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World of Gray  作者:
『world of gray』
15/45

『B4』










world of gray 15










「太陽」は「火憐」へと歩み寄る。

「火憐」は、無の表情で一点を見つめていた。

何処を見ているのかは分からない。

だけど、虚と言う訳でも無い。


『よく無事だったな。』


「火憐」の目は今、真っ直ぐに「太陽」を捉えている。

そして、こう言った。


『次は、私の番ね。ーーーーーー炎帝ノ衣。』


颯に揺れる長い髪、靡く炎。

衣の擦れる音、空に溶ける炎。

「火憐」の目には、「太陽」が驚いている様に見えた。

そしてそれが、何故だか嬉しかった。

クラスメイトであり友だけど、その機会無く一度も戦った事が無い。

「火憐」は「太陽」と、前々から戦ってみたいと言う思いがあった。

お互いの属性が違う以上、戦うなら総合試験の舞台以外に無い。

然し、「火憐」の実力及ばず今回の試験ではその機会を逃してしまった。

状況はともかく、今からこうして戦えると言う事実だけは、何故だか嬉しく思えた。

力を競う相手として互いを意識している。

少なくとも「火憐」は、そう認識している。

形はどうあれ、その事だけは前向きな気持ちで受け止めていた。

初めて「太陽」の試合を見た其の日からの願い、今ここに叶うと。


『炎帝ノ大太刀!』


「火憐」が天高く腕を掲げると、手の中で業火の如く燃え上がる炎。

真っ直ぐ其れを、振り下ろす。


『フレイム・ブースト!』


「火憐」の纏う衣が勢い良く燃え盛った次の瞬間、その姿は「太陽」の眼前にハッキリと映る。

周囲に余りある水は、大きな音と大きな煙を上げている。


『ソード・オブ・ソル。』


「太陽」と「火憐」は、雲の中で技を打ち合っているかの様であった。


『アウト・オブ・ブラック。』


「火憐」の刀は、「太陽」の剣と触れている部分から散り散りとなり、一瞬にして空に散った。

「火憐」は強く地を蹴り、後方に飛ぶ。


『炎帝ノ波動!』


『アウト・オブ・ブラック。』


『炎帝紅蓮牢檻!』


『アウト・オブ・ブラック。』


『炎帝紅蓮焔珠(えんてい、ぐれんほむらだま)!』


『アウト・オブ・ブラック。』


『炎帝紅蓮爆炎陣!』


燃え盛る「火憐」を中心に、熱風が水面を駆ける。

舞う火の粉。

「太陽」は、剣を一振り。

自身に触れる熱風を押し返すと、「火憐」の技は熱を失った。

水面は波打ち、音と煙を上げている。


水面を駆ける風は再び熱を持ち、空を吹き抜ける。

そしてその熱風は、「太陽」を覆い隠す炎となった。

「太陽」は、その炎を一突き。

するとそれは、塵となって頭上を舞う。


風に煽られ周囲に散った塵は、不滅の残火の如く熱を持ち、無数の火の玉となって「太陽」を襲う。

「太陽」は、剣を大きく一振り。

飛んで来る火の玉は、大きく勢いを失い、塵となって水面に溶ける。


水面の至る所から煙が立ち、ぶくぶくと泡を立てている。

そして、大爆発を起こした。

爆風が辺りを揺らす。

小雨が降り、蒸気が視界を奪う。

一滴、また一滴と、降り注ぐ水滴が音色を奏でる。

その音が鳴り止むと、再び戦いは始まる。


『炎帝ノ大太刀!』


『アウト・オブ・ブラック。』


『炎帝ノ大太刀!』


『アウト・オブ・ブラック。』


『炎帝ノ大太刀!』


『アウト・オブ・ブラック。』


「火憐」の刀は、「太陽」の剣と打つかる度に壊された。

創っては壊れ、創っては、また壊れ。

二人は、広い世界で動き少なく刀剣を打ち合う。

打ち合う姿は水面に映り、傍らに咲く其れは優しく揺れている。


『・・ありがとう。』


「火憐」は、唐突に感謝の言葉を吐露した。

それがどう言う事なのか、分からない「太陽」では無い。


『聞こえたんだな。』


「火憐」の纏う衣、握る刀は強く燃え輝き、「火憐」の髪は絢爛に靡く。

世界は緋く輝き、その輝きは天に昇る。




『炎帝、緋天鶴鳴限界突破。』




刹那、緋は黒に溶け天が顔を出す。

刹那、緋は黄に溶け地が顔を出す。

辺りを見渡せば其処は、見慣れたいつもの景色の様であり、懐かしくもある。

「火憐」は、その場に倒れ込んだ。

「太陽」は何故か少し、ボーッとしている様だった。


『太陽、持っててくれたんだ。』


「太陽」が歩み寄ると、「火憐」は言う。

「太陽」は、徐に上着の内ポケットから御守りを取り出した。

その御守りは、試合の前日に「火憐」から手渡されたものだった。


『この御守り、こう言う御守りなのか。』


『私が、珍しく徹夜して作ったんだから。』


『何で、こんな物を。』


『私と戦って、太陽が大火傷しないように。』


『いらない心配だ。火憐、分かってるのか?』


『うん。私、もうすぐ消えるみたい、ね。その前に、これ。』


そう言うと「火憐」は、「太陽」に「オルゴール」を手渡した。

「其れ」を握る「火憐」の手は弱く、「太陽」の手までは届きそうに無かった。


『自分の最後を肌で感じると、色んな事を思い出す。そのどれもが作り物の上に成り立っていたモノだとしても、思い出す事はいい事ばかり。この幸せな勘違いの中で逝けるなら、悪くない。』




『アウト・オブ・ブラック。』




『お前達は俺達とも違い、この世界の者達とも違う。でも、この世界で過ごした時間は本物だ。そこに違いは無い。』




手から溢れ、天に溶け行く瞬き。

だけどまだ、其処には誰かが居る様な、そう思える程に暖かい。

輝きの一つ一つに、身体を包み込まれているかの様であった。

「太陽」の手の中に残るオルゴール、それは「太陽」の身体に溶けて行く。

「太陽」も又、思い出に浸る。

遠く、とても遠く、懐かしい記憶。

暖かい音が身体に響く、勘違いだとは思えない程に、身体に響いていた。




『誰だ?』


『私です、太陽。』


『月姫、なのか?』


『そう。久しぶりですね。』


『これは、どう言う事なんだ?』


『私の名前を呼んでくれる人が居たから。だから私は、今こうして此処に居る。』


『・・・』


『これからは、太陽が私の名前を呼んでくれますよね?』


『たまになら。』


『相変わらず愛想無いですね。』


『・・こんなに近くに居たのに、今まで気が付かなかったなんてな。』


『仕方がありません。太陽は世渡の後遺症で記憶を失っていたのですから。』


『・・わざわざ言葉にしなくても、全部分かってるんだろ?』


『ええ。とんでもないモノを託されてしまいましたね。』


『全くだ。』


『これから先、色々と大変な事もあるかと思いますが、自分の選択を後悔しないで下さい。もし間違ったと感じても、自分を責めないで下さい。

正しい答えを出す事だけが、必ずしも人を成長させる事とは限らないのですから。

間違っていたとしても、その過程が大きく人を成長させる事もある。

誰にも否定されない正義がその道に無くてもいい、自分の行きたい道こそが、正しい道なのだと思います。

これからの事は全て太陽次第。太陽なら大丈夫、太陽のこれからを楽しみに見守っています。私達は、これからもずっと。』







『月姫、ありがとう。』







『銀河、これが俺のこたえだ。』







『ワールド・オブ・グレイ。』










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