冒険者ギルドでのよくある一コマ
テンプレキャラ同士の絡みとキャラ固め中
「さって、今日もおいしい依頼はあるかなー?」
伊邪野 那美が冒険者ギルドの木製の扉を勢い良く開ける。
途端に大勢の人たちが織りなす無秩序な喧騒に包まれる。
正面の受付カウンターでは受付嬢と冒険者達との会話が溢れ、その横にある大きな掲示板には所狭しと張り出された各種依頼の数々が踊る。
その奥にはたくさんのテーブルと椅子が用意されており、大声でパーティメンバーを募集する人たちや既に依頼を達成して戦利品や報酬の分配をしている人たち。
更には殴り合いの喧嘩もしている人達もおり、それを肴に飲んだり歌ったり賭けに興じる人たちも大勢おり活気溢れる空間が存在していた。
そんな中に俺たち冒険部のメンバーが一歩踏み入れるとその空気が一変した。
少しでも良い条件の依頼を得ようと受付嬢と一生懸命交渉している戦士も他のライバルと依頼紙を奪い合っている獣人達も、テーブルの上で骨付き肉にかぶりついている小さな妖精も。
でかいジョッキを傾けてグビグビと火酒を喉に流し込んでいる髭面の小柄な戦士も今、まさに殴り合ってクロスカウンターの体勢になっている上半身裸のマッチョな男達も。
一斉に俺たち冒険部の方に目を向ける。
「ふふん、どうだ見たか貴様達よ。我が魔眼が醸し出す魔王色の吐息にかかれば幾千人とも幾万人を虜にすわにゃぁあ!」
「はいはい、そこで立ち止まると邪魔だからどっこいしょっと」
五柱 天が入り口で立ち止まり、眼帯の前でなにやら妙な指の形を作りながらポーズを取ろうとするのをいつのもように那美が小脇に抱えながら店内に連行する。
天がじたばたと手足をばたつかせながら抵抗するが悲しいかな小柄な天が那美の馬鹿力に叶う道理も無い。
やれやれとその様子を見ていた俺だがふと抱えられている天と眼が合う。
(たすけろ)
(なんで?)
(おまえは我が第一の下僕であろう)
(そんなものになった覚えはない)
(ぐぬぬぬ、貴様は魔王の逆鱗にふれたぞ)
(あーはいはい)
(貴様、この魔王をそこまで侮辱するとは……本当にいいのだな?)
(あーはいはいはい)
アイサインで何やらたわ言を抜かしてくる天にぞんざいな返事を返す俺。こういう時はとっとと強制排除しないと日が暮れるまで何やら妙な小芝居が始まるんだからな。
と、そんな事をぼんやりと考えていた俺の前で天が自らの眼帯に手を掛ける。
「なっッッッッ!?」
しまった、と思った時には遅かった。
一瞬にして世界は光に包まれた。
「ぐうぉぉぉおおお、眼がぁぁあああ、眼がぁぁあああああッッッッッッ!!!!!!」
天が眼帯を外したその瞬間に姿を表したのは金色の眼。
まるで竜の眼の様に縦に細長い瞳孔がギラリと揺らめいた瞬間に極太の光のビームを俺の顔を直撃したのだ。
夜中に対向車のハイビームの直撃を食らったかの様に俺は眩しさに身悶えごろごろと大地を転がった。
「ふははははは、貴様如きが我に歯向かうなど千年、いやいちおく万年早いわ、たわけが」
全く無い胸を反らし勝ち誇る天。
「これに懲りたらおとなしくふぎゃぁああああああッッッッッ!!!!!!!」
スパァンッ!! と小気味いい音が響いた。
「こーら、天。懐中電灯を人の顔に向けたら駄目だって教わんなかったのか? 大吉の眼が悪くなったらどうすんだよ」
「こっ、こらッ、那美。我にッ、ひぐっッ、ふぎゃッ、や、やめッ!! わかったからッ!!、にゃぎゃッ! ひッ!! にゃにゃッ!!」
スパァンッ、スパァンッと小気味いい音が鳴り響きその度に天が悲鳴をあげ抗議の声をあげる。
こちら側からは見えないがおそらく那美が天のお尻をバシバシと叩いてお仕置きをしているんだろう。
「わかったな? もう二度とそんな事すんなよな?」
「うっ、ひっく、ぐすっ、ごめ、……ごえんなさい……ぐすぅ、もうしません……ひっく」
すっかり泣きべそになった天を那美がようやく解放する。
「うわぁぁあん、那美がいじめたぁぁああっ」
天が泣きながら咲耶の胸の中に飛び込む。
それをよしよしと頭を優しく撫でながら微笑む咲耶。
この冒険部の副部長にして幼馴染である木花 咲耶だ。
「でも大吉ちゃんも悪いのよ? わざと天ちゃんの魔眼避けなかったでしょ?」
ぎくっ
「え、……いやいやいや、そんな光の速さで飛んでくる光とかよけられるわけねーだろ?」
俺の言葉にジト目で返してくる咲耶。
「それに天ちゃんの魔眼が出る瞬間眼を瞑っていたでしょ? 私見てたんだからね」
ぎくぎくっ。
こ、こいつ……毎度の事ながらよく見てやがる。恐るべし幼馴染アイ。
「えー、まじかよ大吉。やるじゃん」
「何がやるじゃんだ、この馬鹿那美がっ。無罪な我をその凶悪無骨な手のひらで打ち据えた罪。万死に値するぞ」
「天ちゃん? でも大吉ちゃんにピカピカピカーしたのはほんとでしょ? 流石に目に当てるのはやっぱりよくないと思うな」
「ぐぬぅ、……わかった次からは気をつけようぞ」
「zzzzzzz、……えっ、あ、もう終わったぁ?」
立ったまま寝息を立てていた星ノ空 織姫がぽわんとした声音で話しかけてくる。
うーん、と軽く伸びをしているその姿は寝起きそのもの。
しかし、高校の制服を軽くアレンジした冒険部のコスチュームだが織姫だけはサイズが合わないので(主に胸の採寸が)お裁縫が得意な咲耶がかなり余裕を持って直した筈なのだが……。
今にもはちきれそうな程の胸元は気にしないように気をつけていてもやっぱり眼を奪われてしまうわけで。
んで、そんな時必ず視界外から咲耶の責める様な視線を感じる訳で。
それをごまかすように俺は冒険者ギルドの中に一歩足を踏み入れた―――




