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第3話 初授業(後編)

お待たせしました。後編はBD全般のシステムに関するお話です。

 歴史の授業が終わった後、玲也、香住、ロイドの三人は雑談をしていた。


「はぁ、自己紹介緊張した〜」


 自己紹介の時を思い出したのか、香住はわずかに赤面していた。


「随分注目されてたな」

「うう・・・、やっぱり朝の出来事のせいかな?」

「だろうな」

「そういうレイヤもかなり注目を集めてたぜ」

「特に気にならないな」


 玲也は今まで多くの視線を浴びながら戦う経験がかなり有ったため、多少の視線は気にならなくなっていた。


「いいな〜。しばらくあの視線に耐えないとだめだと思うと気が重いんですけど」


 香住は羨ましげに玲也を見つめた。


「そんなに気が重いなら、俺が話し相手にもなって気を紛らわせるようにするか?」


 玲也の言葉に香住の表情がぱっと明るくなった。


「本当に!?じゃあお願いしようかな〜」

「ああ、構わんぞ」


 二人のやり取りを見て、ロイドは思わず額に手を当てた。


「そんなことをしたら、余計に視線を集めることになぜ気付かないんだか・・・」

「ん?何か言ったか」

「いんや、仲が良くてよろしいなと言っただけだ」


 ロイドは肩を竦めながら苦笑した。


「話は変わるが、次の授業の教師はかなり若い女性らしいぜ。しかも美人だって話だ」

「耳が早いな」

「当然だ!授業のやる気ってもんが全然変わってくるぜ」

「そうか、それは良かったな」

「・・・レイヤってホントに他人に興味がないのか?」


 呆れた様子でロイドが聞いた。


「いや、そんなことはないぞ。今のところ面白そうな奴があまり居ないからな」

「レイヤの基準がイマイチ分からん・・・」

「まだ知り合ったばかりだからな。そのうち分かるだろ」

「まあ、それもそうか」


 話が一区切りしたところでチャイムが鳴った。各々が自分の席に戻っていくが、心なしか男子生徒達が浮き足立っているように見えた。


(ロイドの言ってた例の女性教師なんだろうな。まあ俺には関係無いが)


 玲也はこの時まで他人事に思っていたのだが、それは女性教師が教室入ってきた瞬間に覆されることになる。なぜなら、


(は!?待て待て聞いてないぞ!)


 姿を表した女性教師にとても見覚えがあったからだ。束ねられたプラチナブロンドの髪に蒼い瞳、そして見慣れた眼鏡スタイル。


(・・・いや、よく考えたらやりそうな手だな)


 きっと驚かせたかったからに違いないと玲也は感じ取っていた。実際、さっき目が合った時に一瞬だけだが、イタズラが成功したような笑みを浮かべていた。


「さて、最初に自己紹介をします。私はエリティア・クラウスといいます。担当授業はBD一般教養で、このクラスの副担任でもあります。皆さんとは年代も近いと思いますので、相談事があれば気軽に声をかけてくれると嬉しいです。よろしくね」


 エリティア、もといエリーが微笑を浮かべると、男子生徒の大半が熱に浮かされたような表情になっていた。


(あの様子だと、男子の大半は授業に集中出来なさそうだな。ま、どうでもことだが)


 最初に驚きはしたものの、玲也はすでに平静になっている。むしろ、エリーがどのレベルまでの授業をするかが気になっていた。


「では、授業を始めます。今日は最初の授業なので、基本的なことから話をしていきます。すでに知っている内容もあると思いますが、復習がてら聞いてくださいね。まずは皆さんが持っているリンクブレスレットから説明しましょう」


 エリーは右手首に着けている白いブレスレットを見えるように掲げた。


「リンクブレスレットはBD本体、リンクギア、BDの装備品を出し入れできるブレスレットです。開発されたのはフィアーユ戦役の終盤とされています」


 BDの開発に成功した当初はリンクブレスレットが開発されておらず、BD、リンクギア、装備品の全てを持ち歩いていたという。当然これだけでもかなりの荷物量であったので食料を大量に持つことが難しく、長期遠征が出来なかった。また、持ち歩くだけでも体力の消耗が激しかったということもあった。

 この状態を改善しようと思うのは当然の流れであり、方法が検討された。

 試行錯誤の末、当時まだ廃れていなかった魔法技術の中でも空間魔法を物に付与する案が採用された。空間魔法を使用することで物を収納できる空間を作り上げ、出し入れできる仕組みを作ろうとしたのだ。この仕組みは空間魔法、形成した空間に物を入れる魔法、空間から物を出す魔法の三種類の魔法を付与することで実現したのだった。


「詳しい話は歴史と内容が重複するので省略しますが、魔法を付与する対象は身に付けやすさの観点からブレスレットが採用されました。これがリンクブレスレット誕生の大まかな流れです」


(へえ、案外まともな授業するんだな)


 内心玲也が感心していると、こちらの方を向いたエリーが笑みを浮かべていた。まるで私が授業すればこれだけできるのよ、と心の声が聞こえてくるかのようだ。


(褒めると調子に乗りそうだから、黙っておこう)


 玲也は顔に出さないように平静を保つのだった。




「次はリンクギアについて説明します。皆さんがご存じの通り、BDと接続して操作をするための装置です。『リンク・イン』でBDと接続し、『リンク・アウト』でBDとの接続を切ります。『リンク・イン』をすると、BDから映し出されている視界や感覚が共有化されます。そして、脳内でイメージした動きを信号として受け取り、リンクギアに付いているアンテナでBDに伝えることでBDを操作することが出来ます。この時重要になってくるのは『リンク率』です」


 リンク率はBDとの接続具合を示す指標である。リンク率が高いほど、視界や感覚がより強くなり、BDの動きや反応も良くなるのだ。


(ま、リンク率が高くなることは何も良いことばかりでもないんだがな)


 リンク率が高いが故にもたらされる弊害があることを玲也は知っていた。これはBDを使っていく上で必ずぶつかる問題である。


 一つは単純に脳への負担が大きくなることである。

 そもそもBDとのリンク・インが無限にできるわけではない。リンク・インをするとBDからの情報を脳内が処理していく。また、BDの操作は脳内イメージをもとに行われるので、当然脳に負荷がかかる。

 リンク率が高くなると、脳内にもたらされる処理量が増え、さらに負担がかかってしまう。この影響でBDとリンクする時間が短くなることに繋がる可能性があった。

 もう一つは感覚である。リンク率が高いなるほどBDとの感覚共有が鋭敏になる。つまりBDがダメージを受けたときに、その分強い衝撃を自分自身で感じてしまうことになる。


「脳に負担がかかりすぎますと、『強制リンク・アウト』が働き、BDとの接続が切れてしまうので注意してくださいね」


 エリーは右手の人差し指を立てながら、パチっと片目をウィンクした。


(あざとい・・・)


 玲也は内心で溜息を吐いた。男子生徒は味方につけやすいだろうが、女子生徒からは支持が得られないだろうなと何となく他人事で見ていたのだった。


「あと、リンクギアの大きな特徴はやはり『リンク・イン』中の特殊なフィールドでしょうか。自分自身を纏うように形成され、あらゆるダメージが無効化されます。つまり『リンク・イン』をしている限り、自身の身の安全が()()保証され、気兼ねなくBDの操作に集中することが出来ます。歴史でも出てきたと思いますが、BDが普及した大きな要因の一つになります」


(そのせいでBDを悪用する輩も随分増えたんだがな)


 魔物と対抗できるほどの力を持つBDだが、何の力も持たない人間にとっても脅威となるのは当然の事であった。一時期はBDを用いた犯罪が爆発的に増加し、あわやBDの使用禁止になろうかという事態にまで発展した。

 この影響で様々な議論が飛び交ったのだが、魔物討伐に対する影響が大きくなりすぎるとの懸念が出た結果、BDの使用禁止という最悪の結末は避けられた。しかし、これ以上の犯罪増加は危険と判断されたため、各国は専門組織を立ち上げることで、厳しく取り締まると共に刑罰をかなり重くするという処置を取った。

 迅速に動いたこともあって一定以上の成果が出たのだが、未だにBD犯罪がそれなりに多いのが現状である。


(最近ではリンクギアに悪用検知機能を追加して、強制リンク・アウトをさせようという研究が進んでいるらしいが、実用化はまだまだ先だという話だったな)


 むしろなぜ最初にその発想へ至らなかったのかが不思議だと玲也は感じるのだった。




「最後にBDのステータスについてですが、特に重要な三要素があります。これについては誰かに聞いてみようかな」


 エリーはそう言うと玲也の方へ視線を向けてニコっと微笑んだ。玲也は嫌な予感がした。


「それじゃ、れ・・聖君に答えてもらいましょうか」


(おい、一瞬玲也って言いそうになってたぞ!?大丈夫かよ・・・)


 内心冷や汗をかきながらも玲也は答えた。


「レベル、HP(ヒットポイント)SP(スキルポイント)です」


「その通り。ではもう少し詳しく説明してもらえるかしら」


 玲也は思わず嫌そうな表情をしてしまったが、黙っていたら何を言われるか分からないので、気が進まないながらも席を立って説明し始めた。


「・・・まずレベルですが、最初はどのBDもレベル1からスタートになります。魔物を倒したり、BD同士で対戦することで経験値が得られ、規定の経験値に達するとレベルが上がります。レベルが上がるとHP、SPの最大値が増加します。また、規定のレベルに到達すると術技を覚えることがあります。余談にはなりますが、格上を相手にするほど得られる経験値が上がり、逆に格下を相手にすると得られる経験値が下がる傾向にあります。また、レベルは高くなるほど必要経験値が多くなるため、高レベルになるとレベルが上がりにくくなります。次にHPですが、これはBDの耐久値を表しています。HPがゼロになるとBDが機能停止し、強制リンク・アウトとなるので注意が必要です。最後にSPですが、これはBDが術技等を使用する際に必要な値となります。術技によって消費するSPが決まっていて、SPが足りないと術技が失敗するだけでなく無駄にSPを使ってしまうので、これも注意が必要です。このような説明でよろしいでしょうか、()()()()()()


 玲也が少しだけ慇懃無礼に返すと、エリーは一瞬だけ不満げな表情をするが、すぐに笑顔に戻った。


「ありがとうございます。素晴らしい説明でしたよ。よくお勉強をされているようで安心しました」

「・・・恐縮です」


 白々しいとよっぽど言いたかったが、玲也は一礼をするに留めて着席した。


「さて、私が説明する内容がほとんど無くなってしまいましたが、少しだけ補足です。リンクギアにはBDのレベル、HP、SPが全て表示されますが、対戦相手のBDのステータスはHPゲージしか表示されません。一応対戦の許可がもらえたらその他も表示出来ますが、わざわざ情報を与える事はしないでしょう。もし、パーティを組むのであればその限りではないですが・・・」


 そういえば、とエリーが何かを思い出したように口を開いた。


「まだBDM協会に会員登録をしていない人は今週末に必ず登録を済ませておいてください」


(やっぱり協会に登録しないとだめなんだな。これは今週末香住に付き合わされそうな気がする)


 そう考えると少し玲也の気が重くなっていた。


「今日は少し早いけれどこれで終わりにします。この後はオリエンテーションが有りますので、皆さんは第二ホールへ移動してください」


 その後エリーはいくつかの連絡事項を伝えて授業が終了した。

 これで一息つけるなと玲也は思ったのだが、


「聖君、ちょっといいかしら」


 とエリーに声をかけられてしまったので、溜息を吐きながら渋々席を立つのだった。

授業という形を取った説明回でした。ある程度の説明をしましたが全てではありませんので、今後少しずつ出していこうと思います。

BDM協会の説明はオリエンテーション後の話に入れますので少々お待ち下さい。

次はようやくバトル回になる、かな?

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