『G2♭』
world of light3
「朱夏」「千秋」「真央」「春華」「美冬」の五人は、とある広場へと訪れていた。
『それじゃあ、皆んなの異変でも見せ合うか!』
『そうね!・・とは言っても、私達の異変はさっき言った通りよ!これからまた何か新しい事実が分かるかも知れないけど、今の所はさっき見て貰った通り!』
『じゃあ先ずは、俺の異変紹介からするか!俺の異変は見ての通り、片腕が機械みたいになっちまった!この腕で何が出来んのかは分かんねぇ!
あと、俺ん家って皆んなの家より少しボロだろ?ちょっと立派になってた!』
『別にボロって事もないと思うけど・・。千秋の異変、俺達の異変と比べると少し異質だよな。唯一、見た目に変化が現れてる。』
『そうかもなぁ!・・皆んな、自分の部屋だったり家に何かしらの被害を被ってんのに・・・何か、申し訳なく思っちまうなぁ。』
『家が立派になって良かったじゃん!申し訳なく思う必要なんてねぇよ!』
『ありがとな!』
『そうですよぉ〜!良かったじゃないですかぁ!嬉しいことですよぉそれはぁ!』
『これは、千秋の家でどんちゃん騒ぎをするしかないですなぁ!』
『おいおい!』
「美冬」が口を開く。
『朱夏の異変は?』
『ああ、俺の異変は火だ!手の届く範囲くらいまでで、火を起こす事が出来る。ある程度、操る事も出来るみたいだな!』
この話に、「真央」と「春華」は首を傾げる。
『そういやそうだ!真央の家に向かってる最中、朱夏が俺を担ぎながら足から火ぃ噴いて、めちゃくちゃなスピードを出してたんだ!』
「朱夏」は自身の開かれた手のひらを見つめ、強く握り返す。
『この異変、他にもまだまだいろんな事が出来そうだよ。』
『すごいですねぇ〜!さっき起きたばかりの現象なのに、もうそんなことまで出来るなんてぇ!』
『そうでもない!部屋をまる焦げにしちまったからな!』
『確かに、その異変ならそうなってそうよね!』
『無事で良かったですねえ!』
『申し訳なく、思っちまうぜ。』
「何事も無かった」とは言えないけれど、無事だったからこそ良い笑い話になっている。
ある程度の話が済むと皆は、それぞれ異変を使用し、試行錯誤をしていた。
体表面がほんのりと温かく、身体中に感じる熱が心地良い。
皆は新しい玩具を買い与えられた子供の様に、異変を試行していた。
異変とは『神様が与えてくれた遊具』だと、言わんばかりに。
場面は変わり、不服に歪む「太陽」を横目に「彩香」は言った。
『あなた方のお名前も、聞いていいですか?』
社交的に振る舞う「銀河」、交戦的で無愛想な「太陽」。
「彩香」の瞳には、そんな二人が対照的に映っていた。
同じ名を持つ者同士なのかと、少し不思議に見えた。
『家族、なんですか?』
『・・ええ、まぁ。』
『呑気に自己紹介なんかしてる場合か?コイツの力は・・』
『・・あなた方は、この現象について何か知っているんですか?』
『ええ、まぁ。いつか話す事もあるかも知れません。』
そう言うと「銀河」は、何処か遠くの方を見つめる様だった。
場面は戻り「朱夏たち」は、異変の使い方等を一通り試し終え、何処かときめく様な気持ちを胸に、その場を後にした。
そんな時、彼らは揃って都に異変を感じた。
「違和感を感じた」の方が、正しいのかも知れない。
都、その中央都市部の方がヤケに煩く感じた。
皆は顔を見合わせた。
誰も何も言わない。だけど、皆が同じモノを感じているのだと分かる。
皆は、急いで中央都市へと向かった。
近づくに連れて感じる強い違和感。
今まで切らした事の無い息を切らせ、皆は黙々と駆けゆく。
中央都市に着いた「朱夏たち」は目を疑った。
平坦な地だが、土砂崩れにでも遭ったかの様に街が崩壊していた。
至る所から上る黒煙、その下を照らす朱炎。
側には倒れている人も居る様だった。
『早く助けないと!』
「千秋」を先頭に、皆は其処に倒れる者の側へと駆け寄る。
『大丈夫か?』
「朱夏」は、何も考えられないでいた。
頭の中が真っ白、今のこの状況が飲み込めないでいる。
感情がうまく言葉に出来ない。
感情を上手く言葉にする必要性を感じた事は無いが、今は言葉は疎か感情もよく分からない。
故に空っぽになっていた。
『美冬!火の元は任せていいか?』
『はい。』
『他の異変は、今は無視でいいだろう。美冬が火を消してくれてる間に、俺達は怪我人を安全な所まで運ぶぞ!』
『分かった!』
『了解ですっ!』
『ああ・・』
地を蹴る足は泥を跳ね上げる。
怪我人は、かなり多く居る様であった。
自力で動けない者もいれば、「千秋たち」に手を貸す者も居た。
「美冬」は、これ以上被害が大きくならない様、丁寧に消火をしているが、家に付いていた火は辺りに伸びる木々に移り、それは木々から木々へと燃え広がって行く。
一人では中々に骨、枚挙に遑がない。
身体がズンと重たく感じても「美冬」は手を止めない。
それを察してか、「千秋」は肩に人を担ぎながらも、鉄の腕で木々を次々と切り刻む。
その腕は剣の様。
舞う火の粉は地に落ち、音を立て、白煙を上げる。
『こりゃ、俺達だけじゃキツイな。』
『消火もそうですが、救助も追い付かないですね。』
『どうする・・千秋。』
場面は変わり、「銀河」は言った。
『都の者達が、一斉に「力」に目覚めている。直ぐに向かう、着いて来てくれ。』
『他にも居るのか、分かった。』
『君もだ、彩香さん。』
『私、ですか・・分かりました!』
『なんでそんな奴!』
『勝手に着いて来る分にはいいだろ?』
『・・・』
『じゃあ、勝手に着いて行きます!』
『行こう、太陽。』
「太陽」の瞳に映るは、此の間とは丸で違うその景色。
驚きの一つも無い冷めた瞳。
やはり、力とは争いを生み出すモノなのだと、その為に存在しているのだと、そう強く実感していた。
『銀河、お前が「様子を見る」と言った力がこれだ。』
『まさか、この後に及んでまだ「様子を見る」なんて言うんじゃねぇだろうな?』
『銀河がやらねぇんだったら、俺がやる。』
世界にノイズが走る。
沈黙を貫いているかの様に思われた「銀河」は、そっと腕を掲げた。
都に燃える火は、一立ちの煙さえをも残さず輪郭を消した。
其処に残された者も又、同様に。
其処に残る物は、灰になって崩れ落ちてゆく家と木々そして、舞い上がる瞬き。
「銀河」は「千秋」に声を掛けた。
『大丈夫かい?』
「千秋」含め皆は、自身の目を疑った。
視界に映る目より溢れる怪我人も、うんざりする程に燃え盛る火も、一度の瞬きの間に何処かへと行ってしまった。
何度瞬きをしても、それは変わらない。
動揺しながらも「千秋」は「銀河」に、感謝の言葉を述べた。
『気にしないでくれ、皆を助けられた訳じゃない。』
事の一部を見ていた「彩香」は、これまでに見た事の無いその景色に胸を痛めていた。
痛みに痛む街並み、この力がこの景色を作ったのかと、こんなにも素敵な力が、こんなにも痛ましい景色を作るのかと。
「月姫」が消えたあの日、都は「月姫」のエネルギーが満ちていた。
『型』を失ったエネルギーは徐々に弱くなり、やがて熱を失う。
失うと言っても、ゼロになる訳ではない。
新たな型の中で、再び熱を持つ。
型が変わればエネルギーの在り方も変わる。然し、ごく稀に在り方が変わらない事がある。
自身の身体に感じる他者のエネルギー、それは新たな力となる。
型は自身ではどうする事も出来ない。
時の経過に伴って、消費するだけの代物。
でも中身は違う。
エネルギーに時の期限は無い。
使い込めば使い込む程により強く、より熱くなる。
それは結果として型を壊し兼ねない行為ではあるが、それでも人は力を行使する。
自身の力に型が壊され様とも、他者の力に型が壊され様とも、その日が来るまで力を使い続ける。
ただ朽ちゆくだけの存在ではないと、何かに抗う様に。
目には見えず、何処かで感じる事もない、そんな型などに何の価値も感じない。
大切なのは、自身が他者を利用し、自身を感じる瞬間。誰の目にも見える、人としての形。
人は、変化が大好物だと言う事。
自身で変えてゆける自分自身が大好きだと言う事。
だからこそ、戦う。
しかし此の世界の者は、少し違う感覚を持っている様であった。
それは「太陽」の目にも、ぼんやりと映し出されている。
然し、重要なのは其処で無い。
少なくとも「太陽」にとっては。
『こいつら・・助ける価値あるか?』




