第11話 最悪な時間 中編
私は、 今の状況を見て、 ある恐怖を感じた。
それは、 私を助ける為に、 彼が槍のような物を持ち駆けつけてきたときに起こった。
私が、 仲間や人質を助ける為に、 海賊の主から鉄の錠を渡された。 その錠を渡され、 私はそれを首にはめようとした。
だが、 バン! という音と同時に、 横からの強い衝撃が鉄の錠から伝わる。 それにより、 鉄の錠は海に突き飛ばされ、 可愛いらしい音と共に沈んでいった。
当然、 私も、 水夫達も、 敵の海賊らも、 その音に驚き、 振り向く。
振り向いた方向には、 ここにいる者と異なる姿 (人種や服装的な面で) をした20歳程の青年が杖のようなものを構え立っていた。
その彼の杖の筒状の部分から煙が上がっている。
きっと、彼がやったのだろう。 だが………
「カトウ殿……… お主………」
カトウ殿なりの正義で、 私を助けたのだろう。 だが、 私は心配になる。
「船長………、 すみません………、 俺は貴方に迷惑をかけてしまいました………、 本当にすみません………、 ですが……… 貴方を見捨てることはできません!!」
その杖に、 ナイフとしては長く、 剣としては短い刃を杖の先端に取り付けながら、 彼は何かを決心する。
「カトウ殿!!」
「船長! 止まりませんが、 止めないでください!!」
彼は杖を槍のようにして、 海賊の主に向かって走り始める。
「お、 オイ!」
私がそう叫んでも止まらない。
『人質がどうなっても良いのか!!』
海賊の主はそう叫ぶ、 だが、 彼はヨザクラ語しか分からない。 だから、 彼からしてみれば “何言ってんの? この人?” といった程度であろう。
そんなことを思っていると、 海賊の主は人質の少女の首に、 剣の刃を近付けようとする。 すると、 再び “バン” という音が聞こえ、 海賊の主の剣が飛ばされる。
その反動で主は手首を痛め、 手首を押さえる。
「隙あり!!」
そして彼は、 その瞬間を逃がさんと杖で刺そうした。 だが、 それが彼の誤算だった。 彼が主を刺そうとした瞬間、 ある人影が物凄い勢いで甲板に上がり、 カトウ殿の横に停止する。 そして、 美しい刃をした剣を鞘から取り出し、 カトウ殿の両腕の関節部分に向けて、 剣を振った。 そして、 影は己の剣を鞘に納めた。
カトウ殿は主に避けられ、 そのままメインマストに、 杖を刺した。 彼は即座に杖を抜こうとした。 だが、 抜ける事が無かった。
そして、 その場にいた全員は彼を見て固まってしまった。 だが、 本人はそうではなかった。
「お、 俺の腕が無くなってやがるゥゥゥゥゥ!!!!!!」
彼は見た光景と感覚により、 思わず叫んでしまっていた。
人質は、 彼の叫びにより、 目を覚ましたが、 目の前の光景により、 再び気を失った。
そして今の状況に戻る。
私は、 カトウ殿が両腕を失い叫んでいる間、 あの人影の剣術に恐怖を感じた。
おまけ
『作者……… お前、 鬼畜だな………』
『私もそうだと思います………』
「お前ら………、 異世界に行ったら誰もがチートになれたり、 ハーレム築き上げることが出来ると思うか…………?」
『『…………いえ………』』
「そうだろ、 この作品の主人公はあくまで、 人一倍のガッツを持っていて、 そこそこ狙撃能力が高いだけで、 それ以外はただの人間になんだ(そのうち追加するかも知れないが)」
『だが、 いきなり腕は………』
「まあ、 次回をしてなって」