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World of Gray  作者:
『world of light』
26/45

『D3♭』










world of light10










「菫」「彩」「雫」の三人は「銀河」に言われた通り、街を見て回っていた。


『初めまして、よろしくお願いします。』


「雫」は「菫」「彩」と、それぞれ挨拶を交わす。


『あなた方が木崎さん、あの大きなお家に住まわれている。』


『・・雫さんは、かなり強い力を持っているんですね。』


『いえ、それ程でもないですよ。多分、彩さんと同じくらい。』


『・・・』


『ところで、菫さんは何者なんですか?僕達とは少し違う、何か・・変わった力を持っている。』


『私は、異能力者じゃありませんよ。どの能力もありません。多分、銀河さんから預かっているこの指輪が違和感の正体でしょう。』


軽く持ち上げられた手、その薬指に嵌る(はまる)細いリングが小さく輝く。


『それは?』


『銀河さんの大切な指輪だそうです。これを持っていると、どの能力も持っていない私でも、一定量の熱を持つ事が出来るみたいです。人が持つ力にも多少、敏感になるとか。』


『なるほど。この仕事は終わった様なものですね。この都は木崎家から発展し、此処まで大きくなった。都内について貴方程詳しい人はいない。

その貴方が止まった世界を自由に動く事が出来、其処に暮らす者が能力に目覚めた者か否か分かるのだから。』


『ここに、三人分の都全域の地図があります。

私達三人は別々に行動し、地図に従って順番に家を回り、能力に目覚めた人が住まう宅には印を、能力を持つ者とそうで無い者複数人で暮らしている場合には、持つ者の名を記して下さい。

雫さんは皆んなの名前が分からないかと思いますので、特徴でも書いておいて下さい。』


『分かりました。しかし、こんな物まであるなんて流石ですね。』


『これは銀河さんが作った物ですよ。都内の地図は私も作っていましたが、この地図は都外の事まで記されている。都の外に関しては、この地図を頂いた時に初めて知りました。

都の内に関しても、私が作った物よりもコチラの方がずっと正確です。私はこの都、この世界について、そんなに詳しくは無いんですよ。』


『・・流石ですね。』




その頃「銀河」と「太陽」は。




『大体形になって来たかな。』


『そうだな。』


『このフィールドを使って模擬戦でもしてみようか。広さ等々これで間に合うのかの確認を兼ねて。』


『別に俺は構わねえけど。』


フィールドに立つ二人。

「銀河」は、足元に爪先で十字を切る。

「太陽」は言った。


『アイツら、ちゃんと仕事してんのかなぁ。』


『しているだろ。良い人達だからな。』


『それ理由になるか?』


『確かに、理由にはならないね。でも、俺が求めている事くらいはやってくれている。』


『偉く自信満々に言うな。求めてる事ってなんだ?』


『この世界の地理は全部頭に入ってる。能力に目覚めた者の数も、大体は把握している。でも、名前が分からない。必要なのは何処の誰って話だ。』


小さく笑う「太陽」。


『要は名前と住所が知りてえってことか?』


『まぁ、そう言う事だな。』


大きく笑う「太陽」。


『まるでガキの使いだな!』


『いやいや、これは重要な事だよ。』


一息吐き、整える。

「太陽」は言った。


『じゃあ、やるか。』


『いつでもいいよ。』


『銀河が相手なら本気を出せる。』


『都が消し飛ぶのだけは勘弁してくれよ。』


『ああ、わかってる。』



力強く地を蹴り、勢い良く「銀河」へと向かい行く。

一直線に飛び行くかと思われたが途中、地を足で突く「太陽」。

空を幾度も蹴り、空中を飛び交う。

地に残る何か重たい物でも引き摺ったかの様な跡、その跡の先は強く抉れている。


『勘が冴えてるね。』


『勘じゃない。空間に銀河の熱を感じた。』


『ふむ、いい感じだね。』


背後を取り、思いっきり剣を薙ぐ「太陽」。

「銀河」は悠々と振り向き剣を叩く。

その刀身は空を舞った。

掌に残る柄も、やがて塵となる。


『クソめんどくせえ力だな。』


目には何も変わらないが、何かを感じ取り後方に下がる「太陽」。

その体は突然ピタリと止まり、空にはりつけとなった。

地より浮く足に一切の揺れも無い。


『太陽なら目には分からなくても力を使った形跡、温度で俺の技に反応出来る。その場の熱が上がっていると言うことは、其処にエネルギーの動きがあると言う事。

つまり力を使っていると言う事になる。でも、どんな技、力を使っているのかまでは分からない。

俺の能力を知っている太陽は、俺の力を感じたら兎に角それを避ける。だから、ふたつの技で挟み撃ちにした。

ひとつは元ある空間を丸ごと抉り取り、もうひとつは元ある空間から中身だけを抉り取った。

力を使えば必ず其処に熱は生じる。だけど俺の作る『墓井戸空間』(ぼいど)は、使った瞬間には熱を生むが痕跡は残らない。

元ある空間を何も変えず、ただ其処から全てが無くなる。

何も無い世界で熱は生まれない。能力は勿論、全ての運動は停止する。』


何の反応も無い。

恐らく「銀河」の声も聞こえてはいない。

感情を失ったかの様に、静かに空の絵となる。


『これじゃあ会話も出来ないね。』


「銀河」がふわりと腕を上げると、辺りは白く濁り穏やか輝きを放つ。

一番強く輝きを放つ腕、その輝きは手に、指に、爪に、世界が目を瞑る程の力を放つ。

「太陽」は、眉ひとつ動かさない。

焦りの全く見えないその顔、非常に冷静に見える。

「銀河」の力は何も無い空間をゆっくりと、一直線に進んで行く。

それは「太陽」に打つかり、同じくそのまま進み続ける。

「太陽」の身体がある一定の場所まで来ると、その身体は勢い良く空間から弾き出された。

肩から着地し、数回地を転がる。

膝に手を突き、ゆっくりと立ち上がった。

動く手足の一抹の喜びを顔に映し、「太陽」は言う。


『ってて・・まんまと銀河の罠にハマってざまぁねえな。』


『何も無い空間に捕らわれるのも悪く無かっただろ?』


『ああ、そうだな。今が最高に自由だと感じられる。』


「太陽」は腕を「銀河」へと突き指し示す。

力む拳から放たれる力。

「銀河」は、向かい来る其れを地へと叩き落とす。

「太陽」は其の間に距離を詰め「銀河」に触れた。




『後で戻してやるから許してくれよ。』




『アウト・オブ・ブラック!』




『・・・ーーーーーー』




「銀河」は「太陽」を蹴り飛ばす。が、姿勢を低くしそれを躱す。

「太陽」は前のめりになり殴り掛かるが、それは通らない。

「銀河」は再び「太陽」を蹴り飛ばす。

目では見えている、感覚としては間違いなく交わした筈なのだが、どういう訳か「太陽」は「銀河」の動きに全く着いていけなかった。

「太陽」は蹴り飛ばされ、背中を地に打ち付ける。


『時間操作・・しやがったな。』


『俺と太陽では時の流れが違う。俺の1秒と太陽の1秒は同じじゃない。殴り合いで俺に勝つのは難しいと思うよ。』


『勝つ、か・・それで言うと俺はもう負けてる、墓井戸空間に入ってしまったその時にな。墓井戸空間を空間断絶で抉り取れば、それで全てが済む話だ。・・俺を試しているのか?』


『いやいや、そんなんじゃないさ。ただ、太陽との『試合』を楽しんでいるだけだよ。』


『楽しむ・・楽しいか?力比べなんかしなくても、勝敗なんか目に見えてるだろ?』


『勝敗を楽しんでいる訳じゃ無いさ。太陽の持つ熱は270度前後、俺が持つ熱は1600万度前後、普通に考えれば負けは無い。』


『嫌味かあ?』


『そうじゃない。太陽は強い。持つエネルギー、その温度だけじゃ測れない強さがある。』


『この世界じゃ、最強かも知れねえな。』


『俺達の元居た世界は、戦って勝つ事が全て。それ以外には何も無い。そんな世界の中で力の弱い者は残れない。

弱い者は淘汰され、強い者だけが残っていく。ごくごく当然な自然の摂理。その中で残る弱い者は、もう弱い者じゃない。

何か特別な強い力を持っている。強いと言われる者よりも、よっぽど希少で強い存在。』


『ただ珍しいってだけじゃねえか。』


『珍しい、は重要な事だ。』


『俺は珍しいか?』


『ああ。』


『だけど、俺は弱くない。』


『そうだね。だけど、太陽の戦い方じゃ自分より強い者には勝てない。

他人の力を否定する、自分以外を否定する、これは自分よりも弱い者にしか通用しない。

必要だと思うものは受け止め、受け入れる。

今の自分を超えたいのなら、自分以外も肯定する事。全員じゃなくていい、ただ否定はしない事。』


『・・大きなお世話だ。・・さぁ、これからが本番だ。始めようぜ、試合。』


『まだやるのかい?』

『当たり前だ。こんなんで終われるかよ。俺が勝つまで付き合えよ、銀河!俺と戦うのは楽しいんだろ?』


『ああ、そうだった!だけど、負けてあげないよ?』







『太陽と戦うのは楽しい。全てにおいて天井を見た、そう思っている俺よりも、ずっと強く輝いている。』










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