい風呂を一人で貸し切り。
温まったことだしそろそろ出るか。
十分も浸かってられない性質。
ガラガラ
ガラガラ
うん?
誰かが風呂に入ってきた。
もちろんこのマウントシーでは男はシードクターのみ。
ただ夜遅くに入るようなことを言っていて今まで会うことはなかった。
今日は何らかの事情で早く入ることにしたのだろう。
でも惜しいな。もう俺は限界。いちいち付き合ってられない。
湯煙の向こうから声がする。
「今晩は大河さん」
うん? 誰だ? 女の声?
「何の真似ですか? 女の声色を使うなんてシードクター」
反応が無い。気まずい雰囲気。
「慌ててどうしたんですか大河さん? 」
「その声はまさか…… いやその姿はシンディー? 」
体を清めて入るシンディー。
目は反応する。体も反応する。だが頭が追い付いて行かない。
「なぜ君がここへ…… 」
いつの間にか湯に全身を浸かり見えるのは顔のみ。
「なぜ君がいるんだ? 」
「夜に会いましょうと言ったでしょう。迷惑でしたか? 」
「いやそんなことはない。ある訳がない! 」
「良かった」
気にする素振りを見せない変わった少女シンディー。
そう言えば沐浴の件もあっさり流してくれた。
本当に何を考えてるのか分からない。
もはや俺の常識が通用しない。
一緒に入る気満々だが俺はもう限界。これ以上は体も理性も保たない。
「俺はそろそろ出るが……」
「残念ですね。ではまた」
あっさりしたもの。
結局彼女は何をしに来たのか分からない。
部屋に戻る。
もう本当に限界。予想外のハプニングに頭がパニック。
うん。これは間違いない。ただの夢だな。
男の願望とはこうも情けないものなのか。
あーあ。俺の頭はどうかしてるぜ。
翌朝。
ブツブツ
ブツブツ
「どうしたんですが大河さん」
ブリリアントとアリアが寄ってきた。
「いや何でもない。夜が…… 」
シンディーのあれは一体何だったんだ?
一晩中そのことで頭が一杯で寝不足。気が狂いそうだ。
やはりただの夢だったのだろう。
ふあああ! 眠い!
睡眠の重要性を実感する今日この頃。
「まさか大河さん。私をご指名ですか? 」
冗談は止せ。暑苦しいんだよと言いかけたところで止める。
さすがに言い過ぎだ。泣かれては困る。
「うんうん。いつかその日が来たら指名するつもりだ」
適当に流す。ブリリアントが納得したかは定かではないが……
「大河。また何か企んでるんじゃない?
今度はシンディーさんね。まったく単純なんだから」
アリアにはすべてお見通し。だが指示に従ったまで文句言われる筋合いはない。
だがこれはまずい。彼女に知られるのは良くない。
その為のブリリアント。彼女に情報収集を任せているが何と言っても人がいい。
アリアの追及に弱い。成す術なく漏らしてしまう。
「ハイそこ。お喋り禁止。練習再開しなさい! 」
山小屋の女性が今日も手伝いに駆り出されている。
実戦訓練へ移る。
弾をペイント弾に替え三対三。
シンディーに代わりお隣さんが加わる。
青組優勢。
お隣さんが本気モード。
経験値の差で少女たちを圧倒する。
だがブリリアントが足を引っ張る。
「大河さん…… 」
「俺の後に隠れてろ! 」
素人同然のブリリアントを庇いながらではさすがに動きが鈍くなる。
「大河勝負! 」
アリアの連続攻撃。
さすがは腕はナンバーツー。
動きは機敏。射撃の腕も正確。
「隠れろ! 」
草むらに潜り込む。
「ああ…… 大河さん」
振り向くと赤い液体が顔にかかる。
まるで血のようだがケチャップほら甘くない……
タバスコ入りのレッド弾。
ぎゃああ!
顔に直撃。
ハンティングゴーグルをしていたので目に行くことはないが口には入っちまった。
危険極まりない訓練。
まあこれが実戦ならやられていた訳だから文句は言えない。
「誰だこんなことしやがったのは? 」
「大河。大丈夫? もうドジなんだから」
なぜか心配するアリア。優しい? いや違う。
アリアこそが犯人だ。罪悪感から優しくしているだけ。
「あれアリアさんその汚れ」
ブリリアントが気づく。
「何だお前も結局やられちまったのか」
「うるさい! チームが勝てばそれでいいの。これは団体戦なんだから」
被弾のアリアってか。ははは…… 笑えねえ。
「紅組の勝利」
俺たちを心配する風もなくハッピー先生は判定を下す。
敗因はアリアに気を取られ後ろを怠ったこと。
完敗って奴だ。
休憩を申し出てシードクターに代わってもらう。
これで昨日の続きができる。
シンディーの元へ。
「大河さん。一体何の用ですか? 」
「突然済まない。どうしても我慢できなかった」
シンディーが忘れられない。彼女は決して悪い子じゃない。
ただの誤解。それはお互い様だがそれでも引っかかる。
シンディーにお願いすればもう一度見せてくれるかもしれない。
邪な心を抱く。
「もう一度見せてくれないかここで」
「ななな…… 何てことを言うんですか」
「今は誰もいない。遠慮はいらない」
「でも僕…… 恥ずかしいよ」
「昨日は見せてくれたじゃないか」
「あれはだって…… 見せるのと見られるのとでは全然違う」
顔を赤らめ全力で首を振る。
「いいだろシン? 」
「もう僕だって恥ずかしいんだからね」
「それは他の女どもに見られるのがだろ。傷を見られたくない。そうだろ? 」
迷った末に首を縦に振るシンディー。
「いいのか? 」
「僕も頼まれたらノーとは言えない。そうハッピー先生に教え込まれてる。
あなたがどうしても見たいと言うなら僕は別にいいよ」
そう言うと後ろを向き一気に脱いでいく。
もう少しゆっくり時間をかけてもらえるとより嬉しい。
すべてを脱ぎ捨て前を向く。
一つの躊躇もなく己の肉体をさらけ出すシンディー。
それが大胆と言うか激しいと言うか。
その肢体は何とも形容しがたい曲線美で一瞬にして虜になる。
全体を隅々まで見回す。
まだ未発達であろう小ぶりの胸と大き過ぎない柔らかな尻。
惹きつけるような太もも。
ところどころに見え隠れする弾丸やガラスの破片の痕が痛々しい。
だがそこも魅力の一つ。
彼女が彼女である証。
「ねえ…… 大河…… 」
照れながら口ごもるシンディー。こう言ってもらいたいのだろう。
「きれいだよシンディー。とっても」
「ありがとう」
傷跡がどうしても気になるが彼女に悪い。
これ以上見回すことはせずに見つめる。
続く




