『F3』
world of light14
「銀河」は、その場に残る彼、彼女等に声を掛ける。
彼等の護りの技は溶ける様に砕け散り、静かに熱が舞う。
体には、複数の傷跡が見受けられる。
「千秋」は、言った。
『あの人達は何者なんすか?俺達と似た様な力を持っているみたいですけど、これじゃあまるで別物・・』
『そうだよ、彼等は君達とは別物。』
「皆」は俯き、声を詰まらせる。
『彼等からしたら、君達が別物だ。自信を無く事は無い。』
『別にそんなんじゃないですけど・・』
前に飛ばない細い声。
『もっと強くなりたいかい?』
皆は声を揃えて言う『はい』と。
迷う事なく素直に一言「銀河」は言った『なれるよ』と。
僅かな時間で体温を上げた「五人」。
その者達は自分達で工夫し、力の可能性を開拓していた。
それは、この世界に守ると言う概念を生んだ。
誰からの教えも無く、自分達の力だけで。
『あの日』以来、きっと「この子達」は色々考え、いっぱい頭を使い、頑張って来たのだろう。
持つ者はとことん持ち、持たない者はとことん持たないモノ。
自身の持つ力、その温度を上げると言う事は、かなり難しい。
それを自身で、自身達で成した。
共に皆で成長出来る、とても良い関係なのだろう。
頭を上げる「その者達」に「銀河」は言う。
「五人」は、此処に建つ学舎の話を聞き、目を輝かせた。
その目は「銀河」に、何かしらの力を与える様であった。
「銀河」は、その場を後にした。
去り行く「銀河」の背を目に、「五人」は強く拳を握った。
「銀河」が、その場を離れて直ぐの事。この世界では初めて感じる悪寒にも似た感覚。とても嫌な予感がした。
都の外で感じる強いエネルギー。そのエネルギーが誰のモノか。それは考えるまでも無く明白。
微かに揺れる大地、全身をすり抜ける生暖かな風、聞こうと思えば聴ける音。
どんなに非力な者でも、力を持つ者なら何も感じない訳がない。
『行きたくない』と『行かなければならない』と言う気持ちに、刹那の葛藤があったかの様に思う。
「銀河」は、直ぐ様いつもの荒野へと転移した。
『これは・・』
荒野へとやって来た「雫」は、目を疑いたかった。
或いは自身の感覚を。
「真依理」「明希正」「火憐」は、多くの傷を負い屈んでいる。
穏やかとは、とても思えない。
もしそう思えたのなら、何の危機感も抱く事は無い。
どれだけの傷を背負っていようとも。
其処に有る全てが、何かしらの危機感を教えてくれている。
「雫」は自身の力を疑えない。
この世界の最高峰と言える力が、嘘を教える筈も無い。
『流水ノ囲イ。』
「銀河」の眼下に広がる戦いの後。
この世界の強度はかなり高い。高く設定されている。
この強度になるより以前に、それこそ此の世界が出来てまだ間も無い頃に、この戦いが行われていたのなら、世界は遠に消し飛んでいたであろう。
一度、消えた事のある世界。だけどそれは中身だけ。型が失われた訳じゃない。
無限の黒の空間にある世界の型。
この戦いは、世界の型にまで影響を与えかねない。
誕生してまだ日の浅い世界。
誰もこの世界の名前を知らない。
そんな世界を強く認識する、認識し続けると言う事は、とても難しい事だ。
自分では無い誰かに認識されると言う事は、中身に大きな影響を与える。
それは、強ければ強い程に。
何となく其処にあるから有る様な世界。そんな世界では、直ぐに誰からも認識されなくなってしまう。
一部の「天体人」を除いて。
この世界の者達は力を持つ事によって、この世界の事を強く認識出来ているかの様に思える。
その事もあってか、この世界はより強く、より強固なものになっていった。
そう簡単には壊れない。壊させない。
「銀河」は、其処に倒れ込む者に声を掛ける。
『大丈夫かい?』
「真依理」「明希正」「火憐」は、怪我こそしているものの、多少の余裕はまだある様に窺えた。
然し「雫」は、怪我こそしていないものの、かなりバテている様に見える。
無理も無い。
「彩」と戦ったばかりでこれは、流石に骨が折れるだろう。
「雫」は言った。
『確かに・・守るって、攻めるよりもずっと、難しいですね。』
「雫」は、そっと瞳を閉じた。
「明希正」は言った。
『雫は大丈夫なんすか?』
『ああ、疲れて眠っているだけだ。』
『そう、ですか・・良かった。』
「真依理」は言った。
『これはどう言う状況なのでしょう?あっ、いや、この場所に来たばかりの銀河さんに、こんな事を聞くのも変な話なんですけど。』
「銀河」は、悠々と答える。
『力の暴走。』
『力の、暴走?』
『自身の持つエネルギーの過剰な活動によって、熱が暴走している。そして、湧き上がる熱が無意識に技として表に出ている。』
『どうすれば止められますか?』
『動けなくなるまで暴れさせるか、動けなくなるまで痛め付けるか、どちらにせよ太陽の無事は無い。』
「火憐」「真依理」「明希正」は、「銀河」のその言葉を最後まで聞かずして「太陽」へと駆け行く。
『これは何の騒ぎですか?』
『太陽・・さん?』
其処へやって来た「彩」と「香」が、「銀河」の背後に立つ。
顔を顰める(しかめる)「彩」と「香」。
「銀河」は、言った。
『いやぁ、ちょっとね。それよりも、休まないでいいのかい?』
『この力の反応、感覚・・休まるものも休まりません。』
『確かにね。香さんも、来たんだね。』
『はい。何か、とても嫌な感じがしたものですから・・』
『菫さんは?』
『母は家にいます。何かあった時、守れる気がしませんから・・』
「彩」は自我を失い暴れる「太陽」に目をやり言った。
『・・大丈夫なんですか?』
『ああ。』
『・・太陽君を止めましょう。そうすれば全ては元通り、と言う事ですよね。』
『私も戦います。私にも出来る事はある、と思います。』
「彩」と「香」も又、「皆」の背を追う様に駆けて行った。
『これは・・』
背筋が凍てつく様な力の気配、ただならぬ事態を感じ、五人「千秋」「朱夏」「真央」「春華」「美冬」も、その場所へとやって来ていた。
「太陽」に駆け行く「皆」の姿が「銀河」の瞳に映る。
その光景は、これでもかと「銀河」の目を引いた。
その戦場で振るわれる力に、「太陽」を壊そうとするものは一つも無い。
だけど、このまま行けば何れ(いずれ)「太陽」は消える。
今の「太陽」は、溢れ出る熱を一心不乱に放出するだけの存在。
危なくはあるけれど、強くはない。
これは只の消耗戦。
この戦いの先には何も無い。
自身に与えられた時間を使い切り、消え行く者に出来る事も又、何一つとして無い。
どんなに強い者であったとしても、姿形を失い無力となる。
してあげられる事も、何一つとして無い。
『重要なのは型。型さえあれば、中身はどうにでもなる。』
肯定力と否定力、創造力と壊滅力、その究極系。
この空間で、「銀河」の思い通りにならない事なんて・・何も無い。




