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亡国の騎士道  作者: 龍崎 明
第一部
6/46

五頁

 キネアたちが入室する。なお、クロとレオパルトは騎士時代の癖なのかなんなのか、キネアの左右斜め後方にそれぞれ控えていた。


 部屋はどうやら書斎であるらしい。黒檀製らしき机と革張りの椅子が一つずつ、壁は本棚となってぎっしりと書類や書物が整理され収まっていた。物静かな佇まいの観葉植物が窓際に飾られ、床を硬めの絨毯が覆っていた。

 実用性と気品を両立させた、成功をおさめた商人らしい部屋と言えるだろう。


 そんな洗練された部屋にいたのは、三人。


 キネアたちから見て、左側。書斎机の斜め前に控えた男女二人。

 そして、この部屋にある唯一の椅子に深く腰掛ける初老の男である。


 男女は、キネアの姿に笑みを浮かべ、次いで登場したクロたちに怪訝な様子。初老の男は、表情を動かさなかった。


「ただいま戻りました、お祖父様、お母様、お父様」


「おぉ、お帰り!キネア!」

「あなたが無事で何よりだわ!」


 男女、キネアの両親が勢い良く娘の帰還の挨拶に応える。そして、お祖父様と呼ばれた初老の男。シュパイカー商家当代の方は


「よく戻った、キネア。それで仕入れはどうだった?」


 感情の無い事務的な言葉を発した。


「はい、お祖父様。仕入れは概ね成功いたしました」

「ほう」


「それは凄い!流石、俺の娘だ!」

「なんて立派なんでしょう!」


 ギロリと睨むような視線が当代から放たれるも、キネアがそれを感じ取る間も無く、両親の褒め殺しが始まった。


「えぇい!少しは黙らんか!まだ、報告の途中じゃろうが!」


 当代は青筋を浮かべ、息子夫婦を怒鳴りつけた。


「し、しかし、父さん、キネアは初めて一人での仕入れに成功を……」

「そ、そうですわ、お父さん。少しばかり褒めても問題は……」


「お前たちがそうやって甘やかすから、儂が厳しくせにゃならんのだろうが!儂だって、本当は孫娘が可愛くて仕方ないわぁ!えぇい!話が進まぬから、お前たちは部屋から出ろ!」


 当代のあまりの剣幕に、息子夫婦は早々に白旗を上げて、いそいそと退室していった。なお、キネアはその様子はいつものことらしく、動揺は些かもなかった。


「はぁ、それではキネア。後ろの方たちのことも含めて、改めて報告しなさい」

「はい、お祖父様」


 場を仕切り直した当代に従って、キネアは事の経緯を報告した。


「なるほど。まずは、クロ殿、レオパルト殿、孫娘の命をお救いいただき、誠にありがとうございました」


 話を聞き終えた当代が深々と頭を下げる。


「つきましては、この街に滞在する間の宿はこちらで手配させていただきます。また、何か協力できることがあれば、遠慮せず申してください。この老骨が必ずや力になりましょう」

「有難い申し出です。是非、よろしくお願いします。ところで、お名前を伺っても?」


 当代の言葉に、レオパルトが対応した。クロの方は、場慣れしていないのか、直立不動であった。


「おぉ、これは失礼いたしました。儂は、シュパイカー商家当代のマーリン・シュパイカーと申します。よろしくお願いします」

「はい、マーリンさん、よろしくお願いします」

「さて、レオパルト殿。少々、お待ちいただきたい」

「えぇ、構いませんよ」

「ありがとうございます」


 自己紹介を終えて、マーリンは孫娘に向き直る。


「キネア」

「はい!」

「護衛代まで仕入れに使うとは、勉強は算数からやり直した方が良いようだなぁ?」

「えぇ!?」


 祖父から孫娘への説教が始まった。


 ……


「次からは気をつけるように」

「はい!」


 小一時間ほど説教が続けられたものの、キネアの返事は明るい。所々に祖父馬鹿の入った説教では、それも当たり前だろう。マーリンは、今ひとつ強く言えてはいなかった。


 そこへ部屋の扉がノックされた。


「入れ」


 マーリンは入室を許可すれば、扉を開けて入室したのはアルネだった。


「どうしたアルネ?」

「そろそろ終わった頃合いかと思いまして。お嬢様への説教はできましたか、大旦那様?」

「あ、あぁ、もちろんだ」


 アルネの問い掛けに、言い澱むマーリン。その姿は、先程のキネアの様子にそっくりだった。


「その様子では、やはり足りなさそうですね。お嬢様をお借りしますよ?」

「いや、それは……」

「お借りしますよ?」

「……わかった」


 どうやらキネアはアルネからのお小言を頂戴するらしい。


「えぇ!?お祖父様、お助けー!!」

「ほら、行きますよ、お嬢様」


 アルネが一番怖いらしく、キネアが必死に祖父に助けを求めるも、祖父は憐れな孫娘と目を合わせようとは決してしなかった。


「オッホン……それで、お二人へのお礼なのだが」


 何事もなかったかのように、マーリンは話を進めようとする。クロたちも特に突っ込む気はなく、それに乗っかった。


「さて、まずはこちらを私のギルドカードです」

「うむ」


 レオパルトがマーリンに、掌サイズの鉄板を渡す。それは冒険者ギルドが発行している冒険者の身分証であった。俗に、ギルドカードと呼ばれている。


「S級ですと!?それでレオパルトということは、まさか!貴方は、『紫玉(アメジスト)』?」

「えぇ、そうです」

「なんと!あのシュバリア王国が誇った最強の騎士七名、《七つの宝玉》のお一人に出会えるとは!年甲斐も無く運命を感じてしまいますなぁ!」


 レオパルトの正体を知って、マーリンが上機嫌に笑った。

『冒険者の闘級と魔物の対応


 S級:英雄。大国規模。

 A級:天才。都市規模。

 B級:秀才。街規模。

 C級:一流。村規模。

 D級:ベテラン。護衛依頼も一応、いける。

 E級:いっぱし。一般人では困難な戦い。

 F級:駆け出し。村の力自慢くらいならいける。

 G級:一般人。ほとんど無害。子どもだと危険なこともある。                   』


 だいたいです、だいたい。

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