表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国の騎士道  作者: 龍崎 明
第一部
20/46

十九頁

 決闘の場は、領都の外に設置された。両者、魔法を使い、全力で戦うルールとなったからだ。屋敷の庭などでは、流れ弾が怖い。


 ハルトとラインハルトが、互いに三歩ほどの距離を空けて向かい合う。


 王女たちは離れたところで観戦だ。流れ弾を、《宝玉》の誰かが防ぐのだろう。なお、王女だけは椅子を持ち込んでいる。


「ではこれより!シュバリア王国騎士団団長ラインハルト・プラウドルチェ対シュバリア王国騎士団副団長ハルト・サースロウスの決闘を始める!両者、騎士道精神に則り正々堂々と全力を持って戦うように!」


 審判役は、領主だった。ハルトたちからは、かなり離れているので、レオパルトの【拡声】の魔法で声を届けている。


 ハルトが構えるのは、愛用の重剣。


 ラインハルトが構えるのは、赤みがかった金色をした大剣。


 両者共に得物は重量級。魔法による増減が自在である分、そこはハルトが有利。後は、剣と魔法次第。


「はじめ!!」


「【黒闇】」「【瞬光】」


 開始の合図とともに、両者が補助魔法を行使した。


 ハルトの魔法は、ハルトを中心として世界を闇で覆ったか、に見えた。


 ラインハルトの魔法は、ラインハルトを光速に変えた。


 ラインハルトの鋒が、既にハルトの心臓に狙いを定めている。だが


「【重撃】」


 光速で動いているはずのラインハルトの大剣を、ハルトは愛剣によって弾いてみせた。重い衝突音が響き渡る。


 ハルトの行使した魔法【黒闇】は、空間拡大の効果がある。


 空間拡大とは、すなわち、空間希釈ともされ、距離を引き伸ばす効果だ。


 何故、それでラインハルトの光速行動に対抗できているのか。


 光速は、一秒で世界を七周半できると言われるが、ハルトが引き伸ばした距離は、世界の七周半を超えた距離。つまり、体感として光速が常識の範疇に収まるように、空間を拡大したのだ。


 ただ、それだけでは反応できるだけだ。光速に動く物体と接触すれば、大半の物は弾け飛ぶ。だからこその【重撃】。自身の攻撃を極限まで重くすることで、やはり、光速に対抗する。


 この決闘。ただの剣術勝負に限っても、ハルトが二つ、ラインハルトが一つの魔法を行使するため、魔力消費的にラインハルトが有利であるかのように見える。


「【黒道】」

「ッ!?」


 膨大な距離を、ハルトは瞬間移動によって潰すことができる。


 光と闇の勝負でありながら、速さでは闇が勝っていた。


「【重撃】」


 ラインハルトの背後からの兜割。


 【瞬光】の出力を上げることで、ラインハルトの大剣が挟まれる。


 重い衝突音。そして、今度は衝撃波すらも発生させた。


 大地が捲れ上がる。だがそれでも、両者は鍔迫り合っていた。


「【重圧】」

「ぐっ……!?」


 ハルトによるさらなる追い討ち。ラインハルトに増幅された重力が襲い掛かる。


「だが、だが、私は負けるわけにはいかんのだ!うぉおおおお!!」


 ラインハルトが気合で押し返す。そして、ハルトの剣を滑り落とした。


「ちっ!」


 ハルトは舌打ちをしながらも、崩れた体勢を立て直すことより、ラインハルトの次の行動を観察した。


「【光熱剣】」


 ラインハルトの大剣が、輝きを帯びる。それだけではない。その輝きは、太陽にも迫る熱を帯びていた。


 通常の鉄剣では、攻撃に使う前に融けるだけの付与魔法。


 だが、ラインハルトの大剣は赤みがかった金色の金属で造られている。その金属こそ、神鉄(オリハルコン)

 扱える職人が現存する中では、世界で最も素晴らしい魔鉱石。物理強度、魔法耐性共に高い冒険者憧れの代物だ。


 高い魔法耐性故に、ラインハルトの魔法の熱にも耐えられる。


「【隔壁(アイソレート)】【空間把握】」


 ハルトが行使したのは、空間を固定する絶対防御の結界魔法。だがそれは、光さえも通さない空間であり、ハルトとラインハルトの間に黒い壁をつくって視界を遮る。そのため、探知魔法も続けて行使した。


 ラインハルトは動くことを躊躇った。それを把握して、ハルトは悠々と体勢を立て直す。


 沈黙が続く。


「ハルト」

「何だ?」


 膠着した状況で、ラインハルトはハルトへと声を掛ける。


「私は、道を違えているか?」

「……」

「妻のために、息子たちのために、アイツらの犠牲を無駄にしないために!王権復興に動いたはずだ!動けていたはずだ!そんな私の何処が間違っている!」


 それは独白だ。ハルトに語りかけているようで、ラインハルトは自身に言葉を向けている。


「……あんたが一番、理解しているはずだ」

「認めない、認められない!私は勝つ!そして、王権復興を果たしてみせる!」


 ラインハルトが動くのを、ハルトはしっかりと把握していた。


 ハルトから見て、右側から【隔壁】を避けてラインハルトが飛び出した。


「【穿光(レイザー)】!」


 ラインハルトは【光熱剣】の付与された大剣を右手に持ち、左手をハルトに向けて魔法を放つ。


 それは、光の熱線。貫かれたモノは、当然、綺麗な穴を開けることになるだろう。


「【引力球(ダークボール)】」


 ハルトが行使したのは、引力を発生させる黒い球体。それが【穿光】を引き寄せ、軌道を変える。


 意味を無くした【隔壁】を解除して、負担を減らしながら、ハルトがラインハルトに右手を向ける。


「【圧壊】」


 【引力球】によく似た闇色の球体。だがそれは、もっと破壊的なチカラだ。

『魔法について

 【瞬光】

  自身を光速化する魔法ではあるが、実際には、

 光の性質ではなく、時間概念への干渉による加速

 である。                 』


『金属について


 魔鉱石:魔力に影響を受けた鉱物のこと。


 霊銀ミスリル

  蒼みがかった銀色をした魔鉱石。魔鉱石にして

 は、やや強度に劣るが、軽く魔法耐性や魔力伝導率

 には優れている。東方では、アポイタカラと呼ばれ

 る。


 神鉄オリハルコン

  緋みがかった金色をした魔鉱石。現代の加工技術

 で扱える上では、最高の魔鉱石。強度・魔法耐性と

 もに優れるが、重い。東方では、ヒヒイロカネと呼

 ばれる。


 覇金アダマス

  星空色の魔鉱石。加工技術は喪失してしまってい

 るが、世界最高の魔鉱石。神鉄以上の強度・魔法耐

 性を誇り、重さもバランスが保たれている。


 神霊鋼

  神鉄と霊銀の合金。黄金比配合では、青銅のよう

 な輝きを放つとされるが、そのレシピは喪失してい

 る。性質は、良いとこ取り、重量調整ができる。


 隕鉄メテオライト

  木目鋼(ダマスカス)の主原料である魔鉱石。強度に優れるが、

 魔力伝導率は無いに等しく、また、非常に重い。そ

 のため、木目状の模様を特徴とする合金、木目鋼に

 加工される。


 鬼金オーガ・メタル

  妖鬼系の魔力に影響された金属。ほとんどの場合

 は、鉄と大差ないが、長く生きた個体のそれは、神

 鉄にも匹敵する強度を獲得するとされる。性質は元

 の金属のモノを基本的には引き継ぐが、魔力伝導率

 は妖鬼系の魔力に調整されているためか、非常に悪

 い。                    』


 金属については、霊銀、神鉄、覇金の三大金属さえわかっていれば、大丈夫。後は、オマケ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ