2-20 あの……もう募集終了してますよ?
冒険者の街まで、徒歩で数分歩いたら着く距離まできた。とは言ってもこのルートはまだまだ林が生い茂っており、急に魔物が襲って来る可能性はある。
散発的な家がチラホラ見える人気が無い道を細心の注意を払いながら俺達は進んでいた。
「ちょ、ちょっと止まってくれ……俺はそろそろ限界だ……」
俺を除いてだがね……
「……」
またかという視線を向けないでくれ頼む。自分でも慣れたと思ったのに気を抜いたらこのザマだ。俺だってもうこれ以上醜態は晒したくない!
言っておくが俺がまた馬車に乗って醜態を晒しているわけではない。もう徒歩で着く距離なので俺は馬車から降りている。
「アカン。このままじゃ社会的に終わる!」
なんてことはない。普通に尿意が我慢出来なくなったのだ。
今まで散々リバースやらで待たしちゃっている負い目を感じ、今まで我慢していたのだが……そろそろ限界だった。
そんなわけで自分の武器である盾すら置いて、しばらく草むらにうずくまって無事役目を果たす。
「誰も見てないよな?」
しばらく長く苦しい我慢から解放された快楽に浸っていると、何故か急に上からも我慢出来なくなってきた。
そこで自分は己の身体についてを今一度思い出す。そう自分はついさっさまで暴れ馬車に乗っていた影響を受け盛大に酔ってしまっていたのだ!
「あっ……」
生臭く酸っぱい味の液体が喉まで来たところをすんでのところで飲み込む!
「危ない。また虹色の液体が噴き出るところだった……もうあんな苦しみを味わうのは嫌だから……アハハ」
身体の回復を図りながらゲッソリした身体でとぼとぼと馬車を追いかける盾使いの図。
しばらくして身体の調子が良くなってきた。
「なんだろう? 今回は身体の回復が速いな。こうなってしまったら一回寝ないと体調が良くならないはずなのだが……」
俺の身体に何が起きたんだろうと不思議に思っていると、ふと目の前にいる子に目があった。
そこには見るからに息が上がっていて疲れてそうだ。髪の長さミディアムで黒髪の女の子が目の前にいた。後ろ髪はポニーテールにしている(説明口調)
「えっ? ついに痛さで幻覚(かわいい子)でも見ちゃった?」
おっとそこの馬車に乗ってる王女さん。俺のことを変態とは思わないでいただきたい! あとそこのリザードマン、よつばを見てる目が危険だ。
死にかけの身体の状態の中、いきなり美少女が目の前にいたら誰だってそう呟くだろ?
……いや自分だけ? それよりもここは現世なんでしょうか?
「はっ!?」
落ち着け自分! 背中に特徴的な杖と大きな荷物を背負っていることから僧侶か。彼女と同じぐらいの杖の長さだし何故か黄色でコーティングされている。
あとなんか全体的に白い。頭に乗っけてる髪飾りが印象的。
「なんかすいません」
「キュアー!」
そう言ったのも束の間、この子が突然杖を手に持ち魔法を自分めがけて放ってきたではないか!?
天使じゃなかったぁぁぁ! それじゃあ天使の皮を被った悪魔……あれ?
「痛く……ない? それに……背中の違和感が消えていく……どういうこt……」
「今にも倒れてそうな人に一日一回の大技をかけたのはいいけど、この包帯何日も巻いたまま放置していたのかな? 白かったはずなのに赤く血が滲んでいる」
「あっあの……」
「身体の応急処置はしたけど、この傷は酷いね……少しじっとしててね、再度再開キュアー!」
「なっ!?」
またモロに一撃食らってしまった……
が、やっぱり痛くない。いやむしろ数日前に受けてたはずの傷が癒えていく……
「これはもしかして回復魔法ですの!?」
「なんだって!?」
思わず聞き返してしまったが、つまりはこの人は身体を癒す魔法を打てる人ということか!
「チッ見た感じギリギリ身長150cm越えでよつば王女の壁よりはあってデカすぎもせずって感じっすか……竜の範囲外っすね」
どさくさに紛れて何言ってやがる、この竜ロリ変態!
どうやら仲間募集中のチラシを見てアリシアからここまで追いかけてきたらしい。それもこの僧侶の子と同じくらいのデカさを誇る荷物を背負ってだ。
ついでにこの子は冒険者の街に住んでいて、たまたまアリシアに旅行に来ていたらしい。だからこんな荷物なんだとか……
「ん?」
ちょっとここまで進んできた道を振り返ってみるとここは遠回りの道だね。この子は確か合流する道から来てたことから、多分整備されてる道から来たんだと思う。
それでも1人旅なら危険な旅路であり、さらに俺達を見つける作業もしていたとなるとこの子は只者じゃないのかただの無鉄砲なバカなのか?
ちなみにこの子はどうやってここまでたどり着いたのかを聞いてみたら。
「大体の行き先は分かってたから人力車に乗って広い道路を一気に駆け抜けて、そのあとに一日中見晴らしのいい場所を探し歩いて今日やっと見つけた感じかな?」
流石に博打が過ぎないか!? そう言いかけた口を慌てて閉じた。たとえそう思ったとしても口には出してはいけないと思った。
この子の説明によると人力車を動かしている人に走力魔法スピートをかけ走らせていたということだから驚きだ。
ちなみにこの魔法は汎用性は無いと言っていい。ちなみに初心者向けの魔法で魔力もあまり必要ない。
なんで汎用性が無いかというと、一回使うだけで対象者は一日中軽い筋肉痛に襲われるし、なんなら一回使っただけではあまり効果は見られないからだ。
つまり一回この魔法かけただけじゃ筋肉痛に襲われる結果だけが残るということ。
よつばの解説によると、一応スピートを重ね掛けすることで早くなるらしいがその分対象者の身体に相当な負担がかかるようで。現に丸一日と半日走っていた人(被害者)は、その後この魔法の反動で2週間介護が必要な状態になったようで……この話が本当だったら人力車の人本当に不憫だ。
ていうかそもそもあのチラシもう随分前に剥がしたはずだが? まさかあの僅かな時間の間に見ていたのかな?
「傷跡は多少残ってるけど完治成功!」
そうこうしてるうちに傷が癒えたようだ。てか……あれ?
「どうして君……地面に仰向けで寝てるの?」
「そ……その前に自己紹介させて……」
いやその……大丈夫?
「アタシは望月梓! 珍しい名前だけどこれからよろしくね! ……それより喋るのも辛い……」
倒れてながら自己紹介する。自己紹介に命をかけている女……いや違うわ(確信)
「俺はハルトって言って一応俺がリーダーやってます」
「じゃあハルだね……」
「いきなり押しかけておいて図々しいですの! あとリーダーなんて決めた覚えはないですの!」
よつばは口を尖らせてなんか言ってんな。それにこの王女なんかやけに不機嫌じゃない?
「王女がリーダーだったら目立つだろ。なら俺がリーダーに立候補するしかないでしょ」
我ながら凄い暴論だったが、ガドラにリーダー権を渡すと別ベクトルの犯罪に巻き込まれちゃうかもだし。なら俺がリーダーでいいよ。
「なら別にいいですの、リーダーは面倒くさそうですし。それより私はリーダーの暴挙は認めない!」
リーダーの話が終わったら今度はなんだ? 暴挙?
「暴挙って梓さんを入れるのってこと? いやなんでよつばが反対する?」
「嫌ですの嫌ですの! パーティーに入れるの反対! 第一この娘は私達の旅についていけるだけの力は持ってないですの……そうだ! これから試験、緊急パーティー試験ですの!」
よつばさん……? なんだろう、我がパーティーの王女がさっきからご乱心なんだが。誰か解決法を教えてくれ。
「いやぁ。俺がパーティー募集の紙を見て直談判したとき、あっさりと受け入れてくれてたはずなんすけど。どういう吹き回「ハイクウォーターショック!」ギャァァァ!?」
よつばさん!? いやいやいやいや……ハァァァァァ!?
「右腕をぶっ飛ばしやがったよこの王女! しかもあらかじめ溜めておいた上で至近距離で!」
「キャゥゥゥァァァァァァァァァァァァァァァァァァギャァァァァァァァァァァァァ!?」
「ヒウッ……」
「梓さん? 梓さん!? 気をしっかりぃぃぃぃぃ!」
◇唐突! 技解説!◇
ハイクウォーターショックとは水の衝撃波。
スターリングウォーター•ザ•グングニルと同じくらいの時間をかけて溜めないといけないし、使用者の全魔力を4/3ぐらい使わないといけない。
その分、威力は絶大でその威力はダイナマイトにも匹敵する。しかもゆっくりにはなるが溜めながら移動することができ、さっきみたいに至近距離から放つことも可能。
つまり使用者は動く水砲台になっているということだ。
◇簡単な解説終了◇
「イテテ……至近距離だと私も衝撃波を受けてしまうのが難儀ですの。やっぱり威力の割に使いづらい」
なんかこの王女掛かってるなぁ。一周回って冷静になってきたわ。
_人人人人人人_
> ゲンコツ!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
「ぶった! 今ぶたれましたわ! 誰にもぶたれたことなかったのに!」
涙目で抗議するよつば。
「うっさいわボケ! 何やっとるんじゃボケナス! 何から言えばいいか、とにかくボケ!」
ガドラの身体の構造上大丈夫だと分かっているものの、流石にこれはダメだろと軽くキレ気味に頭の中を整理している自分。
「ボケがゲシュタルト崩壊してるっすよ、先輩!」
右腕及び右半身を吹っ飛ばされてるにも関わらず、少しズレてる指摘をするガドラ。
「はわわ……」
その様子をうつ伏せで眺めながら呆然としている梓さん。
この様子を第三者が見てたら皆口を揃えて地獄と表現するだろう。
ちなみに、この場にマールが居たら、よつばの魔法を自ら進み出て受けようとしてもっと収集がつかなくなってた可能性大。
「グスッ……とにかく、小娘さん。回復魔法使いたるもの、腕の一本くらいは再生しないと……グスン」
「なんか……ゴメン」
ここまで怒られて尚話を続けるとはあっぱれだよ。流石は王女だ。手を出して泣かせてしまったのはまあ俺が悪いのだが。
「なんか気まずい雰囲気だけど、ゴメン。今日はもう無理だし、腕とかデカイ傷は治せないよ……マダアタマガイタイ」
俺達3人、目を見合わせた。ついでにガドラは現在進行形で身体を再生している模様であった。
◇
「なるほど一回使うとしばらく動けなくなるのか」
どうやらこの子は一日一回しか回復魔法を放てないようなのだ。
よくよく考えたら回復魔法という代物は小さな傷を治すだけでも馬鹿には出来ないぐらいの魔力を消費する。
ついでにこの子はあまりにも深い傷や手足欠損はまだ治せないようで。
でも自分くらいの魔力を保持してるなら一回以上は撃てそうなものだが。いや回復魔法使えるだけこの世界では貴著な人材なんだけどね。ちなみに自分含め4人全員回復魔法は使えない。
「回復魔法キュアーは究極魔法に分類されていで、今の実力じゃ使った時点で倒れてしまうのですゥゥゥ」
「やっぱり僧侶はダメですの。盾と並んで二大人気無い弱いですもの」
「「はい……?」」
今この王女、この後に及んでとんでもない地雷を踏み切ったな……!
◇日和視点入ります◇
さすがにこう言われたらアタシも黙ってはいられない。
アタシは現在、盾のハルと一緒に金髪娘を公開説教していた。
「そういえば僧侶も盾も序盤だけしか活躍できないと言われていますの」
あの魔法使いは、私達僧侶ついでにそこにいる盾の人も飛び火すること言ってきた。盾の人がまるで苦虫を噛み潰してそれを堪えているかのように苦笑いをしています。
「いやでもそんなに怒らなくても、我王女ぞ? いやごめんなさいだからそんなゴミを見るような目で見ないでください……」
「確か回復魔法の扱いが難しく、一流と呼ばれる者でも欠損部位以外なら治せる程度の力が大半をしめているとどっかで聞いたことがあるっす」
そこの尻尾が生えてる再生人間。ナイス補足です。
それが原因であの盾職と並んで僧侶は人気の無い称号持ちの扱いになっているのが現状なわけで。
「でも、アタシの適正や力と魔力的に僧侶しかないんだよねぇ……」
◇日和視点終了◇
「どうしますの。いっそのことここに置いておくのが一番だとわたくしは思うのですが」
よつば王女の口から非情なお言葉が! さっきから一王女としてあるまじきな言葉が飛び交ってるんだけど、なんだろう。
昨日までの穏便さを考えたらねぇ……
「お前なぁ……」
コイツは本物に化けた偽物だと嫌でも勘ぐりだすよな。まあそんなことないんだろうけど。
「テッ……イイ!?」
その時、俺の両足が倒れてる僧侶の両手でガッチリと掴まれ思わず情けない声が出た。
「フッフッフ……逃がさないよ?」
「ああ……」
あらこの子下衆な顔をしていますわね。アハハハハ……
「いいんじゃないっすか? ちょうどいい具合にマールさん居ないし再び4人になるだけっすから」
「だな。いいだろよつば」
元々、よつばを除く2人は大歓迎なわけだし。
「グヌヌヌ……これ以上ライバルハフヤシタクナカッタノニ……」
望月さんの話を聞き正式に仲間に加入させることにした。
◇少し休んでいたら◇
あっ、魔物だ。それも鳥類系のデカい奴が三体。
「試験を始めますわ! いいところに来た鳥を追い払うことをしてみなさい!」
よつばはいつのまにか、穏便で敬愛深く大声、つまりいつもの調子に戻っていた。マジでさっきのヒステリーモードなんだったんだ……?
「ああ、ていうか討伐しなくていいの?」
「敵意は無いですし、なりより命は大事ですので」
「これを使って!」
僧侶は杖を手に持ち……なるほどそれで追い払うのか!
「……あれ?」
いやちょっと待ちなさい? 杖とは別の物が今自分の手のひらに……
「ピコピコハンマー!?」
「これで追い払えってこと?」
日和さんは茹でタコみたいに顔を真っ赤に染めあげてコクっとうなずく。どうやら何かと間違えて渡していたようだ。
さっそく雲行きが怪しくなってきた気がするけど、大丈夫かな?
◇◇◇◇◇
次回に続く
公募専念してたり学校関係(進学)だったり、二次創作を作っていたら投稿遅れました_| ̄|○
これからもストック貯めながらぼちぼち投稿していきますのでよろしくお願いします。
あてタイトル変更しました。「追放系一般盾使い」から「一般盾使いの冒険記」





