『G3』
world of light16
「彩」は「香」を横目に、こう切り出した。
『私は抜けさせてもいます。今の私に出来る事は、何も無さそうなので。』
『私は・・』
『香は香のやりたい様にやればいい。貴方は貴方なのだから。』
『私は・・戦う。まだ、出来る。』
「彩」は「香」に背を向け一言「そう」とだけ言い残し、その場から下がる。
その後ろ姿は誇らしげな笑みを浮かべている様だった。
「彩」は「銀河」の側で浅く頭を下げ、その場を後にした。
「太陽」と対峙する「香」。
『太陽・・貴方とはずっと昔から、知り合いだった気がする。ーーーーー疾風ノ太刀。』
「香」を中心に空気は荒れ、風が吹き荒れる。
荒野の地、その足元からは石ころや雑草は吹き飛ばされスッキリとして見える。
吹き荒れている空の中心で輝く刃、それを一振り、ピタリと収まる空。
「香」の掌に灯る疾風は、翠光纏う疾風の太刀。
優しく皆の頬を撫でる。
『香くんだっけ?君は何者だ?』
『真依理、さん・・私は、別に・・』
『能力は一人に一つってのが当たり前だと思ってたけど、そうでもないのか?それにそんな力、見た事ねえぞ。』
そう言い放つ「明希正」と、側に居る「香」「真依理」を巻き込む大きな力。
『疾風斬撃超多連突破。』
皆は目を見開いて、技と技が打つかり相殺される其の光景を、目と体に焼き付けた。
「千秋」は言った。
『あの人、すげぇ。』
『みんな凄いけど、あんなの見た事ない。新しい異変なのか・・それとも、この異変の向こう側なのか・・』
『さっきまでの感じだと、春華と同じ様な力だったよな?それがどう言う訳か全く違う力になった。』
「真央」は言った。
『春華にも、あんな事が出来るかも知れないね!』
『凄いですね〜私!いずれは、この中で一番強くなっちゃうかも知れないですよ〜!』
「美冬」は、「銀河」の側で寝そべる者に目をやり、徐に口を薄く開く。
『水の力は、あまり期待出来無さそうですね。』
「明希正」は「香」に感謝の言葉を述べた。
『ありがとな・・えー、香って呼んで大丈夫か?』
『・・木崎と、呼んで下さい。』
『ああ、分かった!』
『やるねぇ香くん!』
『真依理さん・・下の名前で呼ばない方が・・』
『ありがとう、ございます。』
『それはいいのかっ!』
『次来るよ!』
「火憐」のその言葉に皆は身構える。
未だ無意識下で技を打ちまくる「太陽」、辺りを薄暗くする黒い衝撃波、それを散らせる疾風の刃から繰り出される斬撃、其の衝撃波。
技と技のぶつかりに生まれるエネルギー、其の力に「朱夏たち」は体の自由を奪われている。
「真依理たち」も技を使い「太陽」の力を散らせるが、技を使う目的がハッキリとしていない消耗戦。
強いて言うなら、納得のいくまで、満足するまで、とことん付き合ってやろうと、そう言う戦い。
『香くん、先に帰った・・彩くんだっけ?彼女も同じ事が出来るのかい?』
『いえ、この力は彩には無い筈、です。』
『香くんの方が強いのか、頼もしいな!この戦い、どう決着を着ける?』
『分かりません・・それと、彩の方が強いです・・多分。私に無い力を持ってる・・』
『彩くんも・・君達は一体・・』
その時、「火憐」は「太陽」に掴まれ、炎の様に熱い力で身を焼かれた。
皆の「火憐」を呼ぶ声が吹き抜ける。
炎の中より聞こえる「火憐」の声。
それは『大丈夫』と言っていた。
技を振り切り、一息吐く。
「火憐」は、その力に「火」を感じた。
自身の力をイメージさせられた。
火の技を喰らうと言う事、その感覚。
それは、思っていたよりも痛かった。
再び辺りを覆う黒い衝撃波。
それは疾風の様に吹き荒れ、炎の様に大地を焦がす。
「香」も技を振ろうとするが、上手く体が動かせない。
先程よりも強い力。ジリジリと体が焼かれる様であった。
皆は地に伏せ其れを耐える。
刹那、ふと体が軽くなった様な気がした。
「香」は刀を振る。
『疾風斬撃超多連突破。』
疾風怒濤の斬撃波。その場は猛烈に空が荒れ、中心から外周へと何もかもを吹き飛ばす勢いで風は吹き抜ける。
この時皆は、何も理解していなかった。何が起こったのか。
特に理由も無く、ただ「太陽」の技が急に勢いを無くしただけ、その程度に思っていた。
一人を除いて。
「火憐」の胸の辺りで輝く小さな瞬き。
それは、「銀河」も初めて見るモノであった。
「太陽」の力は、先程よりもよりハッキリとその場に炎を生み、その炎は強く激しく燃え広がる。
周囲一体を焦がす業火の黒炎。
皆は唾をゴクリと飲み、身構える。
刹那、その黒炎に皆の体は包まれた。
『何とも、ない・・』
『・・こういう技なのか?』
『分からない・・』
『どうなってるんでしょうかぁ〜?』
『・・・』
『これは、どうなってんだ?』
『わからない・・でも、チャンスだ!』
『・・・ーーーーー』
先程までは風圧で殆ど体を動かす事は出来なかった。
間違いなく炎に身を灼かれている。が、身体は何ともない。
寧ろほんのり感じるこの温かな熱に包まれていると、ホッとする様な感覚さえ覚えていた。
技を打つ「香」。
疾風怒濤の斬撃波は、この炎をより強く燃え上がらせた。
『其の技は使わない方が良さそうだ。』
そう言った「真依理」の顔に焦りは無い。
皆は沈黙している。静かに揺れる、炎の中で。
次第に炎は薄くなり、視界は徐々に鮮明になっていく。
そして、その場から炎は無くなった。
肌はまだ、ほんのり暖かな温度を残している。
その時、突然「火憐」は、頭から倒れ込んだ。
皆は駆け寄り口々に声を掛ける。が、返事は無い。
「太陽」は、「火憐」に集まる者達目掛け技を打つ。
しかし、その力が皆に届く事は無かった。
『アイテムは技とは違う。アイテムを使う事で、ここまでバテる事は無い筈なのだが、コレは・・』
「太陽」と皆の間に割って入る「銀河」。
「太陽」の力を右掌で叩き落とすと、「火憐」に目をやる。
胸元の輝きは見当たらない。
「銀河」は「火憐」を移動させる様「朱夏たち」に頼むと、その後そこから動くなと命じた。
「朱夏たち」は「火憐」を「雫」の側まで運び、降ろした。
そして、言われた通りその場で待つ。
「銀河」は小さな声で言った。
『良い名を思い付いた。』
「真依理」は言った。
『何にか言いましたか?』
『君達も、下がっていてくれないか?』
横になる「雫」と「火憐」、その側に皆は居る。
『どうするつもりなんだろ、銀河さん・・』
『勝つだけなら訳は無いと思うが、それでは太陽君が・・』
少し離れた所には三人の影。
『君達も来ていたのか。』
「さて」と、少し気合を入れ見合う二人。
『今の太陽に何を言っても伝わらないと思うけど、何とか自力で戻れない?』
『まぁ、無理だよな。力の暴走は珍しい事でも無い・・自我を取り戻すなんて事、先ず起こり得ない。だけど、暴走した奴を助けようとする・・此れも又、起こり得ない事。
戦いの中でしか充実感を得られない様な奴らばかりだ、顔を合わせれば衝突は避けられない。自身の力以外の全てを否定し、各々色々な物事を賭けて衝突する・・
弱力任せに暴れているだけの者には未来が無い、未来が無い者には存在価値が無い・・何かと衝突してばかりの黒の世界だけど唯一、誰も近寄らず誰も相手にしない、されない存在。
助けるなんて真似・・・何処かで誰かに消されるか、自身で自身の消滅を加速させ、一生を一瞬で散らせるか・・
力を思いっきり使うと、気分が高揚して気持ちが良いみたいだ・・暴走状態でもそう言った感覚はあるのか?』
ーーーーーーーーーミルキー・オーレオル・オルゴール
小さな箱の様なソレは静かに開いた。
高い天を吹き抜け、全てに行き渡る音色、高鳴る鼓動。
辺りはゆっくりと白く濁る。
徐々に灯る熱、穏やかに揺れる輝き、それはあっという間に世界を彩り、千紫万紅光彩陸離に目を奪われた。
瞳に映るものは全て知らないモノ、故に何も見えない、何も映さない。
得体の知れない全てに視界を奪われた「太陽」は一瞬、自我を取り戻した様にも思えた。
『否定し、否定される戦いの連鎖。渦中に有る力は欲を満たし、悲しみを生む。この力はこれからもそう有るのか、或いは又違った別の道があるのか。』
『始まりは悲しいものだったのかも知れない。この世界に限って言えば間違いなくそうだろう。それなら、其れを否定してくれ。』
『これより先の事は太陽に任せよう。俺は今まで負けた事が無い。そしてそれは、これからも・・・ーーーーーー』
『ワールド・オブ・グレイ。』




