2-24 ふたば幽閉
王様視点
「お前には失望した。さっさと連れて行け!」
昨日まで信頼していた元息子が部下に首根っこ掴まれ消えていった。これから数々の戯れ(拷問)を受けるのだろう。
「まさかこやつが首謀者だったとはの。こんなたわけ者に育てた覚えはなかったのだがなぁ」
我がバカ息子を情けなく思いながら朕は玉座に座るのだった。
◇数時間前に遡る◇
「なんじゃ、さっきから騒がしいのう」
「それは王が帰ってきたからですな。これで貴方様の肩の荷も降りるってものです」
「なんだって! よかった、戦争から帰ってこられたのですね!」
ふたばは代理王になってた時は、王らしく口調が堅苦しくなっていたが、今では元の口調に戻っているのであった。
「父上! 帰ってきてたのですね!」
「ああ、やらなければいけないことが起こったのでな」
そう言って、王様はふたばを見透かした目で睨みつけた。まるで親族を殺した犯人を見ているかの如く。
その様子に違和感を覚えたふたばは、『戦争が上手くいかなかった当て付けを食らってるな』と自身の中で答えを導きだし対応することにした。
「生きて帰れただけ良かったと思いましょう。王が生きてるだけで民衆は安心しますから」
「フン、どーだか。ワシはなついさっきとんでもない侮辱行為(王族連れ去り)にあったのだぞ」
「まあ大丈夫ですよ父上。なにも多くの者を失ったわけではないのでしょう? それに侮辱行為(悪口•罵倒)ってそんな気にすることでもないです」
「それで大事な者を亡くしてもか? ワシは失ったのじゃ。大事な(よつば)者を知らないうちにな。貴様にも関わりがある大事な者を」
(大事な物を無くした……? 侮辱行為を食らってる間に誰かに大事な物を盗まれたのかな? 聞いた感じだと、父上が戦争に行ってから可哀想な出来事ばかり起きてるな)
「まあたとえ盗まれたとしても、無くなったとしても作ればいいのです。いくらでも変わりは出来ますよ」
ふたばは知らず知らずのうちに王様の中にある虎の尻尾を踏み抜いてしまった!
「そうかそうか、貴様に一つプレゼントをやろう」
そして王様はふたばにある紙を突きつけた。
「逮捕状じゃ! このたわけ者を今すぐ引っ捕らえろ!」
◇こうして今に至る◇
「あやつらがいる場所も大体分かっている。勇者ユウキの部下が教えてくれたからの」
「ですが王よ。あそこはモリヤミ共和国。もとい無法地帯モリヤミですよ? もし犯行がバレてしまえば……」
「なぁにバレなきゃいいのじゃ。バレないようになんとかせい。さもなくばソチを打首にする」
「は、はい! 仰せのままに!」
あと、薄い希望を込めて、ふたば名義で手紙送ってみるのもいいかもじゃのう。
「エンリル!」
「どうしましたか?」
「万が一暗殺計画が失敗したら奴を生捕にする方法でいくが、成功することを祈っておるぞ」
「ありがたき幸せであります!」
「とりあえずハルト暗殺計画の執行人に直々に会う。今あやつはどこにいるのだ?」
◇
あやつがいるという部屋の扉を蹴破るとそこには大量の食事がテーブルに所狭しと置かれていた。
「食事の邪魔をしてすまぬ! ぜひ話を聞きたくてな! そちの名は?」
「王に名を語るほどいい名前は持ってない」
「ウム、期待しとるぞ」
「そうか」
「うーむ随分愛想がないなぁ」
一応、存在を黙認しているアイツらにも連絡しとくか。あの盗賊の2人組にもな。
◇
それからどうするか。確か我が娘はあのたわけを慕っておったな。
「余の息子だったふたばはまだ利用価値があるから生かしておけ」
いろんな手段が使えそうじゃ。
なんなら奴を見せしめに処刑をするのも良いだろう。あのたわけと仲がいい少ない人物で、カンマン王国の……告知したらどう出るのか楽しみになってくる。
「王よ。少しよろしいでしょうか?」
「なんじゃ?
「王国の金回りは少し苦しくなってきましたぞ。
するとあの暗殺者が土足でズカズカと宮廷に入り込んで喋り出した。
「宝の地図を見つけて財宝を見つけたりしたらどうだ?」
この暗殺者は何を言った? 財宝だと?馬鹿なことを。
「ある噂を聞いた。どうやらエルフの村に金の塊が埋まっているとか。正直、俺はどうでもいいがな」
それを聞いたワシはこう言ってやった。
「面白い! この無礼は水に流すから奴を暗殺するついでにその噂について調べてこい!」
◇
「王様! これからどちらへ?」
「少し疲れた。横になる。ソチが部屋にいる時は静かにしとれ」
余は玉座に舞い戻ったわけだが、我が娘より余の身体を優先するか。
◇◇◇◇◇
次回に続く





