『B2♭』
world of light7
「銀河」と「太陽」は、暫くの間「真依理」「明希正」「火憐」と共に行動をする事となった。
都を案内し、今後の目的に付いても少し話す。
皆は興味津々に、又は嬉しそうに話を聞いていた。
「銀河」は木崎家へと向かう為、一通りの話しを終えると、その場を後にした。
あまり大勢で押し掛けると、相手も困るだろうと言う「銀河」なりの気遣いだ。
する事が特に無い「太陽」は、そこら辺に適当に腰掛け「銀河」の帰りを待つ。
その間、「火憐」は頻り(しきり)に「太陽」に絡むが、相手にはされていない。
「真依理」と「明希正」は、その様子を微笑ましげに見ていた。
「銀河」は、目的地へとやって来た。
扉を静かに叩く、反応はない。
もう一度扉を叩く。
そこそこ強く叩いたが、反応はない。
これ以上叩くのは違うだろうと、その場を引き返し、来た道を行く。
『早かったな。』
「太陽」は言う。
「銀河」は、何処か違和感を感じている様だった。
『留守みたいだ。それはそうと此処に来るまでの間、あまり人に出会わなかったな。』
『それがどうした?』
『中央外れに人が少ないのは分かるが、少ないどころか全くいなかった。中央部ですら殆ど人とすれ違ってない。』
『確かにそうだな、なんかあるのか?』
『分からないけど、しばらく間を置いてまた来よう。それで何も状況が変わらないでいたら、その時また考える。』
「銀河」は、達観的に、或いは楽観的に物を言う。
『それはそうと、たまには皆んなの相手でもしてやったらどうだ?』
『誰がするか、めんどくせぇ。銀河がすれば良いだろ?』
『皆んな、太陽と戦ってみたいみたいだよ!』
『ふん、雑魚の相手なんかしたくない。戦いは好きだけど『弱いものイジメ』は好きじゃない。』
「真依理」「明希正」「火憐」は、自身の事を知りたいと言う欲が満ちて見える。
自身の事を知るとなると、唯一知る能力に頼る他ない。
と言うのは方便詭弁の立前で、ただ力を使いたいだけ。
ある物は使いたい。
目一杯能力を使うと、何処かがスッキリする様で、清々しく気分が晴れる。
逆に、使える力があるのに全く使わない、又は中途半端に使うと、何処かが曇る様で気持ちが良くない。
ある種の本能、の様な物なのかも知れない。
ふと「火憐」は言った。
『そういえばあの人、何処に行ったんだろう。』
「銀河」「太陽」と出会う前の話、「火憐」が荒野を彷徨っていた頃。
行けども行けども同じ景色。瞳に映し出されるは、何とも心の踊らない情報ばかり。
夢の中に居る様な、そんな感覚の中で出会った二人の男女。
「真依理」と「明希正」。
二人は不思議な力で激しく打つかっており、その景色に何かが覚醒する様だった。
こうして三人は其処に集まり、暫し三人で行動を共にしていた。
そして、「銀河」「太陽」と出会ったのだが、それより少し前にもう一人、見掛けた者が居た。
その者は顔を合わせると、直ぐに何処かへ行ってしまったのだと言う。
「太陽」は一瞬、その者が『この状況』に関係があるのかとも考えたが、直ぐに『それは無いな』と否定する。
この世界で生まれた者が、これだけ大勢の者達を、こんなにも早く消せる筈など無いと。
もし、その様な者が此の世界に現れたのならば、「銀河」でなくても直ぐに気が付く。
そこまで気になる「熱」は現状、この世界には無い。
それに、「銀河」が探せばいつでも見付けられる。
其れ程気にする事では無い。
『探してやったらどうだ?』
「銀河」は「火憐」に問う。
『探してあげようか?直ぐに、見付けられると思うけど!』
「銀河」は、物陰に目をやる。
『その必要はありません。』
吹く風の様な声、段々と大きく鳴る足音、伸びる影。
涼しげな目をした少年が、其処には立っていた。
『初めまして、銀河さん。雫と申します。』
「火憐」が言っていた「あの人」は其処に現れた。
「太陽」は言う。
『偉くいいタイミングだな。』
『偶然だよ。』
とても静かだったその場所は、徐々に熱を取り戻し、いつも通りの都へと姿を変えていく。
「銀河」は呟く。
『まぁ、思っていた通りだな。』
この世界の者達は皆、温度に斑がある。
人それぞれに違いはあるが、此処で言う違い「斑」とは、そう言った個性の話ではなく、同じ者でも時々によって温度が違うと言う事。
この世界の者達は、ある一定のタイミングで極端に温度が下がる。
こう言った現象は、「銀河」の元居た世界でもあった事。
『催眠』
だが、この世界の其れは、そう言った能力的なものではないと「銀河」は考えていた。
催眠の力を持っている者を、現状この世界で見掛けてはいない。
根本、この世界の者達が能力に目覚めたのは、十中八九ほぼ間違いなく「月姫」の影響だと言える。
そう考えると、この現象は「能力によるものでは無い」と言う答えが妥当になるだろう。
眠らされているのでは無く、それを必要とし自発的に眠っている。
「催眠」ではなく「睡眠」。
珍しい話だが、これも無い話ではない。
自身の持つ能力の都合上、それを必要とする者は居た。
そうでない者からすれば、全く必要の無いもの。
何の意味も無い行為。
この世界の者達は、「銀河」の元居た世界の者達とは、根本的に何かが違うのだろう。
ついでに言うと、これに似た話がもう一つある。
それは食べると言う事。
これも「銀河」の元居た世界では、能力の一つとしてある話。
だけど、この世界の者達は能力に関係なく、皆が食べると言う事をする。
それはそれとして、目の前に現れた「この少年」が今、何か気になる事を口にした。
「銀河」は言う。
『君は先「雫」と名乗ったよね?どうしたの、その名前。』
『これが僕の名前かなと、そう思っただけです。』
『雫君は何か覚えているのかい?』
『いえ、何も。だけど、ぼんやりと思う事はあります。』
『そうか。僕の、僕達の事を、どのくらい知っている?』
『名前だけです。銀河さんと・・太陽君。』
「太陽」の眉間にシワが寄る。
『お前、俺達が荒野で話てる時、近くに居たな?なんで出て来なかったんだ?』
『君に警戒されているみたいだったからね、出るに出れなかった。それに、一人でこの街を見て回りたいって言うのもあったしね。』
『随分と余裕な態度だな。』
『そんな事はないよ。ただ、君とは仲良くなれそうな気がしているだけさ。』
『仲良く・・まぁいい。お前はコイツらより強そうだし、相手してやる。冗談が言えるのは其れが最後だ。』
『いや、やめとくよ。勝てないと分かっているし、これからも冗談は言いたいからね。』
『ふざけた野郎だな。戦う気がねぇなら、その口閉じてろ。』
『戦う気は無いけど、口は閉じたく無いから、戦おうかな。』
『・・来い。』
「火憐」が、その場より声を張る。
『待って!ずるい!私だって戦いたいのに!』
『まぁまぁ!私達は軽くだが、戦った事があるじゃないか!』
『アイツが、どんな力を使うのかも見てみたい。ここは大人しく高みの見物といこうぜ!』
「真依理」と「明希正」の言葉に、「火憐」は渋々上がる肩を下ろす。
割と簡単に納得してくれて良かったと、二人も肩を撫で下ろす。
「銀河」は、言った。
『太陽、彼は弱くないよ。』
『分かってる。「あの女」と同等か、或いは・・・』
『彼女の例もある。あまり力を引き出させ過ぎない方が良いかも知れない。』
『どういう意味だ?』
『・・・』
『まぁ、分かった。適当に相手をする。』
皆は場所を変えた。
やって来たのは都の外、いつもの荒野。
此処であれば、ある程度迄ではあるが、周りを気にせずに戦える。
『いつでも来い。』
『じゃあ、行くよ。』




