表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World of Gray  作者:
『world of light』
22/45

『A2』










world of light6










「銀河」と「太陽」は、とある荒野にて体を休めている。

この世界のホームとしている場所。

とても静かで良い所。


『あの女が使った力・・・まさか、五行の力のみならず、帝の力まで扱うとはな。それに、月姫の・・』


『彼女は月姫の力を強く受け継いでいるみたいだね。納得いかないかい?』


『別に・・』


『そう。良かった。月姫の力を扱う他人を、許せないでいるのかと思っていたから。』


『そんな事、気にしねぇよ・・』


『気になるのは力の方では無く、彼女自身の方かな?面影があったもんね。』


『バカ言うな。』







その頃都では、能力に目覚めた者達が協力し合い、復興活動が行われていた。

その中心に居るのは「木崎彩香」。

一抹とはいかない罪悪感を胸に、彼女は黙々と作業を進めた。

それから暫くの事。

「銀河」と「太陽」は、再び都へと訪れた。

綺麗に積まれた石垣に丈夫な家、澄んだ水が流れ緑が暖かい。

都は以前よりも良い姿になっていた。

その光景は、二人の胸を撃つ様であった。


『これからどうする?』


『この世界の者達は、力について知る必要がある。先ずはその環境を用意する。』


都を一通り見て回った「銀河」と「太陽」は、この世界での協力者を集める事にした。

とても広く大きな都、その中で一際大きな敷地を持つ「木崎家」。

「銀河」と「太陽」は、都北部に位置する「その場所」へとやって来た。

大きな門を潜り暫く進むと、大きな庭が見える。

初めてこの世界で足を付いた場所。

いつも此処に居ると思い込んでいたけれど、普通に考えてそんな筈も無い。

更に庭を進むと、其処には大きな扉があった。

「銀河」が扉を叩くと、扉はゆっくりと開いた。


其処に立つのは見知らぬ女性。

互いは、社交辞令的に挨拶を交わした。

その女性は「木崎菫」と名乗った。

「銀河」は「彩香」を呼んでもらいたいと、お願いをする。

「菫」は、口重たげに言った。


『今ちょっと出ておりまして。中央の方に居るかと思いますが。』


『そうですか。わかりました、ありがとうございます。』


再び中央都市へと戻って来た「銀河」と「太陽」。

「銀河」はエネルギーと、その温度を頼りに探した。

先程都を見て回った時にはすれ違わなかったが、何せ広い都、普通にぶらぶらしているだけでは出会さないのも頷ける。

大凡おおよその見当は直ぐに付いたのだが、「分かった」と言い切れない違和感が何処かに残る。

その原因は、直ぐに分かる事になる。


『こんな所で何してるんだ?お前の保護者が変な感じだったけど、なんかあったのか?』


「太陽」の問いに「彩香」は、徐に口を開き答えた。


『あなたは、誰ですか?』


話しかける相手を、間違えた訳ではない。

間違いなく「彩香」が、そう言った。

ふと目をやると側に立つもうひとつの影、その者も又「彩香」だった。

そっくりどころの話ではない。全く同じ者が二人、其処には居た。

もうひとりの「彩香」も又、「銀河」の事も「太陽」の事も、覚えていない様だった。


『あなた達は私の事を、私達の事を何か知っているのですか?』


「銀河」は、これまでの事を話した。

それを「彩香」は興味深く聞いていた。

見た目こそ同じだが、中身には違いがある様だった。

「彩香」は「銀河」の話すこれまでの話を信じ、質問が絶えない。

一人は真面目に、一人は真面目に。

「銀河」は、答えられるものには一通り答えた。

順番など決めてはいないが、今度は「銀河」が質問をする番。


『何があったんだ?』


結論から言えば「気付けば私が其処に居た」と言う事らしい。

ここ最近この都で起きた事も、能力に関する事も、何も覚えてはいない。

銀河は、再び問うた。


『この現象、能力が関わっているのは間違いない。僕から家の人に話そうか?』


『そうですね、お願いします。』


「太陽」は言う。


『だけど、よくこんな突飛な話をすんなり受け入れられるよなぁ。本当は記憶残ってんじゃねぇのか?』


『いえ、本当に何も覚えていません。だけど、あなた達の言っている事が、本当かどうかは分かるんです。なんとなくですけど。これも「力」何ですかね・・』


皆は木崎家へと向かう。

道中何を話すでもなく、そう遠くもない道のりをただ歩いていた。

目の前には木崎家の大きな門。

それを潜ると、左右には手入れのされた綺麗な緑。

更に歩くと、少し開けた所に出る。

色とりどりの植物が実り、中心には噴水。

池に泳ぐ鯉、風流な音が聞こえる。

庭を全部見ようと思うと、そこそこ良い時間がかかりそうだ。

頬を撫でる柔らかな風、毛先を軽く靡かせる。

池の水は静かに波紋を作り、草花は揺れる。

自然を感じれる良い匂いと音、とても気持ちの良い庭だ。

玄関前に立つと、二人は立ち止まった。


『どうしたんだい?』


「彩香」は、何やら躊躇をしている様。じっと扉を見つめている。

「銀河」は「二人」の背中をポンと叩く。

何か音でも聞こえてきそうな喉、唇には軽く力が入る。

「彩香」は取っ手に手を掛け、玄関を上がる。聞こえそうで聞こえない「ただいま」と共に。

足が床に付くかどうかと言う所で聞こえる「おかえりなさい」の声。

其処には「菫」が立っていた。


『お邪魔します。』


『あなた方は先程の・・』


『少し話がありまして、上がってもよろしいですか?』


『・・どうぞ。』


客室へと案内され、其処で「銀河」「太陽」「彩香」「菫」の「五人」は言葉を交わす。

とは言っても、皆が「銀河」の話を一方的に聞いているだけだが。

先ずは能力について。そして「彩香」の身に起きている事について。

「菫」は、変わらぬ顔色で話に頷く。

その表情から読み取れるものは何も無い。

「銀河」は気を利かせ、その場を後にした。

その帰り道。

この世界にも随分と慣れ、大体の事は理解していると思っていた今日この頃。

この世界には大きな都が一つあり、都の外に人の影は無い。

この都は中央部に人影が集中していて、中央部から離れれば離れる程に人の影は少なく殺風景である。

南部、東部、西部は、何処も変わり映えしない街並み。

大きくも小さくもない建築物が、多くも少なくもない軒数建ち並んでいる。

其れに比べ中央部は、そもそもの土地の大きさに違いはあるが、軒数も多く明らかに一つ、大きな建築物がある。

其処を起点に人が集まり、街が出来、発展して来たのだろう。

逆もまた然り。然し、これはあくまでも臆測である。

そして、この都の北部が丸々全て、木崎家の私有地である。

木崎家に面して流れる、とても大きな川が一本。

その川の向こう側にも同様に、荒野が広がっていた。

つまり、この世界は殆どが荒野である。

人は皆、都の中で暮らしているものだとばかり思っていた。

其処に立つ、三人の人影を見るまでは。


『アンタ達は、何モンだ?』


「太陽」は、答えた。


『お前等こそ何モンだ?』


三人は、僅かに俯き答える。


『分からない。』


「銀河」は、その者達に優しく問い掛けた。


『みんなは何処の人?都に帰らないのか?』


三人は三人とも何も言わず、ただ俯く。

都に暮らす者達全員に会った訳では無いけれど、見た事の無い顔。

だけど、能力者なのは間違いない。

それも、この世界で生まれた能力者にしては、かなり強い力を秘めている。

それは「銀河」も「太陽」も、気が付いていた。

「銀河」は、言った。


『一緒に来るかい?』


三人は、小さく頷く。


『良いよな、太陽?』


『好きにしろ。』


都外れのいつもの荒野、それぞれ目の付く適当な石に腰掛ける。

「銀河」と「太陽」はスムーズに、決まった石でもあるかの様に腰掛けた。

その様を見て、三人は地面を何度か撫でる様に見た後、適当な石に腰掛けた。

一人は、中々決められずにいる様であったが。

座っている皆を確認して「銀河」は切り出た。


『君達は・・・』


三人は、自身に力、能力がある事に気が付いていた。その使い方も。

寧ろそれしか知らない、分からない。

そして三人も又、「銀河」と「太陽」が能力者である事に気が付いていた。

自分達よりも、ずっと強い力を持っている事にも。

少し、ほんの少しビビったとか、ビビってはいないとか。

「銀河」は、三人に名を尋ねる。


『名前は・・・』


三人の顔に掛かる影。

名前が無い。或いは、それさえも分からない。

「銀河」は言う。

それでは不便だろうと。

今後の事を考えれば、間違いなく名前はあった方が良い。

持つべきだと。

「銀河」のその言葉に「太陽」は言った。


『そんなもんいるか?「おい」とか「なあ」とかで良くねえか?』


『そんな事はない。名前はかなり重要な事だ。呼ぶ名前、呼んでもらえる名前がある、これが互いに今ここに居る事の証明になる。互いの存在を肯定し合える、これが大事なのさ。』


『そんなもんかぁ・・・まぁ、そうかもな。』


三人は、よく分からないで居る様であった。

然し、名を持つ事に対しての興味は、分かりやすく顔に出ている様に窺えた。

先程、少しだけ見せてもらった力、そのイメージ。

「銀河」は、男に『明希正』女に『真依理』『火憐』と名付けた。


『気に入ってもらえたかな?』


三人は自身の名を口々にすると、声を揃えて『はい!』と答えた。

その様子を見て「太陽」は、軽く鼻で笑う。

「火憐」は言った。


『変な人。』


皆の表情は、とても大きく動いて見えた。


『誰に向かって、その口聞いてる?』


「明希正」「真依理」と、続いて言葉を口にする。


『まぁまぁ太陽、そんなに怒るなよ!』


『そうだぞ太陽君!怒りっぽいのは良くないな!』


『お前らも、人の名前を気安く呼ぶんじゃねぇよ。』


『ああ、それは済まなかったな!太陽様!』


『誠に遺憾ですなぁ、太陽様!』


『・・・もういい。』


「太陽」は、小さく溜め息を漏らす。

暫しの間、その場に響く声。

いつもの荒野に響く皆の声。

「銀河」は、その光景を眼差し天を仰ぐ。

そして、誰に聞いて貰いたい訳でもない小さな音で言った。


『世界と摩擦する事で人は、角が取れていくのかもね。』


「銀河」は、皆の談笑を楽しく聞いていた。

其処にある暖かな温度と、徐々に静かになって行く都を感じながら。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ