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気になる人と言われて

同期のスター社員からの意外な発言。真由美の運命はいかに!

 織部おりべじゅんは営業の仕事を中心に行っている。私の中でなぜ呼び捨てかというと、苦手で関わりを持ちたくないからだった。織部は、仕事も出来るし精悍せいかんな顔つきをしている。そして厄介なことに古株の私に対しても遠慮なく近づいてくる。


 新入社員の歓迎会の二次会でも、織部は参加者の中心に居た。そんな奴を、遠巻きに見ていた。私はお酒も弱いし、普段は付き合いもいい方ではない。社会人初の歓迎会だったので珍しく二次会まで参加したのだ。それに対し織部は陽気で自信家のように見受けられた。私の勘は当たるのだ。


♦♦♦♦♦♦


「俺、矢野さんのことが気になっているんです。猫背で、自信なさげ。一見さえないように見える。能ある鷹は爪を隠すというけれど、矢野さんの仕事は手速く正確。気配りも出来る。ただ気にくわないのは、俺に関心がないこと。貴女みたいに自分に好意を寄せない女性なんて久しぶりなんですよ。嫌味に聞こえるだろうけれど俺は正直もてる。その大半は見た目に惹かれている女性がほとんどだ。だから貴女は逆に信頼出来る」

 私は同期のスター社員の意外な発言にあっけにとられていた。だがアラサー女は簡単に流されない。


「織部君は、自分に言い寄ってこない女性が珍しいだけでしょ。私に関心があるとは思えない」

「そういう芯の強い所こそが魅力なんです。以前は付き合っている男がいたみたいだけれど、現在はうまくいっていないと感じていたのですが……。短い間に様子が変わりましたね。何があったんですか?」

「私のことに、興味本位で口出ししないで下さい」

 彼の発言を切って捨てた。

 

 だって、私はさえないお局さま。好奇心で手を出されてもきっと傷付くだけ。まだ癒えない傷が疼く。

「誰が、矢野さんをそんなに臆病にしたんですか? 興味本位じゃないんです。貴女のことを知りたい。なにせ入社したときから気になっていたんだから」

 織部は眉間にしわを寄せて苦し気な顏をした。言い過ぎたのかもしれないが、中途半端な返事はしたくなかった。

「織部君、あなたとは住んでいる世界が違う気がする。もっと君に似合う人は他にいると思う」

 とはっきりと伝える。


「矢野さん、俺はあきらめませんから」

 奴は私の目をじっと逸らすことなく見つめ宣戦布告し、踵を返すと仕事に戻っていった。


 帰りの地下鉄に揺られながら、疲れを感じていた。今日は恋愛短編集を読む気力もなかった。現実は小説とは違いままならないものだ。なんで、織部は私なんかのことを気にしているのか。そして、帰宅すると本日の顛末をメールでヒギンズ教授に報告したのだった。












今回は、面白くなっていると嬉しいです。

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