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もう時間がない!

大河さんの突然の訪問に胸が弾む。でも私たちにはもう時間が残されてない。


十二時の鐘が鳴ったら私はここを立ち去らなければならないんです。


だけど大河さんは決して理解しようとしない。


いくら拒絶してもしつこく居座る困ったお人。


これ以上強く言えないし私はどうしたらいいの?

 


時間が迫っているのについつい余計な質問をしてしまう。


もう支度する時間。


「本当の家族はもういない。これがどういう意味か分かるか?


恋人はいない。友人も僅か。あまり人とは関わってこなかったからな。


それに仮にどうであろうともう過去のことさ。すべては遠い過去の出来事。


俺はすべてを棄ててグリーズ島にやって来たのだから関係ない」


大河さんを信じましょう。今日はこれくらいでいい。


詳しい話はまた明日以降。


「わわわ…… 分かりました。それではもう遅いのでこの辺で」


無理矢理終わらせようとするも強引に迫る。


「いいじゃないか。もう少し続けよう。用がある訳でもないし」


「しかしもう夜も遅いですし明日にしませんか? 」


はっきり拒絶はできない。帰らせようと必死なのが相手に伝わるといいんだけど。


「分かったよ。君がそう言うなら。でもまだ時間があるだろ? あと少しだけ」


執拗に粘る大河さん。


「でもはい…… 」


押されると弱い。押し切られる形で大河に渋々従う。



時刻はもう間もなく十二時。焦りから冷静さを失っていく。


時計を見る回数も増える。


もう時間がない。間に合わない。どうしても気が焦ってしまう。


気分が悪い。意識を失いそうだ。


辛うじて踏みとどまる。



「君は勘違いをしているんだ」


えっ? 大河さんは何を言ってるのだろう。私が勘違い? 


私が一体何を勘違いしてるの? 私の何を知っていると言うの?


どれだけ苦しいか知りもしないで無責任に追い詰める目の前の男。


「あの…… おっしゃってる意味が分からないのですが」


「いや正確には記憶違いをしている」


だから何を言ってるのか分からない。いい加減にして。疲れちゃう。


「どう言うことでしょう大河さん。私の何を知っているんですか? 」


「すべてだ。君の過去はある人から教えてもらった」


「そんな…… 」


「焦ってるようだね。でも大丈夫。俺が付いている」


「はあ…… 」


「答えられないか。それも仕方ないことだ」


まだ何も言ってないし勝手に進められては迷惑。


断定されても本当に困ってしまう。違うとも言いづらいし。



「大河さんこそ勘違いされてます。私はただの普通のどこにでもいる女の子」


やってしまった。大河さんと無駄話を続けた結果十二時を過ぎてしまった。


ああもう完全に遅刻。


少女たちの歌声が聞こえる。


昨日と同様夜の儀式が執り行われている。



儀式。


癒しと許しを与えてくれるなくてはならないもの。


その貴重な儀式を大河さんがよりによって邪魔をする。


知っていてわざとやっている可能性が高い。


なぜ嫌がらせをするの大河さん?


私をいじめて楽しい? 困らせないで!


大河さんへの憧れの気持ちがだんだん薄れていく。


私間違ってたの?



「どうしたんだ慌てて。もう寝る時間だろ。今日は大人しくしていろ」


儀式から遠ざけよう遠ざけようとしている。


魂胆は見え見え。でも私にはどうすることもできない。


あーあ。今日は諦めるしかないかな。


「顔色が悪いぞ。どうした悩みごとか? 俺でよければ相談に乗ってやる」


どう言う神経してるの? でも…… やっぱり言えない。



「あのすいません大河さん私…… 」


「一日ぐらいどうってことないだろ。ほら問題ない。落ち着け。落ち着くんだ」


やはり大河さんはすべてお見通し。


どうしたらいいの?


「私は…… 私は…… 苦しい。はあはあ…… 」


「大丈夫か。ちゃんと深呼吸しろ。過呼吸になってるぞ」


「苦しい…… ずっとこのままは嫌」


「無理もないさ。昨日ようやく悪夢から解放されたんだ。


耐えるのもいいがもう限界だろ? 」


「うう…… 苦しい。早く早く…… 」



「おやすみブリリアント」


もう大丈夫。


意識を失った少女をベッドに寝かし部屋を出る。



翌日一日中部屋から出てこない彼女を心配し再び夜に訪問。


ブリリアントを始め少女たちはとんでもない秘密を隠している?


なぜここに居るのかの謎もまだ解明されていない。


ハッピー先生によって集められた訳でもなさそうだし。


ここに居る意味がまったく分からない。


少女たちの中で一番崩しやすいのはやはりブリリアントだろう。


一体どれだけの秘密を抱えてるのか?


本当に俺の力で何とかなるかはまったく分からない。


やってみるしかない。


ただ俺は彼女を助けたいとは本気では思っていない。


自分の目的のためには必要なこと。


その過程でやれる範囲でベストを尽くす。それしか頭にない。


非情になれ大河! 俺はそういう人間だ。


同情も哀れみもしてはいけない。


感情に流されてはならない。


                続く

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