『Part13』
world of fake13
『また、ここっすかぁ。昨日も来たっすけど、何も無かったっすよぉ?』
「海」「翼」「実果」の三人は、左京へと足を運んでいた。
「翼」は、あまり乗り気では無い様子。
「翼」の性格を考えれば、そうなる事は百も承知。
十二分に分かり切った事なだけに、まともに相手にしない。
「まぁまぁ」と、当たり障りの無い掛け合い。
しかし、「翼」の言う事「同じ所ばかり見て何になるのか」と言うのも十分に理解出来る話。
他を蔑ろにしている訳では無い。
それでも、「ここ」が気になって仕方がない。
それは「実果」も又、同じ様であった。
今の左京には「何かがある」二人には、そう思えてならないのだ。
『今日は出発時間も変だし・・』
時計の鳴り始めから鳴り終わり、その間には六の時が有る。
京の都の者達は、その間を自由に行動し、それと背中合わせに有る六の時を不自由に過ごす。
これは、この都に暮らす者達の本能の様な物で「何故こうなっているのか」などと言う事は、誰も考えない。
皆は其れを自然に受け止める。
多くの者達にとっては、気に留まる程に不自然な事ではないのかも知れない。
自由と背中合わせに有る其の時を、所謂不自由とは考えておらず「必要な時間」だと、そう思っているのかも知れない。
そもそも不自由と言う物を、知らないのかも知れない。
不自由を不自由と知るには、何が必要だろうか。
それこそ、自由を知っている必要があるのだろうか。
自由を知っているからこそ、不自由を知れる・・ありそうな話だ。
出来ていた事が出来なくなる、出来る人と出来ない人がいる、許される人と、許されない人がいる。
自由の対に有る物は、必ずしも不自由とは限らない。
多くの者達とは違った「思考」や「行動」を持ち、行う者が現れたとしても「海」にとっては理解の範囲内。
そうやって差別化を図り、その差別の中で色んな人が現れる。
何かを得て何かを失う人、何も得ず何も失わない人、何も得ていないのに何かを失う人、不自由とは人の間で見る幻覚の様な物なのかも知れない。
ただ一つ言える事は、何かを得る為には必ず何かを失うと言う事。
何も失いたくないなら、何も得ようとしなければ良い。
何も失わないと言う事はそれだけで、ある種何かを得ていると思えなくもない。
それが錯覚だとしても・・ーーー君は何を得て、何を失った?
「海」の小さな独り言に「翼」は耳を傾ける。
『何か言いました?』
「翼」に聞こえる様に小さな音で返す。
『何でもないさ。』
「実果」は、薄く口を開くーーーーーー・・・
「海」「翼」「実果」は、鳴る音色を耳に残し、立ち止まる。
視界に映る六人の人影。
『この時間に人に会うとはな!アンタ達は何者だ?』
そう言った者の顔は、しっかりと「海」の記憶に残っている。
『本条響』(ほんじょうひびき)、ステージ3の能力者。
残りの五名『本条奏多』(ほんじょうかなた)『本条轟』(ほんじょうとどろき)『四条楓』(しじょうかえで)『四条蕨』(しじょうわらび)『四条椿』(しじょうつばき)。
『なあに、ただの散歩マニアだよ!君達こそ、こんな時間に何をしているんだい?』
『・・まともな者は、この時刻に活動しない。』
『君達はまともじゃないんだね?』
『お互いにな。』
「海」と「奏多」の間で行われる会話、二人が言葉を失った時、即ち其れが戦闘の合図だと、その場に居合わせる皆は何処かでそう認識していた。
『散金突波!!』
「海」「翼」「実果」に向かい来る複数の金の塊、「海」は其れを容易く融解し「響」の技を打ち消した。
金は空中でドロドロに溶け、地べたにボトボトと落ちる。
その様子を見て、と言うよりかは、その時「海」から感じた熱で「六人」の何かが引き締まった。
緊張と言うよりは、ただの遊びでは無いのだと「何処か」に染みる感覚。
遠慮は要らない、思いっきり暴れて良い相手なのだと感じた。
もっと言うと「思いっきり暴れないといけない」とさえ思っている。
ただ感じるままに暴れたい、「六人」の纏う空気はガラリと変わる。
「海」と「実果」は、この感覚を前にも感じた事があった。
その時はボヤッとしていたけれど、今はハッキリと感じる、見えている。
だけど、何かは分からない。
でも見えているなら其処まで怖いものでも無い、変化があれば気付ける。
何か策が必要なら、その時考えればいい。
現状「海」は、策の必要性を全くと言って良い程に感じていない。
三対六、数の上では明らかに不利。
一人で二人を相手にする計算になるが「以前」よりかは、幾らかマシだろう。
「海」含め「翼」「実果」もステージ3の能力者だが、同じステージの者達が皆ピッタリ同じ熱量と言う訳では無く、それなりの振り幅がある。
其れに、攻めに強い「二人」も居る。
「本条」が三人、決して楽な戦いと言う訳ではないが、負ける理由が無いーーーーー火炎突波。
「海」の火炎は、「響」の黄金と打つかると優しく辺りを照らし、一立ちの煙も上げる事なく輝きを失った。
向かい来る黄金を「京棒」で打ち落とす、至る所に立つ土煙、「海」は「響」に向かい高く飛ぶ。
すると、足元から伸びる太い蔓に足首を掴まれたーーーーー緑森流老木拘束。
「楓」の技。
「海」は足元を焼き、灰となった蔓の様に柔軟な動きをする木の枝を払い、元居た場所へと着地する。
彼女は木の能力者であるにも関わらず、「海」が火の能力者だと知って尚、攻めの姿勢を見せている。
『この二人は私が相手をする。残りの四人は君達二人で、上手い具合に相手をしてくれ!じゃあ、よろしくっ!!』
「海」は「翼」と「実果」にそう言い残し前に出る。
技を打ち合う「三人」、その影は次第に小さくなっていく。
その様を横目に「翼」と「実果」は「四人」の出方を伺う。
「奏多」「轟」「蕨」「椿」も又、「二人」の出方をじっと伺っていた。
ーーーーーズズズ・・
「六人」の内の誰かが足を擦る。
其れは沈黙を壊すかの様に、目配せ合い、見合うその場の目と足を一斉に動かす。
「実果」は「奏多」「蕨」と、「翼」は「轟」「椿」と、技を打ち合いながらその場を後にした。




