失恋記念日
朝がやって来た。布団の温もりが身体を包んで心地よい。起きたくないなと、この心地よさに浸っていたいと思ってしまう。とはいえ目覚ましはいつもの時間に鳴る。どうにか起床し、顔を冷たい水でバシャバシャと洗う。鏡を見ると目が少し充血している。昨夜のことが胸をかすめたが、私は気持ちを新たにしていた。
手帳の昨日の日付に『失恋記念日』と書き込んで、そしてスペース部分に『私は変わる』と書き込んだ。
通勤電車に揺られて、新しい文庫本を読みながら車窓の景色を時々見つつ、だんだんと日常に自分が返っていくのを感じていた。
会社に着くと岡本さんが元気に、
「おはようございます、矢野先輩」
と声をかけてくれ、その可愛らしい顏に何だか救われた。
「おはよう、岡本さん。今日はまだ眠くって」
とこぼす。
「矢野先輩、大丈夫ですか。少しですが、目が赤いです。気を付けて見なければ分からないですけど」
「そうかな、実は昨日辛いことがあって。もう大丈夫なんだけどね」
私は彼女を安心させるために、ぎこちない微笑を作った。
「先輩、私にはあんまり気を使わないで大丈夫。だから一人で抱え込まないで下さい。辛くなったら、何でも話聴きますから」
岡本さんは心から心配してくれているようだった。思いやりが嬉しかった。話せるときが来るといいなと思っていた。
今日も、たくさんの書類と格闘していたらあっという間に昼休みがきてしまった。いつものように休憩室でお昼を岡本さんと食べる為、まだ余り上手く出来ているとは言えない手作り弁当を鞄の中から出した。
休憩室に入ると、岡本さんが席をとっておいてくれたようで手招きして私を呼んでくれた。相変わらず彼女のお弁当は、彩りも鮮やかで栄養のバランスも良さそうだった。流石だなと感じる。
私はまだ小難しい料理は作れず、ハンバーグとか、唐揚げとか、生姜焼きとかをメインに据えて、プチトマトやサニーレタスで色合いをごまかしていた。煮物などはなかなか入れられないのだった。今度の休みに弁当のおかずを作り置きしようかと思ったりしていた。
「矢野先輩のお弁当段々にぎやかになってきましたね。元々素敵な先輩でしたが、最近は少しずつ洗練されてきたというか……。後輩がこんなこと言ったら生意気でしょうけれど、先輩が生き生きしていると嬉しいんです」
「そうかな、私は変わったかな? 岡本さんは生意気じゃないよ、心配してくれてたんだね。ありがとう」
私の言葉に、彼女は向日葵のような笑顔を向けた。
やっと更新出来ました。待って下さった方本当にありがとうございます。




