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婚約破棄もの

王子に嫁がなければよかった

終盤に汚物表現があります。

嫌な方はゴーバック!

「公爵令嬢!お前との婚約を破棄する!」

「王太子殿下の仰せのままに」


 王都学院での卒業記念パーティーで王太子殿下が、その婚約者である公爵令嬢との婚約破棄と、庶民である私との婚約を宣言した。


 この二年間は地獄だった。公爵令嬢を筆頭として学院中の貴族令嬢がやれ王太子に近づくな、やれ王太子に関わるな、やれ王太子と交友を結ぶな、やれ庶民は庶民らしくしていろ、やれ身分を弁えろ、etc..etc..

 このことを王太子殿下に報告すれば、結果殿下は王太子妃にと貴族御令嬢方ではなく私を選んでくださったのだ。

 これからは幸せな生活を送れ、両親にも親孝行ができる、



     そ う 思 っ た 私 が 馬 鹿 だ っ た



 ――――――――――――――――――――――――――――――


 まず最初に私は伯爵家に養子入りさせられた。その際に庶民だった頃の関係を全て精算させられた。家も、家族も、友人も、恩人も……。


 曰く、王族は国の頂上であり全ての貴族の模範でなければならない。

 貴族は個人の為にあってはならず、国のためにあるべし、高位であればそれだけ責任も重くなる。それ故に責任に応じた贅沢を許されていると。当然ながら模範であるべき王族もまたしかり。

 庶民は法を犯さない限りはその義務から外れるが、職人や商人等の貴族に関わる者は、貴族程ではないが多少なりの義務が生じる。

 また貴族と婚姻するのであれば、入る家に相応しい責任を負わなくてはならない。その家が高位であれば付き合いを準じたものに制限される。

 故に高位貴族に婿入りまたは嫁入りする際には養子入りが要される。


 私は王太子と婚姻するために伯爵令嬢となり、二度と両親と会うことを許されなくなった。親孝行どころではない、私は親を捨てさせられたのだ。

 時折職人や商人と関わることはあるが、それすらも高位貴族との関わりを許されたところだけ。私の元実家は庶民だけを相手にした田舎の小さな店だ。

 仮に婚姻相手が伯爵家であれば男爵家に養子入りし、庶民と断たれる事はなかったろう。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 卒業記念パーティーのその夜、早速王太子妃教育が開始された。

 前述の通り貴族には義務が生じる、それは知識や振る舞いもだ。

 私は生まれも育ちも生粋の庶民であり、学院に入るまでは元実家のある男爵領の領主様どころか代官様にすら会ったことはない。もとより貴族に嫁ぐ予定も無かったので、庶民としてのマナーしか学んでいなかった。貴族であれば自然と身に付く振る舞いすらも無い。


 お茶ひとつ飲むにしても、右手で左腕の袖を押さえ、カップの乗ったソーサーを左手で持ち、カップの取っ手を右手の親指と人差し指と中指だけで持ち、啜らずに口内へと注ぐ。

 信じられるか、ここまでやってやっと男爵家レベル(さいていげん)なんだとさ。

 庶民と同じで許されるのは寝相くらいしか無いんだよ!

 鞭は、鞭はいやだぁぁぁ!!!


 知識においても次期王妃として知るべきことはもちろん、養子入り先の伯爵家のことも知らなくてはならない。

 養父の仕事を始め、領地の位置や特産、寄り子である男爵家子爵家、寄り親の侯爵家に公爵家、それらの家族構成に正妻の嫁入り元。さすがに当主夫妻と嫡子以外は名前だけ知ってればいいけど、それでも膨大になる。

 ある侯爵夫人のフルネームは

 シャルロッテ(名前)ジャネット(幼名)フェルデイウス(実家の家名)レッドスミス(実母の実家)ラットディウス(侯爵家名)

 義務としては姓名だけでいいが、たまに幼名などで話す人がいるから油断できない!

 更に王家の分も記憶しなきゃならないんだぜ!

 まぁ、王族分は侯爵家以上と辺境伯と主要な家の当主だけでいいらしいが、それでも膨大だよ!


 王太子の元婚約者の公爵令嬢は全員のフルネームを暗唱できるらしい……化け物か!?



 ――――――――――――――――――――――――――――――


 初夜は王太子殿下と二人きりで……と夢見てた頃もありました。

 王位継承権を放棄した王子なら許されるが、次期王太子が私生児とかありえない!

 ということで私が処女かどうか国王王妃両陛下を始め、宰相に侍従長にメイド長、他数名の目の前で【はじめて】を良く見える様にやらされるらしい。そして血が出ることを確認して初めて夫婦として認められる。

 たまに経験済みだったり、自分で破ったりで血がでないこともあるが、そういう人は一年間離宮に軟禁することで他人の子を産むことを防ぐんだそうだ。


 純潔を証明するためとはいえ、ジジババに見せるとか……。



 ――――――――――――――――――――――――――――――


 最悪なのは糞尿検査。これ伯爵家以上の子息はみんなやってるんだそうだ。


 貴族の場合は年に一度、専用の容器に自分で採集し、専門の業者に提出する。同性の従者にやらせる子息もいるんだとさ。

 これが王族の場合は月に一回以上採取専用の厠で検査官の目の前でだすんだよ、婚約者も。

 体調が悪い時や重要な式典が近づくと数日~週に一度に増える。

 元婚約者の公爵令嬢も卒業式前の一ヶ月は三日に一度やってたんだと。


 これ知ってたら王太子に恋なんかしなかったさ!

 ああそうか、だから御令嬢たちは私を諌めてたんだね。

 離縁が許されない今となっては後悔と感謝と謝意しかないよ。




 ………………ダレカタスケテ……

感想を戴けますと幸いです!


2021/4/9 追加設定

トイレ事情は昔の日本に近く、汲み取り式便所で、回収業者が集めて肥料にしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ホラー(本人にとってのみ) [気になる点] けど、それ以外の人にとっては(登場人物、読者含め)ギャグ [一言] 結局、「自分が地獄と言った言葉」が、「地獄に行く庶民を止めるための忠告」だっ…
[一言] 興味深い物語でした。 王家や貴族達にとって、王太子の子供を妊娠する『器』は外見は美しく頭脳は賢く肉体は健康である事は大前提で、元庶民の娘の家族や親戚や友人達が利益などを求める可能性を残してお…
[一言] ああ~~うん。 ホラーねW コメディーかと思いましたW 面白かったW
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