七話 鍋を火にかけます
七話 鍋を火にかけます
アックスの涙という犠牲を払い、野菜を斬り終えた小人達。
「次は鍋で具材に火を通すんだ」
「鍋か」
スミス姉妹にもらった鍋が役に立つ。
「ダメだ。俺達が食べるならこれでも良いが、食べるのは要だ」
確かに鍋いっぱいでも、要のカレーの一杯には及ばないだろう。
エスパーダは要を見上げ、悩んだ。
「ここは人間の鍋を使おう」
「でも小人族で……」
黒星の提案にエスパーダは難色を示す。
「もう要に野菜洗ってもらったから、その線引きいらないだろ」
黒星のツッコミにエスパーダは黙り込んでしまった。
「姉御、仲間はずれは良くないよ」
「要さんも仲間だから」
スミス姉妹の説得で態度が軟化したような気がする。ここでみんなはアックスに目を向けた。また同調圧力をかけている。
耐え切れなくなったアックスはエスパーダに言った。
「まずカレーが出来ないと話にならない。ケチをつけるのは作ってからだ」
「ケチなんかつけてないもん。要、鍋持ってきて」
要はフライパンとカセットコンロを持ってきた。こんなこともあろうかと買っておいたものだ。
油を敷いてウサギ肉を投入する段になって、小人族にはフライパンの中身が見えないことに気付いた。
渋っていたことが無意味になり、エスパーダは気まずそうだった。