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第9話 玲也のBD講座1

玲也のBD講座は時々入れていく予定ですので「1」と割り振っています。

「それじゃ、今から始めるぞ」


 玲也を含めた五人は学院内にある第二訓練所に来ていた。

 食堂での一幕の後、全員の時間が空いているということで早速行われることとなった。

 食堂を出たときに偶然エリーとばったり会ったので、事情を説明したら訓練所がある事を知ったのだ。訓練所は申請して許可が下りれば使えるということだったので、エリーに申請方法を教えてもらった。

 第一訓練所は他学年の授業で埋まっていたが、第二訓練所に空きがあったので申請をしたら許可が下りた。

 ちなみに学院には訓練所が五ヶ所有り、それぞれ複数のステージが有る。訓練所の大きさは第一訓練所が一番大きく、様々な種類のステージが有り設備も豊富である。第二訓練所も様々なステージが有るが、今回は何の特徴もないステージしか空いていなかった。

 ちなみに申請の許可が下りた後、エリーにからかわれる一幕もあったのだが、玲也が全く何も言い返せなかったことを追記しておく。


「今日は簡単な内容から話をするぞ。一つはBDスキル、もう一つはリンク率だ。どちらも知ってる内容だろうから、あまり面白い話はないかもしれんがな」


 そう前置きをしたが、四人の視線はどこか期待するような色が含まれており、玲也は内心溜め息を吐きたくなった。


「まずはBDスキルからだな。BDスキルはその名の通りBDが身に付けられる特殊能力のことだが、スキルの種類はいくつあるか分かるか?」


「はいっ!」


 香住が元気良く手を挙げたので答えてもらうことにした。


「え〜と、パッシブスキル、コモンスキル、付与スキル、固有スキル、術技です!」

「では、今答えたスキルについて簡単に説明してくれるか?」

「パッシブスキルはリンク・イン中に常に効果が発動するスキルだよね〜。コモンスキルは全BDが覚えられる共通のスキル、逆に個々のBDしか持たない唯一のスキルが固有スキルかな〜。BDに属性、強化、弱体化を付与するのが付与スキル!最後に術技は武器や専用の戦闘術を使うときに発動するスキルって感じの答えで良いかな?」

「ああ、説明した内容はほぼ正解だ。次に、スキルを得る方法には何がある?これはクレスが答えてくれるか?」

「オッケー、まず一番分かりやすいのがBDが規定のレベルに到達した時かな。これはパッシブスキル、コモンスキルが多い。あとは特定の条件を満たすことで覚えるというのもあるね。最後にスキルを買って身に付ける方法だね」

「その通りだ。さて、最初香住に聞いた質問について意見が違うってところはあるか?」


 香住を除いた三人に聞いてみたが、誰も何も言わなかった。つまり三人とも香住と同じ回答だということになる。


「では、質問を少し変えるぞ。クレスに聞くが、香住が矢を具現化してるのは見たな?」

「ああ、とても驚いたよ」

「ま、高等技術だから驚くのも無理はない。この武器具現化だが、香住が答えたスキルの中で、どれに該当すると思う?」

「え?そういえば、何に該当するか考えたことないね。パッシブスキルではないし、固有スキルでもないよね。付与スキルというには違うだろうし、術技というのも無理がある。となると、残りはコモンスキルしかないわけだけど・・・」


 消去法で考えるとコモンスキルになるが、クレスにしてみればスッキリとする回答ではなかった。

 玲也もクレスの考えていることが分かっているので解説することにした。


「確かにコモンスキルの定義を考えると間違ってはいない。武器具現化は全てのBDが覚えることのできるスキルだからな。しかし、コモンスキルの定義をより正確に言うと、全てのBDが()()()覚えられる共通スキルだ。つまり、高等技術の武器具現化はコモンスキルではない」

「で、では、スキルには他にし、種類があるということですかっ?」


 セイラがおずおずといった様子で呟いた内容に、玲也は首を縦に振る。


「そういうことだ。実は香住が答えたスキルの他に三種類のスキルが有る」


「「「「!?」」」」


 玲也の説明を聴いて、四人は驚いていた。まさか、他に三種類もスキルがあるとは思っていなかったし、聞いたことも無かったからだ。


「あらかじめフォローしておくが、BDMの大半は皆と同じ回答をするはずだ。実際に様々な文献を見ても、スキルの種類は答えてもらった五種類の記載しかないのがほとんどだ」

「つまり、スキルの種類は全部で八種類有るというわけか」

「ああ。では他の三種類のスキルだが、アドバンスドスキル、シールドスキル、リミットスキルが有る。どれか聞いたことが有るスキルは?」


 玲也が四人を見回したが、四人とも反応が無かった。どうやら全て聞いたことが無いようだ。


「まず、アドバンスドスキルは習得が難しい高等スキルを指す。さっき質問した時に挙げた武器具現化がこれに該当する。次にシールドスキルだが、シールド(盾の)スキルではなくシールド(封印された)スキルという意味だ。つまり、封印される程の危険なスキルのことを指す。最後にリミットスキルだが、これは制限が掛かっているものに対して解放するスキルのことだ。ちなみにシールドスキルは使用を禁止されているだけではなく、仮に使おうとしてもリンクギアがロックして使えないようにしている」

「つまり、シールドスキルも習得が可能ってことか?」

「特定の条件を満たせばな。だからこそ使えないように安全機構が備わっている。そもそも条件が特殊過ぎるという話もあるから、狙って習得することはまず無いらしいが」


 玲也の真月であっても流石にシールドスキルまでは持っていない。封印されるほどのスキルなのだから人体もしくはBDに深刻なダメージを与える可能性は充分にあると玲也は思っていた。


「とりあえずスキルの説明はこのくらいにしておく。今後は四人に使えそうなスキルを紹介する予定だ。香住はともかく、他の三人はまだ特徴を掴めきれていないからな」

「おう、楽しみにしてるぜ」

「は、はひっ」

「僕も気になるね」


 三人からの表情からは期待の色が窺えるのだった。


(あまり過度な期待はしないでほしいが)


 玲也はプレッシャーを感じつつも次の話へ移ることにした。


「次は授業にも出たリンク率について話すぞ。まず聞いておきたいんだが、リンク・インした時のリンク率最大値がいくつか分かるか?」

「そりゃ百パーセントじゃねえのか?」


 玲也の問いに、ロイドは意図が分からないながらも答えた。


「基本的に最大リンク率がいくつになるという問いに対してはロイドの答えた内容で正解だ。まずここで勘違いするBDMが多いのだが、リンク・インによるリンク率最大値は百パーセントではない」


 玲也が四人の反応を見る限り、四人とも知らなかったような表情を浮かべている。


(ま、俺も最初はそう思ってたしな)


 誰もが最初勘違いするだろうな、と思いながら玲也は答えを口にした。


「リンク・インした時のリンク率最大値は七十五パーセントになる。どう頑張っても、これ以上の数値になることはない」

「七十五パーセント・・・、あっ!?」


 香住が何かに気付いたように大きな声をあげた。玲也はその反応を見て、おそらく当たっているだろうなと思いながらも香住に聞いてみた。


「どうした?何か気になることでもあったか?」

「えっと、玲が対戦していた時のリンク率が七十五パーセントだった!」

「流石は香住、良い観察力だ」

「えへへ〜」


 玲也に褒められ、香住の頬がかなりだらしなく緩んだ。そういうところが残念なんだよな、と思っても口に出すことは無いが。


「つまり、リンク率を七十五パーセントより高くするには何か特殊な方法がいるということかい?」

「クレスも察しが良いな。リンク率を七十六パーセント以上にするには『ハイ・リンク』を使用する必要がある」

「ハイ・リンク、か。初めて聞く単語だね」

「だろうな。実際にハイ・リンクを使えるBDMは少ないと言われている」


 玲也も今までそれなりの数のBDMと出会っているが、ハイ・リンクを使えるBDMはあまり見た記憶が無かった。


「そもそも、なぜハイ・リンクが公に知られていないんだ?七十五パーセントで止まるとさらにリンク率を上げる方法を探しそうなもんだが」

「逆だ。七十五パーセント以上に上がらなくなったからこそ、そこが上限だと勘違いするんだ」

「確かにそう思うBDMも出て来るだろうね」


 クレスが納得の表情となったところで、玲也はさらに続ける。


「それにハイ・リンクはさっき説明したリミットスキルに分類される。存在を知るBDMが少なくてもおかしくはないだろう」

「なるほど。そもそもリミットスキルの知名度も低いから、さらに少ないというわけだね。玲也はハイ・リンクを習得出来る条件を知ってるのかい?」

「明確には知らんな。ハイ・リンクを使えるBDMは何人か知ってるが、習得した条件は全員違っていたからな。だだリンク率が七十五パーセントに到達していることが最低条件の一つで、あとはBDのレベル、リンク・イン回数、総リンク・イン時間の兼ね合いが関係しているのは判明している」

「僕達にはまだまだ遠い道のりだけどね」

「まずはリンク率七十五パーセントまで到達しないとな。それに、ハイ・リンクは何も良いことばかりじゃない」

「欠点があるってのか?リンク率が高いとそれだけBDの力を引き出せるんだろ?」


 ロイドが不思議そうに玲也の方へ視線を向けた。


「リンク率が高くなるからこその弊害だな。ハイ・リンクを使うと通常のリンク・インとは感覚が全く違ってくる。それ故に脳の処理量が多く、大きな負荷がかかってしまう。もう一つは感覚が強くなるため、ダメージを受けたときにまるで自分自身が受けたかのように感じてしまうことだ。これでは生身でダメージを受けたのと変わらん」

「・・・ハイリスクハイリターンってわけか。たとえ習得しても使いこなすのは相当難しそうだぜ」

「だろうな。だからこそまずはリンク率を上げていくことから始めてくれ。リンク・インの回数、そしてリンク・イン時間を増やしていくことでリンク率は上がっていくから、鍛練しないときもリンク・インを頻繁にすることをお勧めする」

「そうそう、玲に言われて時間があればリンク・インしてたんだ〜。おかげで今はリンク率六十パーセントまで上がったし」


 香住のリンク率はその方法で上げたものの、注意点があるので玲也は補足することにした。


「ただし急激にリンク率を上げると操作する感覚にずれが出てきやすいから、感覚を慣らしながらしていくのが良い」


 四人が頷いたところで、今日の説明を終えるのだった。




「とても参考になった、ありがとう」


 訓練所を出ると開口一番にクレスが玲也へ感謝の言葉を述べた。


「いや、今日の内容は大したものじゃない。今度からは実戦で使えそうな話をするつもりだ」

「はは、楽しみにしておくよ」


 クレスと話を続けようとした時に、玲也が肩をトントンとされる。


「ん?何だ?」


 玲也が後ろに顔を向けると、香住がニコニコと笑みを浮かべながら瞳を潤ませているのが見えた。


(うわ、何を言われるんだ)


 香住がそのような態度を取るのはお願い事が有る時だという事を玲也は長年の付き合いで知っている。そして、断ろうとしても最終的に断れた試しが今まで一度も無かった。


「ねえ、今週の休みにBDM協会へ一緒に行ってくれないかな?ほら、クラウス先生が授業の最後に言っていたから」


(そういえば言ってた気がするな)


「ああ、良いぞ」


 どうせ断れないことは分かっているので、玲也は二つ返事で了承した。


「ありがと〜」


 香住がお礼を言ったところで、今度は別のところから声が掛かった。


「じゃあ全員で行かねえか?俺も登録してないからな」


 ロイドの提案にクレスとセイラも賛成したので、当日は八時に正門前に集合してから五人で行くことになった。


(何かあっという間に決まってしまったぞ)


 玲也はこっそり一人で行くつもりだったが、トントン拍子に話が進んでしまい口を挟むタイミングを失ってしまった。

 仕方ないかと思いつつ、この後に待ち受けている寮の部屋での荷物整理に思いを馳せる玲也であった。



一章もいよいよ折り返し地点を過ぎました。プロットはほぼ出来ていますので、あとは突っ走りたいと思います。

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