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14 船旅

寝ていると飼い犬(室内犬)が上にのってくる。

甘えているのか、自分が上だと主張してるのか分からない。


船旅は順調だったが暇だった。

リリちゃんはあっという間に商船のマスコット的存在になり、おっさん水夫達からチヤホヤされている。

むさい男どもがどこにいっても群がってくる。

そして、タカノスはそれが面白くないらしく、血走った目で監視に余念がない。

あの親馬鹿が付いていたら大丈夫だと思うが、俺もリリちゃんに神の眼を一つ貼り付け、ヘルスケに何かあったら船を破壊してでも助けるように指示をだしておいた。

これで時間が取れたので天罰回避のための情報収集にのり出す事にした。

とは言っても、ここにいるのは基本船乗り達しかいない。

恐らく一番物を知ってるのは、アグレッシブにあちこち動いてるアキンだろう。

という訳で、アキンを呼出し話相手になってもらう事にした。

もちろん助手はヘルスケだ。


「ユージ殿、何か御用ですか?」

「あぁ、ちょっと暇でな。良ければ話し相手になってくれないか?アキンはやり手の商人だから色々おもしろい話を知っているだろ?」

「かまいませんよ。私もユージ殿ともっと話してみたかったので。しかしユージ殿の興味を引くような話といいますと何がありますかな?」

「実は、勇者が召喚されたという話を聞いてな。アキンなら何か知ってないかと思ったんだ。」

はじめは勇者召喚から、これは事前にヘルスケと話して決めた内容だ。

この世界では勇者召喚は歴史に残る一大事件だ。

誰でも必ず知っている。

「はい、はい、だいたい3ヶ月くらい前ですよね。王都の方で召喚の儀が行われ、異世界の勇者様が現れたのは。」

「そうそう、それだ。どんな奴か分かるか?」

「お名前は確かマコー?いやマコト様ですね。確か17歳の男の方です。黒目黒髪で・・・そう言えばユージ殿も黒目黒髪ですね。」

「まあな。もしかして俺も勇者になれるかもな。」

こういった場合は下手に誤魔化すより自分からノリノリでいった方がいい。

営業の誤魔化し方の基本だぜ。

「ハッハッハッ、それはいいですね。ユージ殿が勇者様になれば私は勇者様の御用商人にでもしてもらいましょうかな。」

「まぁ、俺が勇者になれたらな。」

よし!掴みはOK!

「王都に行けば会えるのかな?」

「いや、それはいくらなんでも無理でしょう。召喚後に開かれたパレードでなら見る事くらいは可能でしょうが。」

「やっぱ無理かよ。」

「無理ですな。そもそも今は王都にはいないと思いますよ。魔王討伐の為に召喚に応じて頂けた勇者様といえど、まだ魔王には敵わないため訓練中だという事です。」

「そんな細かい話、よく知ってるな。」

「商人ギルドを通して勇者様の訓練のための寄付を募られたんですよ。半年ほど訓練を積んでから実践に赴くそうです。なにを隠そう私も10万Gほど寄付させて頂きました。」

10万G、たしか1Gが10円だから約100万円か。

多いか少ないか微妙な感じだけど、ドヤ顔で胸をはっているアキンを見るとこの世界ではかなりの額なんだろうな。

「そういや、海賊だけど、最近多かったりするのか?」

「あ~少なくは無いですね。たいていは小舟で乗り付ける輩で多くても10人前後の徒党を組んでいるので無視すればいいのですが、先日のように大型船で襲ってくるのは珍しいですね。」

「とんでもない奴等だな。神様もああいった輩に天罰落とせばいいのによ。」

「悪人とはいえ人ですからね。人は人で裁くようにという事なんでしょう。」

「でも、普通の人ではどうしようもない悪人だったらどうすんだよ。」

「過去に神の怒りにふれて滅んだ国の国王の事ですか?あれはおとぎ話ですよ。国跡もありませんし。」

それから、アキンとたわいもない話を続け、最後にタカノスからの焼き魚は絶対に受け取るなと念押しして別れた。


「ヘルスケ、神の怒りで滅んだ国って本当におとぎ話か?」

「いえ、500年ほど前に神の怒りで滅んだ国が存在します。」

あるのかよ。

「それって天罰で滅んだのか?」

「閲覧権限がないため詳細は不明です。ただ、マスターに落ちる天罰と比べ規模が大きすぎる為、異なる種類のものかと推測します。」

結局、手掛かり無しか。







「人がいるぞー!!!!」

いきなり野太い声が船中を駆け巡った。

「あ、あそこ、子供だー!!!!」

目のいい水夫が叫んだ方を見ると、50メートルくらい離れて人が浮いている。

「ヘルスケ、助けろ!」

船べりから神の腕を伸ばすと、見物人の水夫達から驚きの声があがる。

かまわず、すくい上げ船に引き寄せる。

「おい、大丈夫・・・か?」

声をかけると、それは裸の女だった。

反射的に目をつぶる。

身体を固め、天罰に対する衝撃に備える。

1秒。

2秒。

3秒。

何も起こらない。

「助かったのか?」

目を開けると部屋が煌々と明るかった。

上を見る。

今まで見た事もない輝きが部屋の中空で留まっている。

勇二は本能的に察した。

あれはマズイ。

「いや、今のは人だすギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

普段の天罰が線香花火だとしたら、今度のこれは打ち上げ花火だった。

吹き飛ぶどころかその場から一歩も動けず、ビームの様な光を浴び続ける勇二。

たっぷりと数秒間、光の奔流を浴び続けた勇二はその場にパタリと倒れた。

ピクピクと痙攣するように動く体からは紫煙があがっているがいつもの事である。

特大の天罰を受けた勇二は全等で意識を手放した。







俺がリリに付きまとう薄汚い水夫どもを監視している時だった。

「人がいるぞー!!!!」

野太い声があがった。

リリが船べりに走る。

危ないから走るんじゃない。

クソ水夫どもリリから離れろ!


「あ、あそこ、子供だー!!!!」

再度の叫び声に俺も水面を凝視する。

確かに人らしきものが浮いている。

髪の長さと体型から女か。

だが、何故こんな海の真中にいるんだ。

俺が考えをまとめていると離れた船べりからニューッと棒のようなものが伸びていくのが見える。

あれはユージの不思議な腕だ。

細いくせにやたら力が強くいくらでも伸びる。

あのお人好しの馬鹿はまた何も考えずに罠かもしれんのに助けようとしている。

本当に底抜けの馬鹿だ。

あっ、引き上げた。

「・・・・ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

ユージの絶叫があがる。

やはり、罠だったか。

むさい水夫どもをかき分けユージのもとに向かう。

俺がそこで見たものは、箱からあがるくすぶった煙と全裸で気絶する女だった。



・・・・・なんだ、これ?

休みなのに家の仕事があるのはずるいと思う。

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