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亡国の騎士道  作者: 龍崎 明
第一部
8/46

七頁

 クロたちがシュパイカー商家で過ごすこと数日。


 クロが、キネアに付き合わされて、マチャルア観光をしていたのに対して、レオパルトはS級冒険者であることを活かして、自身でも〔暁の騎士団〕の情報を調べていた。


 なお、クロについて弁護しておくと、シュパイカー商家の令嬢であるキネアの接待をすることで、客間を使わせてもらっていることを正当化していると言うこともできる。もちろん、客間を使えているのは、クロたちがキネアの命の恩人であるがためのそのお礼ではあるが、お礼のメインである情報収集に対してこちらはマーリンの好意であるところが大きく、何も返さないのは居心地の悪いところである。つまり、気分の問題だった。

 まぁ、そもそものところD級冒険者のクロでは情報収集にも限界があろうから、協力者との良好な関係を築くという点では、最善の選択であったのではなかろうか。


 話を戻すが、レオパルトが必要な情報を集めると同時に、マーリンの方からも情報が手に入ったとの連絡があった。

 レオパルトとマーリンはお互いの得た情報を擦り合わせることで、ほぼ間違いのないだろう情報とデマとをより分けることに成功。


 その情報に拠れば、〔暁の騎士団〕の拠点はマチャルアに点在しており、その壊滅となると、どうしても数を揃える必要があった。


 そして、現在。冒険者ギルド・マチャルア支部の会議室には、クロとレオパルト、情報提供者であり協力者でもあるマーリン、その他、ギルド職員と選抜されたC級以上の冒険者数十名が集まっていた。

 なお、マチャルア市長に連絡を取ったところ、全て任せるとの返答があったため、この場にはいなかった。商業都市であるマチャルアは、商人たちの私兵で治安が保たれており、市長麾下の武力は最小限であるため、通常業務以外をこなす余裕はあまり無いのである。


「説明は以上となります。何か質問はございますか?」


 進行役のギルド職員が、今回の依頼に関する些細を説明し終え、その場の面々へと発言を促す。


「報酬はどうなっている?」


 すると、この場で最も大柄な男が問う。それに何人かの冒険者が賛同するように頷き、返答を待っている。


「レオパルト殿に依頼した者が出すであろうし、儂からも幾ばくか支払おう。ギルドとしても、問題はなかろう?」

「はい、ありがとうございます、マーリン様。付け加えますと、今回は市長からも支払いがございます。マーリン様のご協力を知れば、市長はとてもお喜びくださることでしょう」

「ほっほ、それは光栄なことだ」


 流石、マーリン。決して、慈善活動として報酬を支払うわけではないようであった。

 含みのある朗らかな笑みを浮かべている。その様子に、何人かの冒険者が引いていた。


「なるほど、まぁ、犯罪組織の相手なんざ、魔物より軽い仕事だ。報酬が確約されてんなら、否はねぇ」


 マチャルア冒険者の代表的な者なのだろうか、質問を行った男の納得の言葉に、その他の冒険者も賛同するように肯くばかりである。

 その後、質問もないようなので決行日を今日の夜として、一先ずその場は解散となった。


 ……


 時は流れ夜。クロが配置されたのは、逃走経路と思われる古い地下下水道であった。


 S級冒険者のレオパルトが実力を認めるとはいえ、クロの身分がD級冒険者であることに変わりはなく、その他の冒険者から不満が溢れないように、上手くことが運べば、何もせずに終わる逃走経路に配置されたのである。また、現在は使用されていないとはいえ、長年に亘り染みついた臭いはどうしようも無く、そのようなところに配置されることを全ての冒険者が嫌がったという事情もあった。つまり、貧乏くじである。


「あぁ、臭え。帰ったら、風呂入りてぇや」


 素振りしながら、クロがボヤく。ただ待機しているのでは、臭いが気になって不快であったため、準備運動も兼ねて剣を振っていた。


 その剣閃は鋭く、そして、風切音がひどく重かった。

 実のところ、クロのバスタードソードは見た目通りの重さをしていない。


 人間大程の鉄塊を、クロが重力魔法の【圧縮】によって、剣の形に整えて、刃を研磨した特別製の代物である。

 最早、それは鉄とは別物の強度を誇り、その代償に重力魔法で重さを軽減しなければ、そもそも両手ですら振ることのできない怪物の剣であった。


「お久しぶりです、サースロウス卿」


 雪原のような冷たくも美しい声がした。


 その声は、クロを本名の家名で呼び、そして、騎士として扱った。


「その声は……」


 クロを知るその声の主に、クロもまた覚えがあった。


 そして、枯れた地下下水道の暗がりから現れた姿を見て、確信する。


 氷属性であることを示す蒼みがかった銀色の髪と瞳。美しい髪はショートカットに整えられ、氷柱のような鋭利な美貌に表情は無い。

 小柄でスレンダーなその身に何故かフリル多めのメイド服を纏うその少女。


「レヴィアか。変わらないな?」


 《七つの宝玉》が一人。『蒼玉(サファイア)』レヴィア・エンヴィナンナが、十年前と変わらぬ姿で現れた。

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