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亡国の騎士道  作者: 龍崎 明
第二部
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エピローグ

 エロイース・ラストアーンは、天才だ。生命を司る樹属性に高い適性をもって生まれ、明晰な頭脳で生命のあらゆる神秘を解き明かしてきた。


 誕生も、繁栄も、滅亡も、希望も、絶望も、想うがままだ。


 遂には、不老の秘法に辿り着き、今の時代まで生きてきた。


 だが、彼女は、亡霊の存在を知らなかった。


 面白いのか、悔しいのか。彼女の胸中は複雑だ。


 また、知らないことがあって面白い。


 気に入っていたモノを守れなかったことが悔しい。


 魔女は壊れていない。しかし、狂気には塗れている。


 亡霊を見て思う。


 あれは、己が成り果てるかもしれないモノだ。


 人であることをやめたとき、それは現実となるのだろう。


「でも、それは今じゃない。【安息の庭ガーデン・オブ・シエスタ】」


 安らかで静謐な魔力が辺りを包む。


 混乱が鎮まる。傷が癒える。


 春の陽気で午睡のように、麗らかな安息が訪れる。


「団長、大丈夫かしら?」

「あぁ、助かった。エロイース」


 ラインハルトの意識を確かめる。彼に動いてもらうのが最善だから。


「ハルトは……まったく、手間のかかる息子だ」


 笑みが浮かぶ。『最高の騎士』がその鋒を空へと向ける。


「【穿光(レイザー)】」


 一筋の光条が天を昇る。それは過たず亡霊を穿ち抜く。


「「「グワァぁ「アアあゝ「ぁぁアア「あああぁあゝ「ァァァァアアああああアアア!!!!!」」」」


 無数の口が裂けるほどに開く絶叫。だが、そこに魔力は無かった。


「流石は、団長だ」


 義父の的確な援護に、ハルトの口元に笑みが浮かぶ。


「これで、終いだ!【圧壊剣】!」


 交差は一瞬。


「「「ぐギッ!?」」」


 ジョンドゥーアの幽体に、二つの斬線が刻まれる。


 十字のそれは瞬く間に、亡霊を四等分し


「おぉ、「オォ!!終「焉だ!終末だ「!我ら「僕ら「私たち「ワシら「俺たちに……よ……や……」


 斬線に沿って、重力均衡が崩壊。無限にも思える穴に吸い込まれるように、亡霊は圧壊され消滅していった。




 ……




 後の歴史家たちにジョンドゥーア内戦と名付けられることとなった戦後。一月ほど掛けて、シュバリア王国は少しずつ元の姿を取り戻していった。


 《七つの宝玉》の欠員は未だ補充されず、叛逆派の貴族たちが担っていた政務の引き継ぎ問題などはあれど、在りし日の平穏は既にあった。


 もちろん、変わったこともある。


 多くの仲間や家族を亡くしてしまった。


 だが、それを乗り越える儀式が行われていた。


 葬儀である。


「……」


 オリジン教の司教が粛々と言葉を連ねてゆくのを聞きながら、ハルトは死者を想った。


 孤児仲間であったサース、ロウ、ウス。


 《宝玉》の仲間だったモルドとグラ。仲間だと思っていたレオパルト。


 家族だった義母マリアと義兄レオニダス。


 散っていった兵士たち。


 そして、自身の生みの親。


「!」


 隣に立つキネアが手を握る。


 そして、自分が緊張に険しくしていたことに気づく。


 手を握り返して緩めれば、もう大丈夫だと判断したようで手が離れた。


 先に逝ってしまった彼らは、オリジン教の教義通りに『原初の意思』と同化したのか、はたまた輪廻の牢獄に囚われたままなのか。


 不信心ではあるが、何処かに転生してまた逢えるのではないかと淡い期待が浮かぶ。


 どうあれ今の自分との縁はないだろうが、幸福であることを願わずにはいられない。


 そして、今世の生は、彼らの分まで生きることを決めたのだ。


 前を向こう。忘れるわけじゃない。だが、いつまでも立ち止まっているわけにはいかないのだ。


 ツラツラとそのようなことを考えていれば、いつの間にか葬儀は終わっていた。




 ……




「ハルト・サースロウスに侯爵位を授ける」


 国王アーサーが厳かに告げる。


 喪が開けて始まった論功行賞である。


 アーサーたちには、戦いの最中に判明した事実を語っていた。


 すなわち、ハルト・サースロウスが、シオン・ジョンドゥーアであること、ジョンドゥーア家が抱えた魔物、そして、その終わり。


 だか、だからといってデオン・ジョンドゥーアを戦犯から除名することはできないし、ハルト・サースロウスがジョンドゥーア公爵家を継ぐこともできない。血統は証明できず、民は分かりやすい敵を欲するからだ。


 故に、今までの功績で報いることとした。


「これよりはシオンハルト・サースロウスを名乗るが良い」

「はっ、これより一層の忠誠と愛国を、陛下の剣となり民の盾となることを、我が騎士道に誓います」


 片膝をつき、誓いの言葉を述べる。


 その姿に、集まった国民たちが惜しみない拍手を贈った。

これにて『亡国の騎士道』一応の完結にございます。ここまでお付き合いいただきました皆様には深く感謝申し上げます。


さて、過激派とか過激派とか未だ解決していない事柄や若干の伏線のようなものが残っている本作ですが、書きたいことは実は一部で書き切っていたし、あまり人気もでなかったということで、続編は多分ないです。


次回作は、

人外転生モノ『吾輩は蛇である。名前はもうある』

異能バトル『コギト・エルゴ・スム〜理想を目指す夢物語〜』

など構想しておりますが今暫くお待ちください。設定はともかくプロットが難産です。まぁ、元々そういう人間なのですが。この作品もそうでしたし。


それでは縁があったらまたお会いしましょう。

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