BADEND
いきあたりばったりでばったり逝きました。
「君が……大吉君だったかな? 妹を無事に連れてきてくれて本当にありがとう」
メルヴァンと名乗った男はキャロルの兄だった。
成る程、髪の毛も同じ銀髪だしはっきりした目鼻立ちも――多少痩せ過ぎな所を除けばキャロルと似ている印象を受けた。
そしてメルヴァンは少々済まなさそうな顔で口を開いた。
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「つまり、ただの悪戯だったという事か」
俺の言葉にメルヴァンが苦笑する。
「悪戯、とは少々違うんだが儀式を知らない者にとってはそう取られても仕方がないだろうね」
メルヴァンが申し訳なさそうにうつむくキャロルの頭を優しくなでる。
「……ごめんなさい。私が早とちりしなければこんなことに」
キャロルは先程から俺たちや村人に対して謝りっぱなしだ。
それを見ていると流石に怒る感情は湧いてこない。
それは村人も同じで皆、優しげな眼差しでキャロルに接している。
「よかった、魔物に襲われている村はなかったんだね」
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結局の所、『儀式』とやらが何なのかは具体的には教えてくれなかった。
メルヴァンにしても村人にしてもキャロルでさえも外に人間には教えてはいけないとの一点張りで。
「まぁ、大吉君がキャロルと結婚してこの村に住んでくれるのであれば教えてあげられるんだがね」
「「「「!!!」」」」
メルヴァンの言葉にキャロルを始め、冒険部の空気が多少ざわついたがなにはともあれ俺達は丁重にキャロルの村から送り出された。
村人総出の見送りの中でもキャロルは最後までぶんぶんを手を振っていた。
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森の中の小道をのんびりと歩く冒険部の面々。
「まぁ、でも良かったね。あの炎も子鬼の死体も壊れた建物すらも全部魔法で作った偽物だったんでしょ?」
「そうだな、その点については同意するが……」
「暴れ足りないつーか、何もしてねーからなぁ」
「でもぉ、キャロルのお兄さんから貰ったアクセってきちんと鑑定してみないとわからないけど多分、伝説級だと思うよぉ。
お金持ちだよねぇ……ほいっ」
織姫が投げ寄越した革袋の中には鈍色をした小さな指輪が幾つか入っていた。
うーん、やっぱり鑑定前だと全然わからんな。ほいっと。
「ふぁっ!? そ、その様な高価な物を投げるでないッ!!」
俺が投げた革袋を天が慌ててキャッチする。
「天、宿に帰ったら鑑定頼むな」
「む、勿論だ。我の鑑定眼はこの世のありとあらゆ……」
……………問題は全て解決した。
状況を素直に受け入れるとそうなる。
じゃあ、素直に受け入れなかったらどうなる?
例えば、キャロルの兄が嘘をついているとか。
狂言なんかじゃなくて村の襲撃は本当にだったとしたら?
冒険者ギルドに来たキャロルの切羽詰まった眼差し。
あれは本当に悪戯に騙されてできる様な代物だろうか?
いや、そもそもキャロルの兄は本物だろうか?
ふむ、不安になろうと思えばいくらでもなれる。
だが、そこまでして疑う価値があるだろうか。
勿論、取り越し苦労であればそれに越したことは無い。
一日か二日、無駄にするだけだ。
その無駄に過ごす時間もまた楽しいものだろう。
1 このまま帰る。
2 村に引き返す。
俺は選択をした―――――
俺たち冒険部はいつもの宿屋に帰りいつも通りにみんなで楽しく夕食を食べ、ふざけ合い、満足して眠りについた。
その夜、キャロルの村から溢れ出した瘴気はこの世を包み、世界を一夜にして滅ぼしつくした。
夜は二度と明けることはなかった。
――― BADEND ―――
話がこれ以上膨らまないので打ち切りました。
読んでくれてありがとうございました。




