1-17 ユウキ(前編)
「へー。面白いことやってるじゃないの」
最初からクライマックスである。
冷城ユウキにその仲間達。昨日の風の噂でここに来ていると聞いてはいたが、まさか追放されてから一週間ぐらいで再び再会してしまうなんて。
しかも奴らは俺の逃げ道を封じてきて帰すつもりもなさそうだ。そしてユウキは苛ついてそうな顔で喋りだす。
「僕の王女様を誘拐したそうだな。マジでいい加減にしろよ! このクソ野郎!」
クッ......本性あらわしやがったな。昨日の誘いだしはやっぱり罠だったか。そもそもというかむしろ俺が軟禁されている側なのにユウキは相当頭に血が上っていてご乱心のご様子。
ていうかよつばに至っては誘拐とか誤解だしこれも半ば強制的に連れてかれたの俺の方だし。店のみなさん、俺を加害者ズラで見てくるのやめてくれませんか?
とりあえずこの誤解を解かないと話が進まない。けどどうしよう......
「話を聞いてくれ! これは誤解だ!」
「確かに若君から聞いた話では王女様が自分の意思で出かけられたと聞くが、ユウキ殿は何を根拠におっしゃってるのかな?」
え、エリック! お前......味方してくれるのか! 今まで嫌な奴と思っててすまなかった。
エリックの言葉が出たことで、俺の疑いの目1人を除き一気にどっかに消えていきこの場の空気が一気に緊張感を増していくことになる。
◇
ユウキはというと一旦落ち着きを取り戻したのか、いつもの言葉口調で唐突に語りだした。
わざわざ僕が家に帰したはずなのに、よつば様を連れて旅しているとかなんで奴だと、開幕一刀両断。どうやらよつばと何かあるらしく奴は少しだけイライラを隠せていない様子。
さらにユウキは富も名声もこれから手に入れる男なのによつば様だけは落とせないのは何故だとほざいていた。この言葉から察するに、宮廷暮らしだったよつばにユウキは接触を図っていたようだ。関係は悪かったようだが......
すると奴はよくわからない話を唐突にはじめだした。
「そうか、僕が前世で読んでた成り上がり物と展開が似ている。てことは僕が復讐される側......こんなフラグはさっさと折っておかないと......」
「何さっきからぶつぶつ言ってるんだ? そもそも俺は別に復讐とか考えてないよ。ただ、俺を追放した理由を聞きたいだけで......」
すると奴は理由を惜しげもなく話しはじめた。
「だってお前弱いじゃん。盾使いが強いのは結局創作の中だけだったし。それに僕は強いから盾とかいう雑魚装備の世話にはならない。それだけだ」
「そうよそうよ! ユウキはとても強いのよ! わざわざあなたに付き合ってあげてるユウキの気持ちを汲み取ってちょうだい!」
分かった......俺は今日この街を去る。それでいいんだろ? だけどなんでお前らは入り口に立ち塞がっている? 俺なんかどうでもいいはずなのに。
ユウキは俺をここから帰す気はさらさら無いらしく、これから言う提案というか条件を飲めばこの街から追放だけで済むようだ。いやこの字面だけ見ても少し理不尽じゃない?
その提案というのはあまりにも屈辱的で人をバカにしているものだった。
「王女様を救うためにまずはハルト、お前が邪魔だ。そこで僕はこんな提案をしよう。今すぐ土下座してパーティー解散してよつば様を僕に明け渡すか、無様に死ぬかだ」
なっ!? なんだこの身勝手な提案というか不平等。ていうか王女を救うってまだ言ってるよこの人。エリックの話聞いてた?
逃げる選択肢も絶望的になった今、俺の選択肢は素直に戦うか、土下座かの2択に絞られている。もし逃げることができたらいつでも出発できる馬車に乗ってこの街を出られるのにと思ってしまう今日この頃。
「どうするんだ? まあ今のお前には選択肢なんてないけどなクックック......」
どうせ戦う道を選んだところで実力差は明白。さらに多勢に無勢とみた。なら大人しくよつばを差し出した方が良いのかもしれない。仮にも王女様が提案の材料になっているのはよくわからんが。
ていうかそもそもなんでよつばが話に関わってきてるんだろ。少なくとも俺はユウキ一行と対立関係になってしまってるけど、アイツは関係ない筈だ。
そこで思い出したことがある。あれはよつばに連れられて宮廷に来た時、アイツはユウキのことをボロクソに言っていた。
それによつばは王族にとって結婚適正年齢だし、ユウキは勇者で王様に重宝されているとの噂も聞く。てことは確証は無いけど状況証拠で......
それはつまり、よつばが旅に出るきっかけって宮廷問題の他に別の理由がある可能性が出てきたわけだ。それは目の前にいるユウキが関わっている話で。なら俺はどうすれば......うん。そんなの決まってる。
◇◇◇◇◇◇
次回に続く





