大切な人々Ⅱ
更新出来ました。少し、展開の整合性をとる為間が空くかもしれません。ごめんなさい(._.)
最近、お化粧も上手になった。以前は、自分の顔を飾ることが目的になりがちだった。今は、いかに他人に落ち着いた印象を与えられるかを主眼においたメイクに変わった。肌のベースの色も明る過ぎないようにワントーン落として、口紅もベージュピンクを使用する。デイリーメークが定まってきた。
ボブからセミロングになった髪をブラッシングしながら鏡の中の自分を見ると、力が抜けて落ち着いた表情の女性がいる。電車の中で読む本を選んで、アパートを出る。日の光が眩しい。私は、ハイヒールを履いて駅に向かって歩いて行く。嫌いだった月曜日、出勤するのが楽しくなった。
『空色のハイヒール』は特別なアイテムだ。いつか違う靴を自分で選ぶだろう。それでも一緒に靴を選んでくれた日の教授は、素敵な紳士で私に扉を開いてくれた神様のような人だった。足元を見るとそれを思い出す。
私たちの関係は完全な師弟関係だった。近頃は少しだけ変化している気がする。教授に反発したり、意見したり私は生意気になったのだろうか。それでも彼との距離が近付いて、これまで見えなかったものを感じ取る力が付いたと感じている。そう電車の中で思いを巡らせていた。
執務室に同僚を見付ける。
「おはよう、織部君」
私から挨拶する。織部君も
「矢野さん、おはようございます」
と片手を上げて答える。彼は、折目の付いたカラーシャツにビビットな色のネクタイをしていた。整った顔と長身で痩身の体躯にスーツが良く似合っている。改めて見れば、美男子なんだなと感心しながら、自分のデスクに座った。続いて、岡本さんが出勤してきた。
「矢野先輩、おはようございます。今日からまたウィークデイですね。憂鬱ですが先輩がいると私頑張れるんです。不思議ですね」
と笑いかけてくれる。可愛い後輩の微笑に心が温かくなる。私も織部君や岡本さんがいるから頑張れるんだよと心の中でこぼしながら、
「岡本さん、ありがとう。とっても嬉しいよ」
と照れながら返す。二人がいてくれて良かった。人付き合いに勇気が持てるようになったのは、彼らの存在が大きい。臆病で傷付きやすい私に好意を示してくれて、辛いとき一緒に過ごしてくれた。
いつも通り仕事を終えて帰ろうとしたら、岡本さんが深刻そうな顔で私をみつめる。どうしたんだろう? 私は心配になり帰宅に向かう足を止めて、
「岡本さん、たまにはお洒落なカフェでケーキセットでも食べない? 私いい店見付けたんだ。なかなか一人じゃ入れなくて。付き合ってくれると嬉しいんだけど」
と誘ってみる。岡本さんの表情が曇り空から青空のように変化する。
「いいんですか! 是非、矢野先輩と一緒に行きたいです。ケーキ食べたかったんです。それに実は相談したいことも……」
やっぱり誘って良かったと心底思った。二人で道すがら話しながらカフェに向かう。普段滅多に弱音を漏らさずに頑張っている彼女が何に対して困っているのかとても気掛かりだったのだ。だが、私たちは大人だからカフェに着くまではたわいない世間話ばかりを続けていた。
読んで下さってありがとうございます。




