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第8話 自己紹介とお願い

メインキャラクターの紹介回です。

 クレスとの対戦後、玲也達は昼食を食べるために食堂へと来ていた。

 メンバーは玲也、香住、ロイド、セイラ、クレスの五人である。

 ちなみにエリーはホールの後始末があるということで、ホールで別れていた。ロイドは残念そうにしていたが、玲也は内心でほっとしていた。

 食事が一通り終わって落ち着いた頃に、香住がある提案を口にした。


「ねえ、せっかく集まったんだし、改めて自己紹介しない?教室の時はほぼ名前くらいしか言ってなかったし」

「良いんじゃねえか?俺は賛成だぜ」


 ロイドが真っ先に首を縦に振った。


「そうだね。それが良いと思う」


 クレスも二つ返事で了承した。


「あ、あの、その、う、上手く出来ないと思いますけど、が、頑張りましゅ」


 相変わらず緊張で舌を噛んでいるが、セイラも賛成のようだ。


「別に構わないぞ」


 全員が賛成しているので、玲也も否やは無かった。


「では、全員の賛成が得られましたので、言い出しっぺの私から行きます!」


 香住は一息吐いて、口を開いた。


「清水香住です。出身は東方にある日原之国です。BDM歴は一年で、ずっと玲から教わっていました。好きな事は玲と一緒に過ごすこと、好きな人は玲です。よろしくお願いします!」

「おい、後半のくだりは要らんだろ」


 すかさず玲が突っ込みを入れる。


「え?本当の事だし特に問題無いけど。むしろこれが無ければ私の自己紹介にはならないし」

「お前のアイデンティティーみたいな言い方だな」

「そうだけど?玲が突き離そうとしても、私は絶対に離れてやらないんだから」

「まるでストーカーだな」

「素性が分かってるだけ良いでしょ」

「ストーカーであることは否定しないのか」

「細かいことは良いじゃない。こんなに可愛い幼馴染に愛されてるんだから嬉しいでしょ?」

「自分で可愛いとか言うな。だが、事実であるところが非常に腹立たしい」

「ふふ、ありがとう」


 玲也と香住のやり取りを見た三人はドン引きしていた。


「俺は夫婦漫才でも見せられてるのか?カスミちゃんのキャラがこんなんだったとは・・・」

「な、何だかすごいでしゅっ」

「はは、どうやら縛られているのは玲也の方だったようだね・・・」


(久しぶりに暴走するのを見たな)


 施設時代にも香住が今のように暴走することが時々有ったが、施設内の職員や子供はほぼ身内のようなものだったので、「また始まったな」くらいにしか思っていなかった。


「他でもそんな調子でやらかすなよ?今みたいにドン引きされるぞ」

「良いじゃん、これくらい」

「初対面の人が見たら、明らかにヤバイ奴だと思われるぞ」

「玲に嫌われさえしなければ大丈夫だけど」


(この状態の香住は疲れる・・・)


 普段は気さくで気遣いもできるし、家事全般もそつなくこなせて人気が高いのも頷けるのだが、この状態になると非常に残念な感じになってしまうのが玉に瑕である。


「たまに()()が起きるが、基本的には良い奴なので仲良くしてやってくれ。さ、次は誰がするんだ?」


 玲也は強引に香住の自己紹介を打ち切った。香住はまだ不満げな様子であるが、しばらくすれば収まるだろう。


「じゃあ次は俺がやるぜ。ロイド・アレクジアだ。ユレイア王国のカルラスという小さな町からやって来た。親父が町のBD守護兵をやっていて、俺も同じ職に就きたいと思って学院に入学した。BDM歴は三年だ。よろしく頼むぜ」


 BD守護兵は町の治安を守ることが役目であるが、主に悪質なBDMを取り締まることを目的としている。

 悪質なBDMによる犯罪が増えたことで各地にBD守護団が結成されたのは記憶に新しく、まだまだ体制が整っていない場所もあるようだ。


「つ、次はわ、私がやりますっ。セイラ・シャルティオでしゅ。え、えと、ユレイア王国のリプライズ出身で、ば、BDM歴は三年くらいですっ。よ、よろしくお願いしましゅ」


 リプライズはユレイア王国第二の都市と呼ばれており、BDの研究機関があることでも有名である。


「シャルティオということはシャルティオ侯爵の家系なのかい?」


 クレスはセイラの姓に心当たりがあるようだ。


「は、はい、私はじ、次女ですっ」

「クレスは彼女の家の事を知ってるのか?」


 ロイドがクレスに聞いた。


「シャルティオ家はユレイア王国の中でも有数のBDMの名家なんだ。僕は王家主催のパーティーで何度かシャルティオ侯爵と顔を合わせたことがあるしね」


「ん?クレスの家も貴族だったのか?」


 あの対戦の後、クレスが名前で呼んで良いということだったので、玲也も同じ事をクレスに言っていた。

 王家主催ならば貴族しか出られないだろうなと思って玲也が聞くと、クレスはおかしそうに笑った。


「はは!自慢じゃないが、僕の家名のアークライトは公爵家なのさ。だから知らない人は居ないと思ってたけど、ここに一名いたようだ」

「遠い異国の出身なんでな。香住は知ってたか?」

「う〜ん、私も知らなかったかな。オリエンテーションの時に父親が王国軍のBDM軍団長って話は聞こえてきたけど」

「・・・異国になると知名度はイマイチなのかな?」


 クレスは本気で不思議そうな表情になっていたので、ロイドがフォローをする。


「いや、学院のある国の王族や有名貴族を知らないのはまずいと思うぞ?流石に覚えておかないとどこで不敬を働くか分かんないぞ」


「そうなのか?ま、日原之国は貴族がいないから、その感覚がよく分からないな」

「なら、今からでも覚えておこうぜ。今度クレスが教えてくれるだろうよ」

「ロイドじゃなくて、僕なんだね・・・」


 ロイドが教えるのかと思いきや、丸投げされてしまったクレスは微妙に疲れたような表情となっていた。


「そりゃ平民の俺よりかは公爵様の息子の方が遥かに詳しいだろうが」

「正論だけに言い返せないのが、微妙に腹立たしいよ。まあ時間を見て教えよう」

「それなら香住も聴いた方が良いな。時間の合うタイミングにしたいところだ」


 クレスが玲也の申し出に了承したところで、次はクレスが自己紹介をすることになった。


「もうさっきの話題で自己紹介する内容をほとんど言われてしまったけど改めて、僕はクレス・アークライト。一応アークライトライト公爵家の長男さ。将来は王国軍のBDM軍を希望しているよ。BDM歴は四年だね」


 玲也は気になったことがあるので、クレスに聞くことにした。


「なあ、よく分からないが公爵家の当主が軍団長ってのは普通なのか?」

「僕が言うのもおかしな話だけど、普通ではないね。ユレイア王国の場合、王族の次に位が高いのが公爵となるから、内政にも影響力が大きい。軍団長の地位もそれなりに高いが、公爵家の当主が就く職としては低すぎるよ」

「そうなのか」

「どうもBDM軍をもっと強化したいらしくてね。嬉々として部下を鍛えているよ」

「で、クレスも同じ考えなのか?」

「どちらかというと父さんの背中を追ってきたからね。早く追い付いて隣に並び立ちたいんだ」


 玲也はクレスの純粋な想いを聞いて、眩しそうに、あるいは羨ましそうにクレスを眺めた。


(父親の背中、か)


 物心ついた頃に姿消した俊彦のことを思い出し、少し感傷的になる玲也であった。


「最後は玲也だね」


 四人がタイミングを合わせたかのように玲也へ注目を集めた。


「・・・何でそんなに注目しているんだ。ていうか香住は知ってるだろ」


 呆れたように言うものの、四人は全く聞く耳を持っていなかった。


「玲の事もっともっと知りたいな〜」

「そりゃあれだけの事をしておいて、なあ?」

「き、気になるですっ」

「僕もずっと聴きたくて仕方なかったよ」


 やっぱり明かすのはまずかったかと微妙に後悔しながら、玲也は自己紹介を始めた。


「聖玲也だ。出身は香住と同じく日原之国でBDM歴は、それなりに長い。学院に来たのは見識を広めるためだ。よろしく頼む・・・何だ?」


 四人から全く納得していない表情で眺められ、玲也は若干たじろいだ。


「重要な事が抜けてるぜ。BDレベルが六十ってのは明らかにおかしい」

「対戦後の時にも言ったけど、あれだけの知識があって見識を広めるっていうのは無理があるんじゃないかな」

「BD魔術の事もと、とても詳しかったですっ」

「手解きを受けてた立場からしても、内容がすごい分りやすいんだよねぇ〜。それに矢を具現化出来る話をしたらクラウス先生にびっくりされたよ〜」


(だろうな・・・)


 玲也とて自覚がないわけではない。語った内容が並外れたものであることは、充分に理解している。ただ、早い内に話しておいた方が後々の成長に繋がりやすくなるという気持ちが強く出てしまったのだ。


(だが、ここで全ての事を明かすわけにはいかない)


 しかし、このままでは納得されないのは目に見えているので、ある程度真実を織り混ぜながら説明をすることにした。


「見識を広めるというのは、俺の師匠に言われたことだ。閉鎖された島国に居るよりも、広い大陸の主要都市に行った方が手練れがいるだろうという話だった。色々詳しいのは師匠に教わった内容の受け売りだ」

「BDのレベルが六十だったのは?」

「師匠が高レベルのBDを使っていたからな」


 師匠がいたことは本当だし、高レベルのBDを使っていたのも本当である。ただし、師匠といえる人が何人もいたのだが。


「BD魔術にく、詳しかったのは、な、何故でしゅか?」

「単に師匠が詳しかったからだ」


 何人もの師匠の中にBD魔術のスペシャリストがいたので、これも本当である。


「一応筋は通っているね」

「何かはぐらかされてるところも有りそうだが」


 まだ引っ掛かる部分があるものの、概ね納得をしている様子なのでほっとしかけたのだが、香住に新たな火種を投入されてしまう。


「ねぇ、学院でも教えてくれるんだよね?」

「ん?時間が有るとき良いぞ。まだ教えたいこともあるしな」


 これに反応したのが他の三人である。


「俺も聞いてみたいぞ」

「わ、私も聞きたいでしゅ!」

「僕も同じだね」

「は?学院に来てわざわざ生徒に習う必要はないだろう」

「じゃあ何でカスミちゃんは良いんだよ?」

「今まで教えてたからな。その延長上ってだけだぞ」

「それなら僕達が一緒に聴いても問題ないよね?」

「いや、学院で習う内容かもしれんぞ」

「それでも構わないさ」

「わ、私もBD魔術の事、い、色々聴いてみたいですっ!」

「別に教え子が増えて問題ないだろ?」


(だめだ、断れる理由が見当たらん・・・)


 結局、玲也が折れることになるのだった。

玲也の師匠達が今でも玲也より強いというわけではありません。登場するかどうかはまた別の話です。(笑)

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