4 エロフ
近所のコンビニの乳製品は高確率で腹を下す不思議な飲み物です。
本部にチクるべきでしょうか。
結論から言うとトイレからの脱出は出来なかった。
いくら強力なスキルとはいえ神の作った牢獄は抜け出せないようだ。
という事で居住性を優先したトイレ機能を追加してみた。
コンビニ:
異世界の小規模商店と取引が出来る。
スーパー:
異世界の中規模商店と取引が出来る。
デパート:
異世界の大規模商店と取引が出来る。
買取所:
ドロップアイテム、素材等の買取が出来る。
これで、とりあえず飢えなくて済むようになった。
余談だが、ドロップアイテムはアイテムボックスに勝手に収納されるようだ。
何故持っているのか分からないが、確認すると龍種らしきもののドロップアイテムが大量にあった。
早速買い物をしてみると、上級龍の鱗1枚が100万Gで売れて、1Gが10円で買い物ができ、買った物はアイテムボックスから取り出せた。
1円単位は切り上がって引かれるようだが、今の勇二にとってはどうでもいい誤差だった。
これに30畳部屋、風呂(大)、システムキッチン(大)を追加した。
追加すると壁にドアが現れて、そこに空けると30畳の部屋につながっており、そこに風呂とシステムキッチンが付いていた。
30畳なんかいらないだろうと思うだろうが、なんせ何を取ってもSP1しかかからないため、後々の事を考えて広めにした。
次に情報を得るための索敵能力と移動能力と攻撃能力。
神のトイレは破壊不可らしいので防御はとりあえず省いた。
神の眼:任意索敵
好きな場所を好きな視力で好きな時間で見ることが出来る。
追跡するもの:複数展開、不可視
目標物を自動索敵、自動追尾する神の目を複数、同時に使用出来る。
神の腕:脳波誘導、外見偽装
金色に輝く神の腕のレプリカ。
神速浮遊:重力制御
浮かびながら移動する。
これに当初脱出を謀った際に取得したスキル、転移と小人化を加えたものが勇二のスキル構成となった。
ちなみに、転移はトイレごと転移し、小人化もトイレごと小さくなったようだった。
名前:ユージ
種族:人族
年齢:26
職業:裏勇者【封印中】
状態:健康
LV:56385
HP:563940/563950
MP:563850/563850
SP:56381
スキル:トイレ機能追加、鑑定、転移、小人化
称号:超変態、大気圏突入、龍の天敵、超越者
トイレ機能追加に関しては追加した機能がブラックアウトし取得出来なくなっていたが、ゴチャゴチャとステータスに反映されるよりはマシだから良しとする。
「これで勝つる!!」
現金なもので能天気な勇二は深く考えない。
いい意味で前向き、悪い意味で馬鹿でしかなかった。
勇二は部屋の模様替えにいそしんでいた。
なんせ30畳の大部屋だ、なにも無いと倉庫と錯覚するほど広く殺風景なのだ。
床は畳の為、ちゃぶ台と座布団セットを購入し置いてみた。
悪くは無いがそれしか無いと凄くシュールだ。
次にテレビ、思い切って100インチのプラズマテレビを購入、だが当然元の世界の番組は見れない。
代わりといってはなんだが、神の眼で見たものを映せる事が分かり、今は暗闇を虚ろに映しだしている。
「広すぎたか・・・。」
小市民な勇二にとって広い部屋は落ち着かないようだ。
「飯でも食いながら考えるか。」
デパートから好物のウナギ弁当とほうじ茶を購入、ちゃぶ台におき一心不乱に食べ始める。
食いながら考えると言ったわりには、明らかに何も考えてはいない。
一度餓死寸前までいった人間はこうも変わるのか。
ガツガツと碌に噛まずに飲み込むように食べる。
ゲフッとゲップをして横になると座布団を枕に昼寝を決め込む。
そして、そのままウツラウツラと夢の中へ。
ダメ人間の見本のような男であった。
昼寝から目覚めると風呂に入った。
ほぼ10日ぶりくらいの風呂だ。
かけ湯をして風呂に飛び込んだため垢の様なものが浮いている。
後で風呂掃除用の洗剤等を買わねばなるまい。
暖かい湯舟につかりながら弛緩した顔でどうでもいい事を考える勇二。
今のところやる気0%だ。
どうせ後で洗うんだからと風呂の中で体をこすり始めたのだが、突如カッと目を見開くと急いで風呂から上がった。
「そうだよ。神の眼があれば覗き放題じゃん。」
碌な事を考えない。
人の世で技術が発展するのは、戦争とエロでる。
そんな格言があったような気がするが、勇二のやる気は瞬時に120%に達していた。
「神の眼と追跡するものを発動。・・・追跡するものは同時に10体までか?じゃあ、神の眼1~10って事にして、1~8までは八方向に向け全速移動、9は垂直に上昇で10はトイレの周りを半径・・・そうだな20メートルで旋回。あとは各自の判断で報告いれてくれ。」
追跡するものに指示を与え、デパートから最高級羽毛布団を買い潜り込む。
やる気はあるが寝る気もある。
しかもコンビニでエロ本を検索し吟味し始める始末である。
「巨乳は外せん。これは真理だ。しかし、ムチムチした尻と太腿も正義だ。・・・。」
ブツブツと言いながら目を細め険しい表情で品定めをしている。
この半分でもいいから仕事に使っていたなら、もっと出世していたであろう。
何冊かのエロ本を購入するべく印を付け、後は支払いボタンを押せば完了という段階で、パっとテレビが光りを放った。
「ホッウ!」
おかしな奇声をあげビクっと体が反応する勇二。
「おばけか?」
キョロキョロと辺りを見回しテレビの電源がつけっぱなしになっていたのを思いだす。
今までは粉塵の中にいたため画面が暗かっただけなのだ。
「ん~?なんだこりゃ?」
見渡す限り青空の元足元には靄が見える。
意識を集中して何番の眼の画像か確かめると9番のものだった。
「って事は上か。よし、ゆっくり視点を下に傾けろ。もう少し・・・はい、ストップ。それで周りを見渡せ。」
鼻の穴をふくらませ、得意気に命令を下す馬鹿。
権力を持たせてはいけない例のような男である。
雲の切れ目から地上を覗くとモワモワした茶色い雲みたいなものが見える。
その中心に自分がいるのだと気付くのには然程時間はかからなかった。
「よし、9番はその高度を維持。視力2万で遠方を観察。人を発見したら知らせてくれ。」
真顔で子供のような命令を下すとニコニコしながら画面を食い入るように見つめる。
そして、目まぐるしく変わる視点に酔い顔を青くする。
「ちょ、ちょっとタンマ。」
口を押えながらヨロヨロとトイレに入る。
馬鹿はどこまでいっても馬鹿である。
だがエロへの執念は凄い、この妄執にも似た執念が発展の鍵なのだ。
顔色の悪い血走った目で再度、テレビを凝視する。
そして見つけた。
視点が固定され徐々に鮮明になっていく。
「エロフー!きたー!!」
勇二大興奮である。
ピンと立った笹の葉のような耳、流れるようなハチミツ色の金髪、美術品のように整った清楚な顔立ち、胸は・・・残念だが、服装越しに感じる女らしい柔らかそうな体の線、正解どころか大正解である。
「9番、視線をエロフに固定。逃すなよ。」
これから旅人を襲う盗賊なようなセリフとともに目を皿のようにしてテレビを見続ける。
「なにか言ってるな。声聞けないのかな~?」
エロフ、いやエルフの娘は誰かとは話しているようだが相手の姿は見えない。
森の中を歩いているのだが勇二が命じたため神の眼はエルフ娘だけを写し続け、時折視界に入る木々や自然が人少なさを物語る。
エルフの娘は綺麗な泉の前まで歩いて行くと腰から外した袋のようなものを沈めた。
常識の無い勇二には分からなかったが、水袋に水を補充しているのでる。
水袋が満タンになると泉から取り出し、辺りをキョロキョロと伺うエルフ娘。
勇二の心臓は大量の血液を送り出し、息子が徐々に硬さと勇気を取りもどしていく。
エルフ娘が上着に手をかけ一気に脱いだ瞬間・・・・・勇二の体にどこからともなく発生した稲妻が直撃した。
その威力は凄まじくテレビは火を噴き大破、勇二は悲鳴すら上げられずに跳ね飛ばされ黒こげのままピクピクと痙攣を続ける。
ここまでの威力をともなっているのに畳には焼け焦げ一つ無い。
「変態行為を確認したため天罰が発動しました。」
荒い呼吸を続ける勇二の耳に合成音のような言葉が届く。
「ま、負けるわけにはいかない!」
想像を絶する痛みの中、数分のインターバルをおいて再度立ち上がる馬鹿。
普段のだらしなさが嘘のような気迫だ。
「俺は、俺達はエロフが見たいんじゃー!!」
ちなみにここには勇二1人しかいない。
架空の第三者をでっち上げることにより罪の意識を軽くするという営業時代に編み出した秘技だ。
100万近くしたテレビは大破、後は己の眼のみ。
「カモン、9番!俺にエロフを!」
だが、勇二の眼に映ったのは水浴び中のエロフではなく、水浴び後のエルフ娘だった。
ヨロヨロと数歩あとずさり、受け身も取れず顔面から崩れ落ちる。
ここに来て最後に残った気力も根こそぎ奪われたようだった。
時間が取れたらもう1話投稿します。