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World of Gray  作者:
『world of light』
29/45

『E3』










world of light13










フィールドに立つ二人。

「彩」と「雫」の持つ力を考えれば、その場所はかなり手狭に見える。

戦いの中で、二人は自身の持てる力に嘘は付かないだろう。

「銀河」は、安心した面持ちで、その場所に有るベンチに腰掛けた。

その場には「彩」と「雫」そして「銀河」、だけではなく後五人、何時ぞやの少年少女も居た。

技を打ち合う「彩」と「雫」を横目に「銀河」は、その者達に声を掛けた。


『君達、少し離れていた方が良いかもね。それか、僕の後ろに隠れていてくれないか?』


『大丈夫です。自分の身くらい、自分で守れます。』


薄い熱の膜が、その者達五人を囲う。


火用壁かようへき。』


『・・・・・』


大地は強く蒼碧を発色する。

地を枯らすかの如く猖獗しょうけつを極めていた。

「彩」の意思とは関係なく鎮まる青の猛威。

生長する事を忘れたかの様に、途端に動きを止める。

隆起する氷結、おもてを濡らす。

二つの涼しげに澄む表の情、氷上に取られる十の目。

その場は、幾千もの小鳥が囀る様に鳴る。

一閃の霹靂、氷結の払え。


『あの子達、なかなか派手にやるな。』


「銀河」は、その場に居合わせる「朱夏」「千秋」「真央」「美冬」「春華」に目をやる。

その者達五人を囲っていた熱は凍り付き砕け散り、見る影もない。

「千秋」は「朱夏」の肩をポンと叩き、言った。


『今度は二段構えで行こうぜ。』


「千秋」は右手を地に付く。

其処より広がる金の粒は、大地を盛り上げ五人を囲う。


金用壁ごんようへき。』


『これだと、あの二人の戦いが見えない・・』


『・・・・』


「彩」の瞳には「雫」だけが、「雫」の瞳には「彩」だけが映っている。


『雫君は強いのですね、とても。』


『いえ、それを言うなら彩さんこそ。もう少し前は、もっと強かったんじゃないですか?』


『それは分かりません。そうだったとしても昔の話、戻るかも分からない失ったもの。でも、雫君と此処迄やり合えているのだから、然程弱くはなっていないのかも。』


『それこそ分かりませんが、手を加減する余裕はありませんので覚悟してください。』


『分かりました。本気で行きます。』




空に優しく波紋する熱、「彩」に被さりて力を纏う。




『迅雷突超一点突破。』


『氷天ノ払エ。』


「雫」は、目にも止まらぬ其の刀身を、地へと打ち落とした。

雷を纏いし刺突、空を凍て付かせる斬撃、その衝突はキシキシと辺りが軋む様。

蒸気の上がる様だけが、二人の打ち合いを教えてくれている。

刃が空間に付けた傷跡の様に、それはそこに残る。

そして次の瞬間には、それは目には分からなくなっている。


『迅雷地突・雷鳴啼哭らいめいていこく。』


「彩」の握る其れは地を刺す。

そしてそれは強い輝きと共に、大きな音を周囲に轟かせた。

「雫」は雷の海を飛び越え「彩」へと詰め寄る。


『迅雷天突・飛雷震。』


地に刺さる刀尖を抜き、天を突く。

刀身から放たれる雷が空を揺らす。


『氷天ノ払エ。』


一太刀、雷は凍て付き、地へと打ち付けられた。


『覇道・氷天一花、黒百合。』


凍て付く天より掛かる零下の圧。

その圧力は時を追う毎に、更に強く、より強く伸し掛かる様であった。

ぱらつく氷雪、蒸気を上げる「彩」の身体、二人は刀を打ち合っている。

暫しの鍔迫り合いの後、二人は手を止め腕を下ろす。

溶け行く凍て付き、土を押し上げ草木が実る。

中央都市外れにある、とある競技場。

「銀河」は、二人に歩み寄り言葉を掛けた。


『良い試合だった。が、思ったより派手にやったね。』


『相手が相手ですから。一応、考えて力は使ったつもりですよ。』


『同格同士での戦いは、戦う前から考えないと行けない事が沢山ありますね。覚悟、決着については特に。』


『相手を叩きのめし、勝つ事だけを目的とする戦いなら、そうかもね。

「とことん、どこまでもやってやる」って、先に決めた方が勝つ。

逆に「この位で終わるだろう」とか、落とし所を勝手に決め付けると負ける。

決着は、時の流れに身を任せた結果の終着点。でもこれは、賢い行いじゃない。

馬鹿げているのは行いそのものと言うよりも、そんな思考を持たせてしまう環境の方かも知れないが。

着くべき場所を決めて戦っていた二人だからこそ、多少無理をしていても楽しく見ていられたよ。』


「彩」は感謝の言葉を口にすると、続けてこう言った。


『能力の強さは、あの表が指す通りだと思います。扱う者次第でランクの上下をひっくり返す、なんて起こり得るのでしょうか?』


『ランクが高い方が強いのは間違いないよ。でも、様々な事が今後変化していく。

今この瞬間には難しい事でも、数日後にはそうで無いかも知れない。

様々な工夫で、ランクなんてどうとでも成るかも知れない。そんな日が、そう遠くない内に来ると思うよ。変化は、今この瞬間もしているからね。』


『・・現状は、自身よりランクが上の者には勝てない、と言う事ですか?』


『そう思っていたけど、もう既に分からないよ。自身と同じか、自身よりも強い者を超えるって結構難しい事だと思うんだけど・・』


そう言うと「銀河」は視線をずらす。

その先には五人の男女。


『あの子達は・・』


『覚えているかい?』


『はい。地図を記している最中、他の者達と比べて明らかに温度が高かったですから。』

 

『今のキミは覚えていないかも知れないけれど、僕達はもうちょっと前に会っているんだ。因みに、その時に色々あってキミが守った子達だよ。』


『私が、あの子達を。』


『あの子達、初めて会った時よりも温度がかなり高くなってる。

それに彼らは、君達とは又違った力の使い方をしていた。

ある考えに至るか至らないか、その工夫は十二分にランクをひっくり返す可能性を秘めている。』


「雫」は言った。


『彼らの力に、どんな工夫があったんです?』


『守る力。』


『守る力?』


『そう、護りの力。この世界には元々、力は無かった。

だから何かを、若しくは何かに攻めると言う事をしない。攻められないのだから守る必要も無い。

力を持った世界は先ず攻めると言う事を覚える。これは妥当な所だろう。力を持って先ず第一に「守る」なんて事をする者は先ず居ないだろう。

これは生命体の本能の様なもの。攻めると言う事の中に、その先に全てを見出す。

この力を持って僕達の元居た世界は、争うと言う事が盛んになった。だけど此の世界では、競うと言う方向へと向かっている様に思える。

争う事と競う事は似て非なるもの。その競いの中で、より良き物を生み出して行く。・・理想的だな。』


『つまりは、力を持った僕達は、此の力で「何かを」若しくは「誰かを」攻められる様になった。だから、守る必要も出て来た。と言う事でしょうか?』


『その通りだ。競いの中で、攻めるだけではランク表の通りになるのは必至と言える。先にバテた方が負け。

だけど、強い者程守ると言う事をしない。力任せに押す事こそ、勝利への近道だと思っている者が殆どだ。

有効的に守りの技を使う事で、同格の者は勿論の事、自身より格上の者にも優位に立てる可能性がある。

自分自身の力だけを信じて押し切ろうとすると、色んな所にガタが来る。

そうならない為にも、守ると言う事が必要になってくる。

攻めるだけでなく、守ると言う事にも力を使う。これは、守ると言う事が必要だと感じた者にしか出来ない事だ。

これが自身よりも強い者を超える力。ランクをひっくり返す可能性。』


『守る、そんなに難しい事の様には感じませんが・・』


『君達より強い力を持つ者なんて、この世界にはそうそう現れないと思うから、縁の無い話かも知れないね。

自分の身は自分で、余裕を持って守れる。守ると言う事をしなくてもね。それだけの差が今はまだある。』


『今は、まだ・・』


『雫君?』


『すいません。思いのほか身体が疲れてるみたいで。でも特に心配はありません。』


「彩」は言った。


『守ると言う事が重要な力だと言う事は分かりました。では、攻めると言う事に対してはどうなんでしょうか?私達は十分に力を使えているのでしょうか?』


『それは問題なく使えていると思うよ、特に君達は。』


『それは「この世界の者達の間」では、と言う事ですよね?この力は元々この世界に無かったもの。この力が元々あった世界の人達と比べて、何か違いがあるのかなと・・』


『うん、あるよ。大きく違う。』


『何が違うのでしょうか?』


『僕達が元居た世界では、相手を叩きのめす為だけに力を使っていた。基本的にはね。

さっきも言ったけど、争い振るう力と、競い振るう力とでは、同じ力でも大きく異なる。其処に大きな違いがある。

力の使い方としては、似ているものが多いけど、目的が違う。目的が違えば名前が変わり、名前が変われば結果が変わる。

人に名前がある様に、技にも名前がある。技は、使い手の呼ぶ名称のイメージを強く持つ。

単純な威力で言うと此の世界の者達の技は、僕の元居た世界の者達に劣るかも知れない。だけど、この世界の者達が使う技の方が、ずっと強くて、ずっと魅力的だ。』


『それは、銀河さんの好みの話ですか?』


『うん、そう言うだね。僕は此の世界の者達が扱う技の方が好きだ。』


『・・でも、弱い。』


『今は、まだ。でもいずれ、相手を叩き壊す力より、自身を乗り越える力の方が強い時が来る。焦る事は無い。君は強い。

そして、これからもっと成長し強くなれる。前の身体の時よりも。』


『だと良いのですがーーーーーー』


「彩」は、突然片膝から崩れ落ちた。

「銀河」は「彩」の肘を掴む。


『大丈夫かい?』


『はい。』


『今日は、もう帰ろうか。』


『では、お先に帰らせて頂きます。』


「彩」は、着流す其れの上より身体を撫でる。


『あのまま続けていれば私は・・・守りの力、ですか。』


歩き行く「彩」の後ろ姿を横目に「雫」は言った。


『正直な所、僕もかなり堪えている様でして・・』


『雫君も、帰ってゆっくり休むと良い。』


『はい。・・その前に、荒野に寄ります。太陽の様子が気になるので。』


『ああ、分かった。』


「雫」は、その場を後にした。


『彩さんも彩さんだけど、雫君も雫君だな。』


「木崎彩香」改め「木崎彩」。

この世界に於いて、「月姫」の力を強く受け継ぎ、「月姫」の衣までもを纏う者。

本人には何の自覚も無い様だが、それは「月姫」最強の守りの技。

本人に自覚が無い以上、技としての効力は完全とは言えないが、事実守りの技は現れている。

前に一度それを使い見せた時は、「太陽」との戦いの中でだった。

「彼女」は「月姫」の加護を受けている。「銀河」には、そう思えてならなかった。

そして、「水嶋雫」。

この世界の者達が持つ能力の全てが全て、「月姫」の影響だけによるものでは、どうやら無いらしい。

「銀河」の元居た世界に於いて、凍結の力は最強格の一つ。

「月姫」の衣に守られていなければ「彩」は、どうなっていた事か。

とは言え「銀河」は、それ程までには、事を深刻には考えていなかった。

二人の力の事も、試合後、結局最後まで顔を出さなかった「太陽」の事も。










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