『Part10』
world of fake10
頭上に出現した土の塊。
それは、辺りに砂を撒き散らしす。
次第にその砂の粒は、徐々に大粒になっていく。
砂利の降るその場でも、お構い無し。
「実果」は、自在に動き回る。
「凛恵」は大きな傘の下で、沙石の雨が止むのを待っている。
降り注ぐ砂利は次第に薄く、視界を晴らして行く。
頭上の土の塊は、小さくなっていた。
だが其れは、再び大きく膨れ上がり又、辺りに多くの砂利を撒き散らす。
そしてもう一つ、空を舞い、その場に漂う細かい水滴。
身体を包み込む様な、小さな水粒のベール。
周囲の温度は徐々に下がり、それに伴ってか身体の熱を奪って行く。
「実果」の動きは、少しだけ鈍くなって来ている様にも見える。
でもそれは「二夜」も又、同じ事の様であった。
『膨張と収縮を繰り返し、辺りに沙石を撒き散らし続ける・・ーーー流水一点突波。』
頭上の土の塊は膨張を止め、地に熱が落ちる。
『この霧を何とかしないと、後々面倒だな・・ーーー流火炎天大突波!』
「実果」を中心に、電光石火の如く燃え広がる炎。
地を駆け抜け天を焦がし、空に吹き抜ける。
激しく強く燃える其の様とは裏腹に、とても静かで、とても優美であった。
辺りの温度は急速的に上昇し、辺りを舞う細かな水滴は一瞬で蒸発して行く。
その場に覆い被さる物は何も無い。
「二夜」は動きを止め、徐に語り出す。
『こんな小細工、通用しないですよね、流石に・・これは「ある人物」が此の技を使っているのを見て「良い技だな」と思って使ってみたんですけど・・僕には向きませんね。』
ーーーーーー流火縁解突
「実果」は聞く耳を持たず、香炉(二夜)に一直線。
ペタペタと騒がしく鳴る大地、それも束の間、一瞬大きな着火音がしたかと思うと、流火を纏う「実果」の右腕は「二夜」の胴体を貫き焦がしている。
「二夜」の腹のど真ん中には大きな火傷の後、その傷も癒えぬ内に離散する「二夜」の姿、その様は霧の様であった。
ーーーーー水害香炉、小夜時雨。
その霧は辺りを舞い、小さな水の粒は徐々に大きく膨らみ、やがて「其の形」を取り戻す。
ーーーーー舞う霧の量が少な過ぎて、形を取り戻すまで分からなかった・・
『その技・・恐ろしい技ですね。「僕じゃ無かったら」寝込んでる所ですよ・・其の一撃で。
どんな人でも、何者であったとしても、人が人である限り、一日に使える時間は決まってる。それを超えると結果的に、一生に使える時間を極端に縮めてしまう。
場合によっては、その日の内にこの世界から退場する事になる。
良くそんな技が使えましたね、人に。』
『・・「僕じゃ無かったら」って君も言ってるじゃないか、君だから使った。
君と僕のステージは同じくらいの様だし其れに、君は水の力で僕は火の力、これくらいやらないと君を大人しくさせられない。』
『なるほどですね。でも、実果さんの力は火だけじゃないですよね?「本気を出されたら」流石に僕も無事では済まない。』
『流衣から聞いたか・・でもそれは、お互い様の様だけど?』
『分かりますか?』
『ああ、君もデュアルアビリティー。』
ーーーーーーはい、風害香炉、流行り風(ふうがいこうろ、はやりかぜ)
『空気の匂いが変わった・・』
香風、嫌な匂いでは無い。が、自身の身体を撫でる様に吹く風は絶え間なく、強烈に嫌な感じである。
一歩踏み出し距離を縮めようとした其の時、身体の不自由さを感じた「実果」であったが、それもどうしようもなく妨害されている、と言う感じでもない。
空気が纏わり付き多少、身体が重たく感じる程度。
呼吸も少しし辛いが気にならない、気にしない。
「二夜」は手を後ろに回し、腰の辺りでゴソゴソしている。
一直線に掛ける「実果」、「二夜」は「ガン」を手に向かい来る「実果」に向け発砲。
僅かな動きで回避し、京棒を腰より掴み其れを降る、風を切る様な音と同時に「二夜」は後ろに飛んだ。
『水害香炉、乱獲大突波。』
素早い身のこなし、乱雑横暴に襲い来る水を回避、避けて避けて避け続ける。
少しの疲労も感じさせる事なく、避け続けている。
「実果」は腰より京銃を掴み、乱れ波打つ其れの隙間より、垣間見える「二夜」の姿に弾丸を撃ち込む。
『風害香炉、風立ちの衣。』
弾丸は「二夜」の前で極端に勢いを無くし、地に落ちる。
『涼しい顔、その痩せ我慢が何処まで続くのか見物です。ーーーーー水害香炉、潰乱嵐』
大きく纏まりを持って動いていた其れは、散り散りに舞う。
月明かりを含み、螢の様に辺りを舞っている。
「実果」の身体はずぶ濡れ。
だけど、不思議な程に風を感じなかった。
先程までは、しつこいと思える程に感じていた其れは、今は丁度良い。
その風を感じながら快走する「実果」、その足運びは軽く、気が付くと「実果」と「二夜」は手が届き合う距離。
辺りに余りある水は、上下左右前後あらゆる方向から物凄い勢いで「実果」に集まる。
「実果」の居るその場所は、爆発を起こしたかの様な衝撃に揺れる。
苛烈に飛び散る水、地に落ちる水滴、その場所に「実果」の姿は無い、粉々に弾け飛んだ・・訳は無い・・その時、「二夜」の頭頂部に一滴の水が落ちた。
「二夜」は見上げる。
ずぶ濡れの身体に火傷の後、そこには「実果」の姿があった。
京棒を手に素早く地に降り、其れと同時に「二夜」を叩く。
『落雷火速・・ーーーーー雷火飛来突(らくらいかそく、らいかひらいとつ)』
刹那、空がバチっと光ったかと思うと其れは、天から射す光の様に地に落ち、辺りを照らす。
火を吹く大地、辺りを濡らす水は煙を上げ、空に飛ぶ舞う水はパチパチと弾け飛ぶ。
「二夜」大きく蹌踉、自身の膝に手を着く。
息は乱れ、目付きは鋭い。
「二夜」はゆっくりと身体を起こし、「実果」を睨み付ける。
『先までの涼しい顔はどうしたの?何処まで余裕で居られるのか楽しみにしてたんだけど、案外こんな物か・・見物にもならなかったね。』
『僕は何も変わってません・・』
・・・お前は此処で抹消する
顕現するーーーーー
ーーーーー目を覚せ
『白雪姫』




