1-13 アリシアは観光地なだけあって楽しい!
よつば視点です
今日は絶好の外出日和! ハルトがついてこないなんて少し予想外だったけど......
「遅れてごめん! 待った?」
おっと来ましたわね。マールさんと一緒に気長にお待ちしてました!
「いえいえ。さてといきましょうか!」
もう今日はあの人のことは忘れてこの街を探索しつくしますか! アリィさんもいることですしね!
実はこの街で友達ができた。アリィという子だ。この子も旅をしているらしく、しかも向かう先も一緒という何かと共通点がある。友達になるべくしてなったという印象を抱かしてもらってる。
その後まずはこの街で1番でかい雑貨屋さんに行き、デザインがとても良くて金髪と相性が良さそうな緑色の髪止めを買ってみた。試しに付けてみると絶賛の嵐!
宮殿では自由に外にも出歩くことがなかったので今すごく新鮮な気持ちだ。あの時父上と1番の兄上がカンマン王国との戦争で不在になっててよかった。私の気持ちに理解を示してくれたのは近い兄上と......嫁に行ってしまった姉上と少数の部下達だけでしたもの。
危くこんな楽しい世界を見ることが無いまま私も政略結婚させられて一生鳥の揺り籠生活だった。そうだ、近くに寄ったら姉上が住んでいる所まで遊びにいきましょうか!
「よつばってもしかしてアクセサリーとか宝石、ジュエリーは興味無い感じ?」
考えごとが過ぎました。現実に戻りますの。それにしても私は宝石物には興味が全く持って無い。
「ん~。宮殿で飽きるほど見せられてきたので、そこまで物欲はないのですの」
マールさんが疑問に思うのは私もよくわかる。だって普通というか貴族達はこの石ころにうるさいし、皆さんは大好きらしいから。特にお金持ちはこういうのにうるさいのです。
私がこの石ころに興味を示さなかったのは私の方がおかしかったのだと自分自身そう思うことにしている。宝石が私の顔を反射しているのを尻目にまたそう感じた。
「宮殿って......? もしかして貴族出身なのかな?」
◇
「すみませんね。ちょっとここに寄らさせてもらっていいですの?」
アリィさんは意外そうな顔をしつつ、無言で頷いてくれた。マールさんは呆れてそうですわね。
「ハハハ! よつばは得意なことにはとことんストイックだね。尊敬しちゃうよ~」
「オホホホホ。ありがたきお言葉ありがとうございますの~」
マールさんがこの店は後で行けるでしょ。なんで今行く、と言いたげの不気味な笑い顔をしてきていますが、私は我が道を行かせてもらいますよ。皆様にはすみませんがね。
そんなわけで私は探検そっちのけで品を選んでいました。するとアリィさんが私が手にしている品を興味深そうにマジマジと見て少々微笑みながら優しい声で呟いている。
「よつばちゃんは薬草詳しいんだね。そんなに詳しいなら薬売りもできそう。お仲間さんが怪我するのが怖いからこんなに詳しくなったの?」
「えっ!? いやあ......その~」
やばいですわね。お得意のコミュ障が......この場合どうすればいいんでしょう?
たしかに私は宮殿時代に薬学の本や薬草の本を読み漁っていたから薬学には詳しいし、今の店に来たのも昨日見た本と同じらしき珍しい薬草があったからで......
「少し前僕は大怪我を負ったんだけど、その時にお世話になったよ!」
「そうなんだ。やっぱり仲間思いなんだね!」
ま、マールさん......! フォローありがとうございます! アリィさんが尊敬の眼差しで私を見てくるけど、なぜが宮殿時代を思い出すのはなぜだろう。最近浴びてこなかったこの感情を思い出した気がする。
それに宮殿時代は執事以外の他人に褒められたことが無かったのでひどく嬉しかった。やっぱり外に出てよかった!
◇
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていき、昼ごはんを食べれるような時間になってしまった。そこで私達はアリシアで1番人気の料理店でお腹を満たすことにしたのですが......
「明日私達が向かうモリヤミってここよりいい場所なんでしょうか......?」
あっ!? ここに来てふと思ったことをうっかり口を漏らしてしまった。そう後悔しても後の祭り。アリィさんは何か話したそうにウズウズしているし、マールさんは何か考えごとをしている。まず口を開いたのはアリィさんでした。
「モリヤミは重要な地形だからね。ここは観光地だけど、モリヤミの首都は物流都市って感じかな? アリシアは水の都だし、モリヤミの屈指の名所がある港町は絶景と言われている。みんな違ってみんないい」
お、おお......凄い早口で言ってくれて感謝です。なるほど、行ってみる価値がありそうということだけがわかりました。アリィさんにとって思い出深い場所なんでしょうね。
そういえばモリヤミにはパレンラトス王朝御用達の別荘地がある。王族がよく使うらしいけど私は使ったことがなかったから、この機会に使ってみるのも楽しそうだ。
「それより、この店の値段少し高くない? たらふく食べれないじゃん」
ここは雰囲気的に少し高級チックな店のようだ。正直なところ私は食事についてはあまり執着が無いといいますか、別にいっぱい食べたいとかそういう感情は持ってないのですの。美味しい食べ物が食べれたら本望って感じですわね。
「料理は質よりも量! これテストに出るよ!」
それにしても大食い人がいいそうなことをまさか乙女であろうあなたがいいますか!? 質が1番大切だって古事記にも書かれています!
「はあ? 流石にこれは納得できないですわ! 少しわからせる必要がありそうですの!」
そんな主張の行き違いに若干頭の中がヒートアップしかけていた私。だけど直後にアリィさんのこの姿を見てしまい、すぐに私は頭を冷やしたのちアリィさんの態度に感心の情を傾けてしまう。
「よつばちゃんっていったい何者なんだろう。時々見せる毅然な態度からのこのギャップ。どこかの貴族出身なのかも? ふう......炊き立てはあったかい」
軽い口喧嘩が起こってるにも関わらず、落ち着いてる雰囲気で湯気がホクホクのお茶をすするアリィさん。あなたはやっぱり肝が据わっている。どうしたらこんな悟りの極地みたいな落ち着きが得られるんだろう?
「反論はないようだね! これで質vs量論争は量が1番だ! ......あれ? 人の話聞いてる?」
「私としたことがこんなくだらないことで取り乱してしまうとはまだまだですの」
少し感情が落ち着いた私が考える。アリィさんは本当に何者なんだろう。確かお仲間さんがいると言ってたけど、まあ少なくともハルトよりは肝っ玉据わってそうだ。
いろいろあったけど私達は料理を食べはじめている。宮殿時代に食べていた料理と遜色ない味でこの料理店はとても良い店だなって思う。
すると何やら豪勢な雰囲気を醸しだしてきている2人組、1人は両手にパンパンの袋を持って入店してきた。1人の男が店中に響くでかい声で何か重要なことを言っている。
「ハッハッハ! ここも大成功だな! だがこれ以上ここにはいられないだろう。なんだってかのパレンラトス王国から指名手配を受けてるからな!」
「おい、この話誰かに聞かれてたらどうするんだバカ! この話はこの国を出てからたくさん語り合おうや」
あの人達さっきから何をコソコソとしているんだろ。指名手配とかなんで堂々と言えるんですかね? てかあれ? マールさんがあの人達をじっと見つめていますの。
「ああああ!? この人達だ! 僕の食料や諸々盗んでいったやつは!」
「......? えっと......ホゲェェェェェ!?」
まさかの運命の再会。因縁の対決! 宿命現る! そういえば初対面の時何も持ってなく行き倒れしてたのを思い出しましたわ。まさか追い剥ぎに遭ってたとは。
「は? なんだてめえ......えっ?」
「どうしました? 兄貴?」
威圧感を全面に出していたあの兄貴と呼ばれている人が私を見た瞬間、急に顔が青ざめたんですけど......てことは次出る言葉が大方予想できますわ!
「この街にパレンラトス王国の第二王女様がいらっしゃルゥゥゥゥゥ!?」
◇◇◇◇◇
次回に続く
[お知らせ] 土曜日はちょっと資格取りに行くので更新できません。ストックはあるのでまた日曜日にでも投稿再会します!
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