『Part7』
world of fake7
『これから探すんですか?そいつら。』
「翼」は「海」に問う。
『ああ。』
『でも、何処に居るか分からないんでしょ?今から探したんじゃぁ変な時間にならないっすか?』
『それもそうだ。時間までに見付けられるか、見付けたとして、其処から何か出来るだけの時間があるのかって所もある・・』
『だったら、今日は一旦このくらいにして、明日ゆっくりとやれば良くないですか?』
『・・この問題は、出来るだけ早く解決する必要がある。』
『・・・そうっすね、分かりました。』
皆は虱潰しに探す。が、なかなか見つからない。
「何処かに隠れているのか・・」
沈む日、探している者達どころか、人影自体が街から見えなくなって来ていた。
「時間か・・」
『随分と人が減りましたね。街をウロウロしてんのは俺らくらいだ。』
『無理をさせてすまない。翼には、随分と力を使わせてしまったな。今日は此処で解散する、三人とも帰っていいぞ!』
『海さんはどうするんですか?』
『私は・・私も帰るよ!』
『そうですか。』
『・・・』
『じゃあ僕達はこれで、お疲れ様でした。』
『ああ、お疲れ様!・・・翼は帰らないのかい??疲れているだろう、無理は良くない。休むのもまた仕事だ!』
『・・・お疲れ様でした。』
『ああ!お疲れ様!』
太陽の代わりに顔を出す月。
「翼」は「海」を背に上京へと歩を進める。
一歩、又一歩。
その足取りは重く見える。
しかし、こんな足取りではいつまで経っても帰れない、なんて事は無いにしても、非常に遅くなってしまう。
背は、「海」からはもう見えなくなったであろう、「翼」の足はとても早く回転している、しかし、まだ何処かその足取りは重く見える。
徐々に鮮明に聞こえる時計の鳴る音、其れも次第に無くなり、静かに、ただ走った。
その時に見た上京は、いつもと違って見えた。
自身の家に帰るといつも通り、やはり安心する。
布団に横になり、天を仰ぐ・・
京に入って、恐らく一番初めに言われたかも知れない事・・
「あの塔が鳴るまでに家に帰る事!目安は、日の沈みだな!」
今は一緒に行動する事が多い、すっかり忘れていたがーーーー
『海さん、帰らなくていいのか・・』
「翼」の後ろ姿を見送ると、「海」は再び「探し者」をする。
『行ったか・・まぁ、バレバレの嘘だとは思うけど・・この件を解決するまでは帰れない。』
街に人の姿は殆ど無い。
その殆ども言う間に見えなくなり、人とすれ違う事が無い、ゴーストタウンの中を居るかの様。
流石に何の望みも無くなり、ただ歩いているだけ。
その時、目の前に三つの影ーーーーーー
背格好がそっくりで、おまけに名前までもがよく似ている。
名前と顔が中々一致しなかった三人、それなりに苦労はしたが、今はハッキリと把握している。
「琴那」深い緑のロングヘア、「琴音」茶髪のミドルヘア、「琴乃」クリーム色のミドルショート、髪型を変えられてしまっては又振り出しに戻ってしまうが、こうも似た女の子が三人揃う場面なんてそうはない。
今は、誰が何の子か何て事は其れほど問題ではない、重要なのは「あの子達」が「彼女達」だと言う事。
ーーーーーーやっと見つけた
『あなたは誰?こんな所で何をしているの?』
『君達こそ何をしているんだい?街にはもう誰も居ないぞ。』
『見れば分かる、そんな事。』
『この街は先程まで酷い有様だった、君達がやったのか?』
『何それ?そんなの知らない。』
「海」は、相手が本当の事を言っているのか、嘘を言っているのか、其れが分かる、彼女達は「嘘は」付いていなかった。
『君達じゃ無いのか・・だったら残りの三人か・・』
『誰か分からないけど、邪魔をするなら・・・緑森流突波』
『ーーーーー火炎突波!』
頸椎に感じる黒い力、三人の内の一人「琴那」は技を振るう。
自身を中心に草木が実り、広範囲に広がって行く。
その草木はハッキリと意志を持ち「海」に襲い来る、草花が舞い頬を掠める、一筋の傷跡。
足元で伸びる木々を蹴り高く飛ぶと、下に向かって技を打つ「海」
それは「琴那」の力を焼き尽くした。
『あなた、火の力を使う人なのね。これは相性が悪い、勝ち目が無い。』
『そんな簡単に諦めないでーーーーーー散金突波』
着地直後、正面から向かい来る金の雨。
ーーーーー紅蓮融解火炎城!!
「海」の周りをぐるぐると燃える炎の壁、金の雨はポタポタと地に落ち水跡を残す。
『炎で溶かした・・この人は私達よりも、ずっと強い力を持っている・・』
『そうかも知れない。だけど、皆んなで戦えば勝てるーーーーーー化煙圧烈大突波』
ーーーーーーーーー
「海」は吹き飛ばされ、何処かの壁に背中を強く打ち付けた。
走れど飛べど変わる事のない視界。
「海」は今、無限とも思える煙幕の中に居る様だった。
『スモーク・アウト。』
『これなら私達の攻撃が無にされる事は無いーーーーー棕櫚の槍』
『今度は手加減しない・・・・飛金大突波!』
「琴那」は近くにある木の技を一つ折り、手に握る。
其れは見る見る生長し、形を変える。
芽が伸び腕に絡み付く根、握るそれは木の槍。
「琴音」の左手を覆い隠す大きな鉄。
右手で左腕を支え、煙幕に構える。
未だ視界がハッキリしない内に「琴音」の技に打たれる「海」
中の様子は誰にも分からない。
『琴那?』
『琴音の技と私の技、相性が良く無いから。』
その時、何かが「琴那達」の方へと飛んで来る。
『何これ、銃弾?』
『銃弾だね、普通の銃弾。』
弾は何発も飛んで来る。
『敲金の槍』
「琴那達」は槍を手に、飛んで来る其れ等から身を守る。
其れ等の内の一発が、「琴乃」の左腕を掠めた。
一瞬、「海」の視界は回復ーーーーー刹那、一直線に走り抜ける。
『君だな!君がかなりややこしい!』
乱れ撃ちながら「琴乃」まで一気に距離を詰めると、腰にあるホルダーより『京棒』を抜き強く打つ。
ーーーーーーっ!!!
「琴乃」は下がる。
肩には火傷の後。
「琴那」と「琴音」は「海」と至近距離で打ち合う。
「琴那」は「海」を突く。
「海」は手に握るそれで打ち払う。
「琴音」は「海」を薙ぐ。
「海」はそれを躱わすと高く飛び、眼下に『京銃』を幾弾も撃ち込んだ。
弾倉を地に落とし新たに弾倉をぶち込むと、伸縮性能に富んだ「京棒」を伸ばし地を突く。
少し離れた位置に着地すると大きく息を吸い、木々に埋もれている彼女達に狙いを定めるーーーーー
『樹林界牢大突波。』
『私達をこの中に閉じ込めるなんて。』
『身を守れたのだから別に良いでしょ。』
『ーーーーー火炎突波!』
木々に火が付き、燃え滓となって行く。
彼女達の姿はハッキリと見えている。
外し用が無い。
再び銃口を向け、撃つーーーーー
『ーーーーーー若煙狼。』
引き金に指を掛けた瞬間二体の狼に挟まれ、的を急遽それらに変更し、撃つ。
『ーーーーー緑森流大突波!』
地を裂き荒ぶる樹木。
『ーーーーー流木歪曲圏大突波』
「海」は火の力で其れを焼き払おうと試みるが、範囲が広く全てが灰になるに至らない。
火が付く木々は、動き衰える事無く荒ぶる、燃え滓となった樹木は、蒼く染まる大地を燻らせる。
傷だらけの衣装、今は回避に徹して突破口を模索し、その時を待つ。
ーーーーー火炎突波。
所々火を付け、燃え滓になるのを待つ。
『琴那、もう一回アレやって。』
『・・・・樹林界牢!』
『ありがとう。ーーーーー流金多角大突波!!』
彼女達は再び木々に埋もれ、覆われ、囲われた。
木々の隙間より流れ出る其れは、まるで樹液の様。
これ程にまで危険な香りがする樹液もそうは無いだろう。
その樹液は様々な形で炸裂し「海」を襲う。
その場を荒ぶる木々は、次々と切断されていた。
地に落ちる輪切りの樹木。
「琴那達」を囲う木々にも、幾本か鋭い物が刺さっているのが見える。
炸裂が終わると「琴那達」は其処を出る。
『・・・やっぱり、琴音の力は私の力と相性が悪い。』
『そう?琴那の技で皆んなの身を守り、安全に、確実に、相手を倒す、相性良いと思うけど。』
『・・・私の技はボロボロ、私達に当たらなかったのは運が良かっただけ。』
『その技のお陰で、その運を手に出来た。』
ーーーーーああ、この技のお陰で、この運を手に出来た。
『そんなっ、何故其処まで動ける・・・ーーーーーー。』
煙立つその場に四人の影、「海」は「琴音」を拘束した。
『時間を無駄にはしたく無いだろう?余計な抵抗はしない事だ!』
『・・・』
ーーーーーースモーク・アウト・・・オレオ・モンキー。
その場は一瞬で真っ白になった。
誰も、何も見えない闇の中、其処を蠢く大きな影。
其れは腕の様な部分を振り上げ「海」を襲う。
吹き飛ばされる「海」。
その影は確かに其処に居て、実体を持っている。
何か得体の知れないモノが、其処には居る。
かなりの勢いで吹き飛ばされたが、瞳を凝らせど未だ変わらず真っ白なまま。
『この空間は、さっきよりも早く動いているのか・・それとも、とてつもなく広いのか・・もしかすると、幻の中・・なのかも知れないな。』
『若煙喙槍・・ーーー降煙刃(じゃくえんかいそう、こうえんじん)!』
煙の中を落ちる幾多の煙、視認のし難い事この上ない。
だけど、技の持つ熱で何処から力が飛んで来るのか、今何処にあるのか、大体の事は把握出来る。
肉眼でも、全く見えないと言う程はない。
『ソフトクリームみたいで美味しそう!・・まぁあ何にしても、関係の無い事だ!私にはーーーーー紅蓮昇華火炎城!!』
その場を覆っていた白は、緋色の火の粉を散らせた。
其れはゆっくりと地に向かい、足元を照らす。
今にも消えてしまいそうなか細い燈と、吹けば何処かへ行ってしまいそうな煙を一筋上げている。
次々と地に落ちる火の粉、「海」は「警棒」を仕舞い、片手を開いて眼前に差し出す、掌に灯る火。
『他煙嘴槍・・ーーー壁圧壊刃(たえんしそう、へきあつかいじん)!!』
足元から立つ幾多の煙は槍となり、其れらは「海」に矛先を向け、立ちはだかる。
『灯火染・爪紅』
掌にポトポトと落ちる火、手の中で灯を失うと、肌を温め染み込んで行く、手を染め上げる火と熱、身体はほんのりと暖かい。
「海」は、向かい来る技に手を突き出したーーーーー紅に染まる、其の鋒を。
『まさか・・片腕で止められるなんて・・』
その技は徐々に「海」から離れて行く。
そして、其の技は形を失った。
「海」は「琴乃」に一発の銃弾を撃ち込んだ、その場に膝を付く「琴乃」
次に、「琴那」に弾丸を撃ち込む。
「琴那」は、此れを技で弾いた。
『火炎突波!』
『棕櫚の槍ーーーーーフェード・アウト!』
「琴那」は、向かい来る火を槍で突いた。
一瞬、火が勢いを増したかの様に思えたが、其れは徐々に小さく、弱くなり、火は消えた。
が、「琴那」の槍もまた、消えていた。
『だめだね、相性が悪過ぎる。』
これ以上何かしようと言う気は、全くと言って良い程感じられない。
「諦めた」と言うよりも「開き直った」と言う感じだろうか、元より表情が其処まで豊かそうでは無い三人、表情や態度と言うよりは、体温の鎮まりがそう感じさせる。
冷めていく熱、形を失う力、相手の背後、首の辺りに感じた違和感ももう無い。
「海」は、太ももにあるホルダーに其れを仕舞うと、ご機嫌に首を垂れ言うーーー
『君はお利口だね。お利口ついでに、良く一緒に居る三人の居場所を教えてくれないかな?』
『・・・その必要は無い、来る。』
ーーーーーーーーー!!!
『初めまして。』
『本条、奏・・』
『挨拶も済んだ事ですし、これで失礼させて貰いますね。』
ーーーーー待て。
『この街は何者かに攻撃されたみたいなんだ・・君は、何か知ってる?』
「琴那」の少し後ろに立つ少女「本条奏」、彼女はいつの間にか其処に立っていた。
凛とした表情、その佇まいは、「この者達」との明らかな違いを感じさせる。
冷ややかな目付きとは裏腹に、何処か暖か身の有るその雰囲気、同じステージ3とは言え随分と違いを感じた。
「奏」は薄く口を開く。
『私達じゃありませんよ。』
『質問に答えてない。』
『・・・この街を攻撃、襲ったのは「ビトゥレイアルの星」と名乗る者達です。確かな証拠は無いですが、根拠は其れなりに有ります。
ーーー七日前、私達が彼らに初めて会った時、彼らは私達に協力を求めました。
私は仲間になる気も、よく分からない目的の為に力を貸す気も有りませんでした。
なので、その場でお断りして此の話は終わったのですが、其の日の内に私の兄弟は皆、姿が見えなくなってしまった。
辺りを探しても見つからず・・其の時、此の街で倒れている「此の者達」に会ったのです。
「彼ら」は此の者達とも接触していた様なので、こうして行動を共にしているのです。
私達は、敵同士では有りません・・ーーーーーーー』
『・・なるほど。じゃあ・・君達に聞こう、ビトゥレイアルの星と名乗る者達と何があった?』
「琴那」は答える。
『同じ・・誘われて、断って、戦って・・負けた。それだけ。』
「海」は「琴音」「琴乃」に目を向ける。
そっと俯く「琴音」と「琴乃」
ーーーーーここに居ない、残りの二人も同じ様なものか
頭を回し、再び「奏」を見る。
『彼らの目的が何なのか、知ってる?』
『分かりません。ただ、此の都は大きく変わる・・とだけ言っていました。』
『そうか・・実は私も、彼らには用があるんだ。此の都から姿を消した秘宝について・・協力しないか?君達も用があるんだろう?彼らに。』
『はい。喜んで。』
『じゃあ、これ。』
「海」は京のメンバー同士が連絡を取り合う為のアイテム、携帯をひとつ手渡した。
『とても貴重な物なんだ、大事にしてくれよ!』
『はい、ありがとうございます。では、これで失礼させて貰いますーーーーー・・・・』
「ピースアウト」
「奏」「琴那」「琴音」「琴乃」は、その場から忽然と姿を消した。
『喋り過ぎだったんじゃない、奏?』
『あなた達は、あれが誰だか分かっていますか?』
『いや。でも、只者じゃないのは確かね。』
『彼女は京のリーダーです。調子に乗っていると、痛い目を見ますよ。』




