『A2♭』
world of light5
『すごい・・出来た・・私に、こんなすごい力が・・』
「銀河」は、言った。
『彩香さん、君の力はいい感じだ。全力で太陽にぶつかれば良い。』
『怪我をされては困ります。』
「太陽」は、高笑う。
『確か俺は、お前を消すって言わなかったか?そんな相手の怪我の心配なんかして、頭おかしいんじゃねぇか?』
『言いはしてませんでしたよ。』
『・・じゃあ改めて言ってやる。お前をこの世から消し去る。ーーーーーーブラック・ライザー・バースト。』
剣から鋭く細く天を突き抜ける黒い輝きが放たれる、それを一振り。
周囲に生い茂る緑は疎か、何もかもがその場から無くなり、地平線まで綺麗に見えている。
あるのは宙を映す黒く輝く地。
皆は、空いた口が塞がらないでいる。
「太陽」は、言った。
『これでもかなり手は抜いてる。』
『・・私達が今こうして居られるのは、銀河さんのお陰、と言う事でしょうか?』
「彩香」は、再び辺りを緑で満たし、その緑の生長速度を自在に操る。
鞭の様にしなる木々、その攻撃を縦横無尽に動き回り躱す「太陽」。
移動先を予測して絶えず攻める「彩香」。
向かって来る緑に剣を振り、難なく対応する「太陽」。
『バレッジ・オブ・エース。』
辺りの緑を蹴散らし、一気に距離を詰める「太陽」。
「彩香」の視界から一瞬、姿が見えなくなったかと思うと、次には肩と肩が触れる程の距離に居る「太陽」が横目に映る。
びっくりした「彩香」は、尻もちを付いた。
その傍らに立つ「太陽」。
『下手くそだな。まぁまぁな温度を感じたから、お前の力はこの世界にとって「脅威になる」とか、一瞬でも思った自分が恥ずかしい。
だけど、他の奴等と比べてお前の温度は明らかに高い。これは事実。一応、力だけは消しておくか。』
『力がなくなる・・そんなのイヤっ!』
『お前達には元々無かったものだ。何故無かったか・・必要無いからだ。お前達には必要のない物、元に戻るだけだ。』
『元に戻るのは嫌、一番嫌。必要無いから無かったんじゃない、知らなかったから無かっただけ。私は今、この力が必要だと知った。だから今、私には力が有る!』
「太陽」が、何となく半歩下がった其の瞬間、「彩香」を中心に強烈な風が一太刀吹いた。
空に波紋する暖かな熱。
「太陽」の瞳にハッキリと映る、よく知る光景。
五姫ノ衣。
「太陽」は、その力に何処かを暖められる様な感覚を覚えていた。
理解が追い付く、その前に。
少しすると、その姿に違和感を感じた。
然し、危機的だとは些か(いささか)程にも映らない。
「彩香」は、言った。
『この力は、あなた方の御兄妹の力なんですね。その方の力が、何故か私に使えている・・大丈夫です、安心して下さい。』
「彩香」は、蒼碧の一閃を握り締め、柄に手を掛ける。
『疾風ノ太刀、疾風斬閃、断風。』
刹那、柔らかな空気は表情を堅くする様だった。
その場を動く事なく何度か刀を振ると、再び刀身を鞘へと仕舞った。
次の瞬間、周囲の青は緩やかに空を舞い、烈火の如く吹き荒れる。
揺れている筈の無い大地なのに、真っ直ぐに立つだけの事さえ難しい。
常人ならば。
「太陽」は無作為に吹き荒れる風の刃を受け止め去なす。
「彩香」は、再び刀を抜く。
『迅雷ノ太刀、迅雷突超一点突破。』
バチバチと音を立て、輝きを放っている。
空気がビリビリとしていて体が痒い。
直後、稲妻が走り、その刃の光り輝く鋒は「太陽」の直ぐ側まで来ていた。
『アウト・オブ・ブラック。』
「太陽」が、その鋒を素手で掴むと其れは、塵となって天を舞った。
稲妻の走る電光、手の痒み。
浅く抉れた地面、何かが焦げた匂い。
その場に残るもの。
『もういい、お前の力は十分に分かった。』
『そうですか・・合格ですかね?』
『何の話だ?』
『太陽さんは、私達の事を消すって言ってました。消されてないと言う事は、太陽さんの試験に合格したって事で良いんですよね?』
『お前の好きな様に思ってろ。』
『じゃあ、お言葉に甘えて好きな様に思わせて貰います!結構良い勝負をしましたからね、私達!楽しんで貰えたと思います!この世界の皆んなと仲良くしたい、そう思って貰えたと思います!』
『都合の良い解釈、本当にめでたい奴だな・・俺達はもう行く。』
『そうですか。じゃあ、また・・』
『その力は、使わない方がいい。今のお前では持て余す。その力は、お前が思っている様な素敵なモノじゃない。』
体中の水分が沸騰して気化しそう、そう思える程に体が熱い。
身体の深い所から力が漲って来る様な、とても清々しくて、調子が良い。
何でも出来そうな気がする、そんな感覚を覚える「彩香」であった。




