四話 肉を切ります
四話 肉を切ります
黒星とアックスが帰ってくるまでにしたことといえば、ウサギ肉に塩胡椒を親の仇のようにまぶしただけだった。
「要は味が濃いのが好きだからね」
「小人族と味覚が違うのは痛い目見たから」
だから料理の修行をしていると要はスミス姉妹に説明した。
「姉御は食べ物の味に厳しいんだ」
「普段作らないくせに」
「私、恩人なんだよね? なのになんかイジってばっかりじゃん」
「それは姉御が愛されキャラだからさ」
「イジり甲斐があるとも言う」
ライトハンドのこめかみにエスパーダの二つの拳が擦り付けられた。
「エスパーダ、肉を切っておこうよ」
さすがに暴力が過ぎるので要は止めに入る。
「肉を切ったら包丁が脂まみれになって野菜が切りにくいじゃん」
「洗えば良いと思うよ。切った後で」
当然の指摘のはずだが、エスパーダは不機嫌になった。
「私のペースでやりたいの。出来る人はすぐ口を出してくるからイヤ」
これは気長に待つしかないようだ。要がどれだけ空腹に耐えられるか……という問題が出てきたが、エスパーダのために頑張るしかない。
「姉御、要さんのために料理作るんだろ?」
「肉切って、野菜はアックスにやらせれば良いと思うよ」
「あいつ、剣持ってるし」
「それでいこう」
三人は悪そうに笑っていた。




