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一般盾使いの冒険記  作者: まちゃかり
第2章 ギルドパーティー結成するよ
41/58

2-9 逃げるが勝ち

「ドラゴンとよつばを渡せば命だけは助けるだと?」


 よつば狙われすぎじゃない? 魔王軍とかユウキらに同時に狙われているという異常事態。狙われ系王女って凄い波瀾万丈だな。まあ盾使いとして皆と共にしている以上何が何でも守り通す気だけど。


 ともかく、それを聞いた俺はすぐにガドラに小声で『シンガリを頼んだぞ』と一言言ったのち身構える。それがどういうことかというと実戦経験があるかどうか分からん奴に難しい場面を任せてしまう緊急事態に......


「スマン。後で自分ができる範囲で願いを叶えてやるから、俺が帰ってくるまで頑張れ、ガドラ!」


 突然のお願いにもガドラは特に気負いはせず、むしろジュンティルを任せていいのかと心配しながら聞いてきたけど、俺を誰だと思ってる。みんなを守ると誓った盾使いだぞ! 守ることに関してはスペシャリストだから!


 とりあえずガドラとマールに危険な目に遭わせてしまってすまないとは思ってる。だけどコイツらがよつばとジュンティル狙いだったとすれば最適解はこれだろう。


「そうだお。双方にとっても悪い話ではないだろ? 我も無駄な殺生をしたくないのだお。我の上司も同じ考えよ」


 相手が魔物どうかは関係なく、問題なのは初対面で大事な仲間を引き渡せと言っている奴だ。しかもそんなことを言っている奴は毎年犠牲者を生み出していると噂されている悪魔。


 これはつまり......


「よーし。お前の言い分はだいぶわかった。うんうんそうか......」


 俺は素早くよつばの手を引きジュンティルの馬車に乗り込んで、全速力でモリヤミに向かうための道を突き進む!


 ジュンティルを制御する運転手はいないけど、安全な場所に移動したらなんとか止めるから大丈夫!


 ガドラ以外のガヤが何かゴチャゴチャ言ってるが知ったこっちゃない!


「は?」


「ちょっ!? え? ギョェェェェェ!?」


「ふざけんなお!? ここは正々堂々と戦いに挑む場面だお!? なに堂々と敵に背中を向けてるんだお!? ていうかそこのリザードマン邪魔するなお!」


「うるせえその要求やすやすと飲めるか! 逃げるは恥だが命も大切。てなわけで俺はコイツらを安全な場所に置いて帰ってくるから、それまで時間稼ぎを頼んだぞ!」


「ちょっ!? 僕聞いてないんだけど!? まぁいいけど// いやそれことれとは話が違う!」



       ◇で?◇



 俺としてはよつばが連れ去られると国から反逆罪に訴えられかねんし。なりより相手は悪魔やぞ? バカ真面目に真正面から戦ってたまるか!


 悪魔達は逃すかと言わんばかりに刺さると痛そうな武器を狙って投げてくる。それをなんとか2人に当たらないように俺は右へ左へと流しながら防ぐ。


「分身盾!」


 本物に少し劣る程度の盾を魔法で作り投石ランスに立ち向かう。完全防御体制、お前らの攻撃は馬車には通らない。


 この技は魔力を使う割に使用時間が限られているとか、使ってる間自分は攻撃行動に移れないとか、どうしてもオリジナルの盾には負ける等、デメリットが多すぎて使いたくはなかったが仕方ないだろう。


 前に悪魔達をウジャウジャ増えたと表現はしたが所詮5匹。これならなんとかなる!


「お前達! 無闇に攻撃するなお! 狙うならそこの盾持ってる男を狙うお!」


「スマンっすハルトさん! 2人じゃどうにもできないっす!?」


 やっぱり強硬策は無理があったか? ガドラ達が危険に晒してしまう軽率な判断だったかもしれない。だけど悪魔達の人数がうまく分散されていればそれで半分成功みたいなものだ。


 いやちょっと待て。ガドラ達、悪魔達に盛大に無視されてるのだが? てことは......やっぱりよつば狙い!?


 でも悪魔達、馬車の速度に追いつけてないな。遠距離から投げてくるランスも難なく防げるし、このまま人里に行ければ村人と共に戦うことが出来るかも!


 そんな期待を込めた逃げの進撃はすぐにどでかい動物により阻まれることになる。


 ドッカーーン! ズドーーン!


 なんだ? 前方で何やら嫌な地響きが? すると馬車が急停止して車内は右へ左へとグラグラ揺れている。


 ただでさえ乗り物酔いなのにこの突然の揺れでだいぶ心のメンタルがやられてきている今日この頃。気を抜くと身体も壊れてしまいそうだ......


「もう次から次へとなんだぁ!?」


「オラノメヲキズツケタモノヨ......」


 よかった、幸いにもジュンティルは無傷だ。


 それにしても、目に眼帯をしているが俺はこいつに見覚えがある。お前はいつだかのマゾオークか? なんでお前がこんな狭い場所に!?


「ドウシ。アノ畜生ニマチガイナイ。ドラゴンヨリ先ニ畜生共ヲツブス」


 しかもこいつも敵意剥き出しでさらに逆恨みまでしているという。恨むならよつばを恨んでくれ。


「やはりお前らだったのかお。ワシらのアイドルMブーの顔に酷い傷を負わせたのはお」


 チィ! コイツら言動から推測するに元々ドラゴン、ジュンティルを狙っていて協力関係になってたな。


 クソ。悪魔達の追跡も早い。ていうかマール達も後から追いついてきた。


 そのついでにマールに思いっきりツッコミ入れられてぶん殴られた。


 そうだマールにはそのこと言ってなかったわ。ついでによつばにも......


 結局ガドラも無事に合流して逃げ切り作戦は失敗か。煙幕とかあれば今頃成功してたばずなんだけどなぁ。


「はぁはぁ......たしかに最初こそは嫌だったが、置いてかれるのも......イイッ!」


「マールさん?」


 おい、なに顔赤らめてるんだ。こいつ......Mレベルが着実にレベルアップしている.......


 事前にみんなに言わなかったことは悪くない判断だと思ってだけれど、本人がもう性癖を隠す気ないよねこれ。


「それにしてもこの豚、焼いて食べたら美味しいんじゃないんすか!」


「おっ、そうだな」


 魔物という敵対勢力とはいえ、普通言語喋る奴を食べようとしないだろと心の中でツッコミしたものの、確かに美味しそうな身体してるな。


 ならついでに倒すか。前の戦いでだいたい耐久力とか分かってるのでな、オークは俺がなんとかしよう。


「仕方ないプランBだ。俺とよつばでいつぞやのMオークを仕留めるから、ガドラ達は悪魔達を足止めして!」


 悪魔達は合計5人だ。ガドラの実力は未知数だけどなんとかしてほしい。絶対に死ぬなよ。


「タニンニ指示スルヨリ自分ノシンパイヲシタラドウダ」


「そうだ! なんなら僕直々にあのオークとタイマン張ってもいいんだよ? 随分前に締め付けられた快感をまた僕の身体で味わいたいのだ☆」


「ダメです」


 反射的に反応してしまう俺。ダメだ......早くなんとかしないと。相当進行しとる。


「オ前、我ノ思想ト合致シテイルナ。モシカシテコッチ側ノ人間カ?」


「さあ


「なぁ......もうM同士カップルになっちゃえよ(呆れ)」


 マールに対するガドラの第一印象が最悪のはるか下の土を抉ってきとる!


 よつばが馬車の中にいてこの話を聞いてるなんてことがなくてよかった。ある程度代理王に許されてるとは言え、仮にも一国の王女がこんな思想を持ち出したりでもしたら、そのきっかけを作った俺の責任問題がね。


 ていうか俺は執事か!? 本職やってる人でもこんな苦労はしてないと思うぞ! いやもう......2つの意味で頭が痛い。


「ごめんガドラ! 悪魔達とマールを頼んだ!」


 位置的にもこのほうが都合がいいからね。仕方ないね。決して、もう考えるのをやめたとかそういうのじゃないからな。


 可哀想なガドラ......俺があのMオークを潰す頃まで持ち堪えてくれ......


「ハァァァァァ!? そんな......悪魔よりも味方で嫌な予感がするのは気のせいっすかね!?」


「お前達頭おかしすぎだお......」



       ◇



 クソォ。こんな狭い道じゃ、オークの隙をついての1人1匹を守りながら逃げることは難しいか。


「よつば! お前は馬車に残ってジュンティル守っとけ!」


 俺はよつばらを守りながら進行する上で邪魔なオークを片付ける。マールやガドラは苦難に付き合ってくれ......


「ココデ待ッテオイテ正解ダッタ。道ガ崩落スルカラソコニ待機シテロトイウノハ全テ計算サレテイタ......」


「ドラゴンを狙ってる理由はなんとなく分かるけど、よつば狙うのはよくわかんないなぁ。ましてやオークも加担してるって何か裏あるんじゃないか?」


 そう問うと、オークは今気分がいいからなぜ狙っているのかを教えてやると、周りの山々から反響するような大声で言い始めた。


 どうやら南の魔界の魔王は代々王族に対して報奨金を提示しているようで、もし魔族の誰かが王族を生捕して魔王城に連れてくることができたら多額の金ゲットできるという。


 羨ま......いや客観的にみて誘拐事件じゃん。ていうか報奨金って指名手配されてる人がかけられる代物のはず。例えば、アリシアで見たあの指名手配書みたいなやつだ。


 つまり奴らの目的はよつばとドラゴンを捕まえて金をゲットすると。どこぞのトレンジャーハンターかな。



       ◇



 とりあえずまずはMオークを倒さないと、道の狭さ的にも敵の勢力的にも厄介すぎる。けどこの鋼の体にどうやって傷をつけようか?


 前回の衝突でわかったことだけど初級魔法じゃまず無理だし、シールドアタックは殺傷能力は乏しいし......


 俺が奴に傷を付けれる方法は一つあるけどそれは本来カウンター性能があるだけの防御技。前戦った時、オークの拳にトゲがまるで意味を成していなかったからなぁ......いや待てよ? シールドアタックにトゲトゲをつければ攻撃力上がるんじゃね?


「カチワリカリコミ!」


 危ねぇ。このオークが山の抜け道、落ちたら崖の場所に居るだけでも脅威なのに、どでかい斧を振りかざして衝撃波放ってきやがった。


「お前正気か!? この道が崩落したら俺もお前も命の保証がないんだぞ!」


「......カチワリカリコミ!」


 ダメだ。頭の中が憎悪で溢れてるのかコイツもぜんぜん話を聞いてくれない。こうなったら殺るしかない!


 オークの攻撃を真正面から受け止め、そのあと俺は衝撃が来た瞬間後ろに受け身を取りながら引いていく。


 オークは図体がデカイのが仇となり前のみりに倒れこんだ。よし隙が出来たな!


 食らえ! ニードルシールドとシールドアタックを組み合わせた技を!


「ニードルアタック!」


「ブヒィ!? アァ~☆アヘェ☆」


 決死の突進攻勢は惜しくもバカでかい腕に阻まれてしまう。でも受け止めた手から血が吹き出ているしダメージは与えられてそうだ。


 そう手応えを掴んだその瞬間、オークの左腕が俺を襲う。


「スチールシールド!」


 この魔法は単純に盾を強化するだけではなく一時的に盾がデカくなる。効果はせいぜい数秒ぐらいだけど、今なら十分防げる!


 左腕から放たれてくる衝撃波で俺の身体が後ろに押されていく。まだまだ! 盾使いの力とこの旅で培った自分自身の身体の耐久力を信じろ!


 ピキピキ......


 なっ! マズい。魔法をかけて強化した程度じゃ受け切れないのか?


 慌てて緊急退避をしたものの衝撃の煽りを受け吹っ飛ばされてしまった。盾はまだ壊れてなかったがボロボロの状態でオークの後ろにあるという......


「ふう......斧より素手のほうが威力あるって意味がわかんないだろ」


 とりあえず盾を取り返して形勢逆転を図りたい。


「フレイム!」


「オオ! コシャクナ!?」


 オークの攻撃を避けながら、フレイムをとにかく撃ち続ける。たとえ傷を付けることができなくても、俺が次の策を考える時間を稼げればいい。クソが......一刻も早くマール達の元に向かいたいのに、逆に消耗戦を強いられてしまっている。


 ここは頭を使おう。テクイ技の応酬、そのコンボで奴を惑わしてみせる!


 まずはウォーターでオークの周りに水溜りを作ったあと、その次にアイスでその水を凍らせて身動きを取らせないようにする。


 そして......


「盾を返せ!」


 身動きが取れてない内に盾に向かって突撃だぁぁぁぁ!


 盾に手が届こうかと迫ったその直後、背後から斧の一撃を背中にもらってしまう。さらに身体を蹴られ吹っ飛ばされてしまった。足蹴り自体はなんとか盾で防いだものの山際に激突。背中を始めあちこちから血が滲む。


 背中から激痛が走るが、今足を止めたら次の一撃をもらって確実に殺されてしまうだろう。今動けてるのも防具がダメージを軽減したり耐久力が上がってたり、諸々あって当たりどころが良かっただけだろうし。


「ブフヒッ......水デ足元ヲ濡ラシテカラ氷ヲ作ッテ足止メシテルヨウダガ、我ニハ通用セヌ! ムシロモットヤレ!」


 なんてタフな奴だ。このまま事態が泥沼化したらマール達を助けに向かうことができなくなる。俺の身体的にも短期決戦でケリをつけないと......


「カチワリカチコミ!」


 よしよし、いくら図体がでかく一撃が重くたって一歩一歩が遅く自身の体重が影響してるのか相当ノロマなオークなら、攻撃を受け流す以前にかわすことができるな。


 でも盾に気を取られてオークの想定通りに動いてしまって傷をおってしまったが......自分の身体は持つだろうか。


 いや考えるな! もうこれ以上一撃貰わなきゃいいんだし! 軽く貧血気味だがまだ動ける。


「ほらほらどうした! 肉弾戦なら俺に分があるぞ。死にたくなったら今すぐ降伏しやがれ! これは最後の忠告だぁ!」


 安い挑発に乗ってきたなオークよ。ここで終わらしてやる。


 オークのカチワリカチコミを真正面から受け止め、火事場の馬鹿力の如く弾き返す。オークの体勢が少々崩れ、地面に手をついて体勢を立て直そうとしている。


 この隙は逃さない。食らえ! 俺が密かに作っていて唯一手持ちにあった隠し球小道具その一!


「目潰し不意打ち矢!」


 両目を潰されたMオークは、顔を赤らめながらもけたたましい声をあげて暴れまわっている。


 これは両目を潰して視界を奪って戦闘不能にした俺の勝利だった。


◇◇◇◇◇

次回に続く

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