『Part6』
world of fake6
「おはようございます。」
一夜明け、再び鳴る時計の音、いつもの場所に皆は揃っている。
『本当に申し訳ないんだけど、今日も翼に「これ」の警備、お願い出来ないかな?』
まさか、そんな事を「実果」から言われるとは思ってもいなかった。
何なら今日は、「実果」がやってくれるものとばかり思っていた。
視界は曇り、世界が灰色に染まって行くかの様な感覚、返す言葉も無い。
これには「海」も少し驚いた様で、理由を尋ねる。
『珍しいな!何か・・何処か行きたい所でもあるのかな?』
『はい。街の調査もキリの良い所まで行ったかと思いますので、今日は僕達の故郷を見て回りたいなと思いまして。』
『・・・』
『ああ、確かにそうだ!昨日はせっかく下京まで行ったのに寄らなかったもんな!申し訳ない!』
『そう言う事ではありません・・』
『分かってる・・流衣だろ?』
肩を落とし、地面を見つめながら「翼」は聞いた。
「海」は、答える。
『実果の故郷と流衣に何の関係があるんだ??』
『実果と流衣は同郷なんだ!』
体を起こし、頭を上げ、目を見開く。
『今日も俺で良い。』
『ありがとう、翼。明日こそは僕がやってあげるから。』
『約束だぞぉ・・』
「翼」を背に、三人は行く。
其の後ろ姿を、見えなくなるまで見送るその表情は、とても穏やかであった。
上京から下京へ行くのは、決して近い距離では無い、上京から一番離れた位置にある街。
そこそこの時間を掛け、其の道を行く。
中京、其処にそれは起きていた。
ーーーーー何だ、これは・・
街はめちゃくちゃ、隅々まで荒らされ、火傷を負っている人達が至る所に見れ取れた。
多くの物が壊れ、荒々しい情景、これ程にボロボロで痛々しいものは初めて見た、筈なのだが「実果」と「凛恵」は何処かを遠い記憶に擦られた様な気がした。
火傷を負っている人達に声を掛ける、皆怪我は大した事は無かった、街の温度も特に変化を感じない「誰も消えた者は居ない」そう信じた。
火傷を負う街の者達は皆、口を揃えて言った「悪魔の仕業だ」と。
倒れている者は皆ステージ1、2の者達。
この者達も、なんの抵抗もしなかった訳じゃない。
辺りを見れば、争った形跡がある。
そしてそれは、一人や二人の話じゃない。
相手は幾人か居て、「この者」は側に居た者達と協力し、これに抵抗した。
結果、協力した者された者問わず「この有り様」と、そう考えると辻褄が合う痕跡。
発端は分からないが、これだけの人数を相手に出来たと言う事は、ステージ1や2ではない。
「あの者達と考えるのが、自然は自然な流れだが・・」
熱は感じる。
この街に居るのは違いない。
だけど、今までだったらそう分かりずらくも無かった「彼等」の熱は、雲を掴む様に手応えが無い。
『此処に居るのは間違い無い・・この街に居るのは・・』
この街に居るステージ3の能力者『本条奏』(ほんじょうかなで)
『一条蓮』(いちじょうれん)『二条暮有』(にじょうくれあ)『三条琴那』(さんじょうことな)『三条琴音』(さんじょうことね)『三条琴乃』(さんじょうことの)
気掛かりなのはこの六人、「海」は「実果」に問う。
『今最優先すべきは、これだ。故郷の調査はまた今度でいいかな?』
「実果」は答える。
『もちろんです。』
掴めそうで掴めない、すり抜け、吹き抜ける様な熱の気配、感覚。
「海」は、この六名を虱潰しに探し、今すぐにでも見つけ出したい・・が、今優先すべきは目の前に居るこの者達と、街の修復。
京の縁が鳴る頃迄には片付けたい、もっと言えばこの事件の解決まで進めたいが、それは難しい話だろう。
まずは、目の前の事から確実にこなして行く。
急く気持ちを抑え、着々と進めて行く。
街の者達皆で進めれば、そう時間の掛かる話ではない。
が、壊れた建物等を直すのはステージ1、2の者達では時間が掛かりに掛かる。
「海」「実果」「凛恵」の力は、壊れた物を直すと言う事には不向きな力。
だがしかし、京のメンバーに一人、こう言う事に向いた力を持つ能力者が居る。
「海」は、滅多に使わない京のメンバー同士が連絡を取り合う為だけのアイテム「携帯」を取り出し「翼」に連絡をした。
『な、何の音だこれ!?』
何も考えず、ただボーッとしていた其の時、突然何処からともなく聞こえて来た音色。
初めて聞く其の音色に暫し耳を預け、自身の胸にそっと手を当てると、懐に忍ばせていた「それ」を取り出す。
「翼」は、徐にそれの蓋を開けた。
鳴り止む音色、代わりに聞こえて来る「海」の声。
「海」からの急な呼び出しは初めての事で、「翼」は酷く戸惑いを感じたが、それも一瞬。
『超、ラッキイィィィーーーーーッ!!!』
意気揚々とステップを踏んだりなんかして。
それでも、とても急いで向かった。
今までに無い程、急いで向かっていた。
『これは・・』
「翼」は、ただただ驚いていた。
「海」は、言った。
『事情は後で話す。』
状況を把握出来ないまま作業に当たる「翼」
「翼」の能力は木の力、木造のみにはなるが「翼」の力があればこの事態を最速で解決出来る。
「海」の考える通り、街は回復へと加速して向かう。
『大体は、片付いただろう。』
怪我を負っていた人達の傷は癒え、街もほぼほぼ元の姿を取り戻した。
実際に作業を進めると、瞳に映る程では無かった。
時計も、まだ鳴っていない。
当初考えていたよりも、随分と早く修復を終えられた。
「海」は「翼」に感謝を伝えると、現状「海」が理解している事を「翼」に伝えた。
「翼」は「実果達」に言った。
『残念だったな・・』
いつも通りの「実果」と「凛恵」。
『せっかく変わって貰ったのに、なんか悪いね。』
「翼」は、とても小さな声で言った。
『また、変わってやってもいいぜ・・』




