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九話 黒星にホメられました

九話 黒星にホメられました



 ルーが溶けきり、出来上がったカレーを要がよそり、食べた。ちなみにご飯は要が冷凍庫に備蓄しているご飯一人分を温めた物を使用した。エスパーダの頭にはカレーばかりで、ご飯がなかったのである。


「うまかったよ」


 食べ切った要はテーブルに下ろしたエスパーダに笑顔を見せた。


「よしっ!」


 エスパーダは大きくガッツポーズをした。


「おかしい」


「あんなにアレを入れたのに」


 スミス姉妹は皿に残ったカレールーを指につけて舐めた。そして悶絶した。


 要は水を持ってきて、ペットボトルのキャップにそれぞれ入れてあげる。それでも苦しそうだ。


「要さん、おかしいよ」


「舌が死んでるとしか思えない」


「人間と小人族の味覚は違う。エスパーダの作る激マズ料理が人間の舌にはちょうど良かっただけの話だ」


 過去に要とエスパーダの争いに巻き込まれただけあって、黒星は一定の理解を示してくれた。


「激マズって……前に食わした時もそう思ってたの?」


「当たり前だ。だから俺の料理を食わしてたんだろうが!」


 黒星はエスパーダの問いにキレた。


 エスパーダはショックを受けていた。


 黒星の言い分も分かるが、要としてはエスパーダに加勢したい。


「師匠、今はこのカレーを褒めてあげてください」


「俺達は食えないカレーをか?」


「確かにそうですけど、今日は俺のためのカレーですし」


「仕方ねえな」


 黒星はエスパーダの頭を撫でてやる。


「料理は食べさせたい人の口に合わせるのが一番だ。それをやったお前は料理人だ。一応な」


「うん」


 エスパーダは強く頷いた。自信を持ってくれたようだ。でもそれを与えたのは要ではなかった。まだ自分達がそこまでの仲ではないことに、そして黒星とエスパーダの仲の良さにモヤモヤする。


「黒星、みんなになんか作ってあげて」


「よし要、ご飯を借りるぞ。炒飯ならすぐに出来る」


 みんなから安堵の声が聞こえた。


「あのカレー以外ならなんでも良い」


「いや、姉御が作る物以外だ」


 ライトハンドが小突かれた。


「二人ともケンカ売ってんの?」


「僕等はご飯が食べたいだけさ」


「姉御だって自分の作ったカレーは食べられないだろ?」


「うっ……」


 レフトハンドの問いにエスパーダは怯んだ。


「だいたい姉御はアレを全部使うなんて……」


「アレはもともと食べる用じゃないんだぞ」


「良いじゃん! 要は食べて平気みたいだし」


 あの球体はカレールーではなかったのか?


「ライトハンド、レフトハンド。アレは……何だったの?」


 要はおそるおそる二人に聞いた。ライトハンドは隠す様子もなく素直に答えた。


「カレー爆弾」


「カレーバクダン?」


「動物に投げつけてその間に逃げる護身用グッズ」


「アレ、高いのにね」


「良いじゃん! 要がおいしかったって言ってんだから」


 確かにおいしかった。だから文句は言えない。でも気になることがある。


「いくらかかったの?」


「全部もらったから……」


「カレー爆弾だけで一個三千円だからね」


「ものすごく高いカレーだったんだ」


 そんな物を食べられたのは嬉しいが、もっと節約してほしい。


「これからは人間の材料で作ろっか、エスパーダ」


「えー? もう作りたくないよ。料理ってすごい大変だから」


「あ、そう……」


 あんなにおいしかったエスパーダのカレーは幻の料理になりそうだ。


「要、ご飯」


「はーい」


 冷凍庫から凍ったご飯を持ってきて、家置きしていた小人用コンロの上の北京鍋に入れる。エスパーダと違って、流れるような動きでいつまでも見ていられた。


「はいお待ち!」


 みんな炒飯を食べて満足していた。要だけ違う物を食べたので、のけ者にされたような感覚に陥る。


 要はそれがイヤだった。


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