『Part11』
world of fake11
『左尽土石流大突波。』
『止水・暗部玲羅ーーーーー流水大突波。』
「凛恵」と「三昼」は技を打ち合っている。
地は揺れ空は荒れ、その激しさとは裏腹に至って物静かで落ち着いた表情。
互いに熱を感じさせない、冷静な攻防を繰り広げていた。
そんな戦いの中、突如として「三昼」の表情が大きく動く。
何処か間の抜けた雰囲気を感じる「彼女」の顔色が引き締まって見えた。
この表情の変化を「凛恵」は見逃さない。
どうして今このタイミングで「三昼」の顔色が変わったのか、もしくは顔色を出したのか、それは端的明瞭。
「凛恵」と「三昼」は技を打ち合う中で、元居た場所よりそれなりに外れた場所に居る。
「実果」や「二夜」達が、今居るであろう元居たその場所より感じる異様な温度、熱、これは「実果」の物では無い。
「相手が何かした。」
しかし、何があろうが「実果」に限っては大丈夫、心配は要らない。
その気持ちは変わらないが、何も気にならないと言えば嘘になる。
「三昼」の表情から察するに、何か大きな問題があるのは間違いない。
これを無視する事など出来る訳がない。
それは、互いにそうだろう。
「二夜・・ーーー」
互いに攻撃の手を止め、じっと顔を見合わせる。
其の、本の僅かの間、「三昼」は「実果」や「二夜」達が居るであろう方角へと爪先を向け、強く地を蹴った。
その場を去る「三昼」の背を横目に見つめ、視線と肩を撫で下ろす。
鼻から抜ける息と連なって、体内に籠る熱が空に溶ける様。
「三昼」の行く道に目を向ける、その背はもう見えない。
「凛恵」は足取り軽く後を追う。
熱を感じさせない冷静な眼差しで。
ーーーーーそれは
『あなたなら、これが何なのか分かりますよね?実果さん。』
『天ノ秘宝・・・』
「二夜」の手の中で薄暗く輝く小太刀が一振り、其れをふわりと構える。
親指で鍔を押し、ゆっくりと鞘から刀身を抜く。
僅かに垣間見える刃は、妖艶な黒を放っている。
柄を握る拳、力む指に感じる熱、刀の影響もあるだろうが、その姿は先程までとは別人の様に感じられた。
姿は同じ、だけど温度があまりにも違っている。
其れは、別人と感じる程に。
人からは感じた事の無い熱、初めて感じる熱。
視界は黒く歪んで見え、「この者」の背後には他の誰かが居る様な、そんな違和感を覚えた。
『黒く突き抜ける熱・・』
『覇道・・・』
ーーーーーーーーー二夜
ーーーーーーーーー実果
見合う「実果」と「二夜」、其処へやって来た「三昼」、その直ぐ後を「凛恵」が来る。
とても静かで、とてもざわついている。
其の瞬間、正に今、何かが起ころうとしていると言う事を肌で感じる。刹那ーーーーーーーーー
『やめろ』
その場を制止する一声、「流衣」の声がその場に鳴る。
変な静けさを持っていただけに、良く響いていた。
『こんな所でそんな技を使われたら、お前以外の皆が消滅してしまう。』
鋒まで抜き掛けた其の刀身は、妖艶な輝きと共に鞘へと収められた。
辺りを撫でる様に吹き抜ける生温い風、「流衣」は「実果」の傍へと歩み寄る。
一拍、「流衣」は「実果」に問うた。
『俺達は天ノ秘宝を探している。未だ行方知れず二振り、どこにあるのか知らないか?』
『さぁ、どの二振りの事かな?』
『まぁ、いいだろ。俺はお前達と共に行く気は無い。こっちは三人、天ノ秘宝もある、此処は大人しく行かせてくれないか?』
「実果」は小さく笑う。
『ああ、今回は見逃してやる。』
『見逃してやる、か・・それはお互い様だ。』
「お前達が天ノ秘宝を守り続ける限り、必ず又どこかで顔を見合わせる事になる。何れ必ず、決着は着ける。」
「流衣」「二夜」「三昼」は姿を消した。
「流衣、やっぱりお前が・・」
『実果、大丈夫?』
『ああ、大丈夫だ。凛恵こそ大丈夫か?』
『大丈夫。』
「あの子、悪い子じゃない・・」
「流衣達」は、とある場所へと歩を進めていた。
その道中ーーーー・・・
『どうして止めたんですか?』
『あのまま戦っていればお前は負けていた。俺達が加わったとしても凛恵が居たあの場では良くて相打ち、今そんなリスクは背負えない。』
『其れ程ですか、彼は・・』
『・・ああ。だが、怖いのは実果の「センス」だけだ。それさえ何とか出来れば、負けは無い・・今は秘宝の収集を最優先する。』
『はい。』
ーーーーーーそれさえ何とか
『三昼?大丈夫ですか?』
『うん、大丈夫。』
「あの子、良い子そうだったな・・」
「実果」と「凛恵」は、上京に戻り「秘宝」の前に立ち尽くしていた。
その時、こちらへと向かい来る足音が一つ、聞こえて来た。
コツ、コツ、コツ・・聞き慣れた足音。
『やぁ、お疲れだね!』
『そちらこそ。』




