鏡の中の私
プロット裏設定作ってみました。
ヒギンズ教授に認められたいという気持ちは、相変わらず私の中で強かった。
対して職場での人間関係には、徐々に明るい兆しが見えてきて、以前程日々が仕事一色ではなくなっていった。今日も、岡本さんと織部君と三人でたまのランチということで会社近くの喫茶店に向かっていた。
「織部先輩が引くことを選べるなんて、私思いませんでした」
岡本さんが軽口を叩く。
「君は、可愛いいだけの子だと思っていたけれど、とんだ毒入り林檎だったな。びっくりだ」
織部君も負けていない。でも棘がないことは目が笑っているので直ぐにわかる。
「矢野先輩、毒入りだって、酷いですよね」
そう言う彼女に私は、
「そうだね、じゃ今日はナポリタンセット織部君の奢りで」
と冗談めかして彼にウィンクした。
「えーっ、勘弁して下さいよと断りたいところですが、矢野さんのウィンクに免じて奢ります」
彼は堂々と答えた。
店内に入ると岡本さんが、この店で一番美味しいと評判のナポリタンスパゲッティとアメリカンコーヒーのセットを三人分頼んでくれた。いつも繁盛しているお店で賑々しい店内が心地良い。何より気の置けない仲間と来れたのが嬉しいかった。
思えば私は人との関わりを面倒に思うようなところがあった。だからきちんと悩みをぶつけられる友人も職場には居なかった。ヒギンズ教授との出会いを境にして私の生活は変わったものだ。
三人分のランチセットが運ばれてきた。ケチャップのいい香りが食欲をそそる。流石看板メニュー、安定の美味しさだった。食事中、岡本さんと織部君の明るさに仕事の疲れも忘れられた。
会社に戻って、トイレで化粧を直しながら鏡に向かって下手な笑顔を作ってみる。最初は笑えない状況で心が追い付かないときも、笑顔を作っている間に気分が明るく楽しくなるから不思議だった。
これも、ヒギンズ教授に習ったことだったな、目が潤む。もう、馬鹿だな。いつまでも教授のことばかり追いかけていても、彼にとっていい生徒にはなれないのに。
何より、私を心から心配してくれた同僚二人と共に楽しく生きてみてもいいのではないかと思うのだった。
私は恋に恋していたのかもしれない。まだ不安気に揺れる眼差し。でも笑みを浮かべた、雰囲気の柔らかな女性の姿は嫌いではなかった。
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