初めての恋人
書くのが難しい回でした。
飲み会をきっかけに一緒に喫茶店に行ったり、公園で遊んだり楽しい時間を過ごすようになった。映画館ではラブストーリーを観て、涙でぐしゃぐしゃの化粧の崩れた私に、
「真由美さんはしょうがないな。でも僕はそういう顔が好きだな」
って言ってくれたっけ。
ある日、彼が私の住まいを見たいと言った。男性を家に上げたことのない私は戸惑った。軽い女だと思われるんじゃないか? まだ知り合って一ヶ月だった。
「真由美さん、衣装ケースはこの位置でいいかな?」
優輔が尋ねる。初めて彼が私の部屋に来た日、一緒にホームセンターと百円ショップをはしごした。片付けが下手で物で溢れた空間を、購入した便利グッズですっきりとカスタマイズしてくれた。彼と知り合った頃、私はすでに一人暮らしをしていた。
初訪問から彼が帰宅して、私はもっと一緒に二人で過ごしたいと自然に思っていた。幸いにも優輔は私のアパートに遊びにときおり来るようになった。どちらからともなく、意識し合っていた気がする。
ある日、台所で彼の好きなチキンカレーを作っていると、
「僕は真由美さんが好きです。あなたといると心地がいい。ずっと一緒にいたい」
いつの間にか彼が後ろに立っていた。私は首に手を回され、びっくりしてお玉を落としそうになった。
「私も優輔が好きだよ。ずっと一緒にいられたらと思っていた」
天にも昇る気持ちってこういうものなんだと彼の告白を心底喜んだ。
しばらくして彼がスーツケース一つ分の荷物を持ってきて一緒に暮らすようになった。当時私は就職したばかりで、彼はまだ学生だった。
同じ家から、それぞれの職場、大学に出発する。家を出る前に、唇を重ねるとそこから力が湧いてくる気がしていた。帰宅して一緒にテレビを見る日もあったし、お互い静かに読書にふける夜もあった。
一緒のベッドに入っても男と女の関係はなかった。スキンシップはあったが、彼は私に身体の関係を迫ることをしなかった。彼の温もりが側にあることが、その頃の私には何より大切だった。
あの大切な日々、なぜ優輔の気持ちの変化に気付けなかったのだろうか。
彼に頼り過ぎるようになったのはいつだったか。自分がだんだん彼に依存していったことを思い出して胸が痛む。不器用で視野の狭い私にはもったいない人だった。別れた後で知ったが優輔は資産家の一人息子で、私と暮らすためにご両親と喧嘩して家を出てきたそうだった。
読んで下さってありがとうございます。




