17 スキュラ退治
馬鹿犬がトイレのスリッパを咥えて見せにきます。
俺が一人で飛んでいけば1時間ほどの距離だったが、優雅な船旅のせいでアイナの町まで3日ほどかかった。
道中ちょっとした問題はあったが、概ね順調でアイナは船内で2人だけの女の子ということでリリちゃんと仲良くなっていた。
ドヤ顔であちこち案内するリリちゃんに連れ回され少々グロッキー気味なくらいだ。
そして俺達は今、アイナの町まで数百メートルという地点で船を停泊させていた。
海賊連中に操船技術で負け、仮面に洗脳されかかり、いいとこ無しの水夫達だが腕は悪くないらしい。
「よし、じゃあスキュラ退治といこうか。」
「ユージ殿、スキュラの素材は是非とも私めにお売り下さい!」
普段声を上げぬアキンが興奮気味に叫んでいる。
俺はトイレを浮かせゆっくり船から離れた。
リリちゃんが手を振っているので振り返す。
こっちは六本腕だ負けやしねえ。
船から離れたところで神の眼を1~8を海中に投入。
ヘルスケに命じスキュラ探索を始めた。
探し始めて5分ほどでスキュラを見つけたと報告があがる。
抜けているようで、やる時はやるスキルだ。
「よし、ヘルスケ、捕まえて船の上にへ引きずりあげろ!絶対話すなよ。」
ヘルスケが4本の腕を海中に伸ばしスキュラを捕まえる。
突然襲ってきた腕に驚き逃げ回っていたようだが、ヘルスケは然程時間をかけず捕まえた。
「捕らえました。」
ヘルスケが得意そうに報告してくる。
「よし、やれ!」
俺も何だか嬉しくなりヘルスケに指示を飛ばす。
ザザザザッー、海水をかき分け10メートルはあろうかというそれは姿をあらわした。
下半身はタコの様な足の間に犬の頭のようなものがあり、上半身は金髪の美女?
艶めかしく濡れる体を神の腕が握りしめているため大振りの乳房が変形し卑猥さが増している。
一瞬我を忘れて鼻の下を伸ばしたが、サーッと血の気が引くと共にお約束がきた。
「ガァアアアアアアアアアアア!!!!!!」
速射砲のような天罰の連射が狭いトイレ内で勇二を襲う。
前後左右の壁にのたうつ様に打ち付けられる姿はまるで下手なダンスを踊っているようだ。
最後の天罰がつむじに当たると顔からダイブするように床に倒れ込み、まるで尺取虫のような恰好で動きを止めた。
「し・・・絞れ!」
最後の気力と力を使いヘルスケに命令を下すと勇二は意識を手放した。
どのくらいの時間が過ぎたのだろう俺はトイレの床にキスする形で目が覚めた。
「マスター気付かれましたか?」
「ヘルスケ・・・どうなった?」
「絞りました。」
それはそうだろう。
俺がそう言ったんだから。
「スキュラはどうなった?」
「4つにちぎれました。」
なんとなく想像するとグロい。
床に手を付き、ゆっくりと起き上がる。
いつか死ぬ。
神の眼で確認する。
「アウッ!!」
バラバラになった上半身が見えた瞬間、こめかみにピンポイントで来た。
「上半身は写すな!」
目頭を押さえてぼんやりする頭で再度確認する。
「うわぁー・・・。」
商船の甲板は魔物のどす黒い血とバラバラになった肉片であふれかえっていた。
そんな中で返り血を浴びたアキンが笑いながら水夫に指示をだしているさまは虐殺をおこなった後の山賊の親分のようだった。
「タカノス達はどうした?」
「タカノス様はスキュラを絞りは始めるとリリ様を抱え船内に飛び込みました。アイナ様はスキュラを倒した後、海に飛び込み沈んでいきました。」
いや、沈んだんじゃなくて帰ったんだろ。
俺が船に戻るとアキンが笑いながら話しかけてきた。
「流石、ユージ殿。スキュラを瞬殺とは恐れ入ります。」
それより、水夫達が大変だ。
デッキブラシでこするとかのレベルじゃない。
バケツで溜まった血をかきだしてる。
「あ~船は大丈夫ですよ。洗えばいいだけですから気にしないで下さい。そもそも船上で倒して頂いたおかげで素材が全て手に入りました。」
たぶん、今ならアキンはどんな事にもYESと答えるだろう。
「ユージ、もうちょっと綺麗にできないのか?」
「ユージ、凄かった。」
タカノスはあきれ顔でリリちゃんはニコニコしながら甲板に出てきた。
「すまんな、今回は余裕が無かった。」
俺が素直に謝ったのが変だったのか、タカノスは黙ってしまい、興奮したリリちゃんは飛び跳ねた拍子に転んで返り血だらけになってしまった。
なにはともあれ終わったし、後はザルバに向かうだけだ。
何故か左肩だけ肩こりがします。