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銀河魔兵戦記・ゼロ無双

作者: 柊柳

最近、書く暇がなかったのでリハビリ代わりに書いてみました。

まあ、雑設定だし斬新さも欠片もないから目に留まることはないと思いますが……。


こんな設定で誰か書いてくれませんかね。もっと上手い人が。

 星空開星の期待を撃ち落そうと敵チームから一斉にマテリアル砲が放たれる。

 敵の機体はどれもそうとうの金額が注込まれた高スペックな機体だ。たとえ操縦者が未熟な若者であっても機体性能のお陰で繰り広げられる魔力のよる砲術は絶大な威力を誇るであろう。

 三機とも長距離をメインとしてカスタマイズされた機体であるらしく、両肩に二つ、両腕に二つ、両脇に二つの砲塔が備え付けられている。マテリアル砲の種類は散弾型。六つの砲塔から放出された魔力の光は無数に枝分かれして、光の雨となって我が愛機に襲い掛かる。


「くそっ」


 四方八方から襲い掛かる光の雨は、一発一発が強力である事は偵察したおかげで知っている。紙装甲の愛機では掠っただけで確実にエスケープが発動してしまう。たった一人だけのチームである俺が落とされたら最後。それは絶対に避けなくてはいけない事だ。


「お前なら避けられるだろ、ゼロ!」


 俺の呼びかけに答えてくれた零式戦闘機、通称ゼロ戦が回避行動をとり始める。

 神経伝達を直結に繋げ、意のままに機体を動かす神経直結システム、別名インパルスのお陰で俺が思ったとたんに機体が宙返りを始める。

 先ほどまでゼロ戦がいた空間に五条の光が通り過ぎる。無事にやり過ごせたかと思うと、全ての弾はゼロ戦が宙返りした同様の軌道を描いて、再びゼロ戦目掛けて襲い掛かってきた。どうやら、この散弾マテリアル砲は追尾システムを施されていたらしい。弾丸が目標に着弾するまで何度も追いかけてくる厄介極まりない攻撃手段だ。


「っ!?」


 後方から第一波が流れ込んでくる。機体をロールさせて何とか回避させる。だけど、通り過ぎた第一波は再び旋回してくるのだった。


「くっ。これではじり貧だ」


 第二波、第三波と小回りの利くゼロ戦の性能を利用してやり過ごすのだが、何度避けても敵のマテリアル砲は再び襲い掛かってくる。いかに機動力に優れたゼロ戦であっても、操縦者が未熟な俺では避け続ける事は難しいだろう。


『カイセイ。このままでは攻撃する間もなく落ちてしまうわ』


 通信機越しからチームオペレータが「どうにかしろ」とオーダーを出してくるが、うまい方法が見つけられない。そもそも、カイセイは戦闘機を操作するのはまだ日も浅いし、ましてや宇宙空間でゼロ戦を駆る経験など今回を入れて二回目だ。起死回生の一手を注文されても、素人同然のゼロファイターには酷な話と言うものだろう。


『聞こえますか、カイセイ』

「姫さん。っとぉ!?」


 機体を横転と同時に機首上げ――俗に言うバレルロールを行い、三度襲いかかる散弾型マテリアル砲を掻い潜る。後一歩反応が遅れていたら、カイセイのゼロ戦は撃沈されていた事であろう。


『いい、カイセイ。よく聞いて。その付近に小惑星帯が見えるわね』

『小惑星帯? えっと、マップオン』


 右半分にこの宙域のデータを表示させ、姫さんが言っていた小惑星群を検索させる。

 結果は直ぐに表示され、直ぐ傍に無数の小惑星が帯状になって広がる小惑星群が確認出来た。姫さんが言っている小惑星帯はこの事であろう。


「見えたぞ、どうするんだ!?」

『そこに逃げ込めば、いくら高性能な追尾システムでも全ての小惑星帯を回避させることはできません』

「つまり、小惑星を盾にして逃げ延びろという訳か。無茶を言う」


 確かに有効手段化もしれないが、それはパイロットがベテランの時の話になるはず。

 素人当然のカイセイがあの小惑星群を掻い潜るには賭けに等しいはず。

 オーダーを出した姫さんも自分がどれだけ無茶な注文をしているか分かっているつもりであった。しかし、これぐらいの事をしなければ今回の闘いに勝利するのは難しい。

 四の五の言っていられる状況でもない事はカイセイも理解しているつもりだった。


『すみません。けど、それ以外の方法は――』

「ないって言うんだろ。なら、やるしかないってか。ったく、やれるよなゼロ!」


 康応したゼロのスピードが加速する。全身に朱色の輝きを纏わせて、一直線に小惑星帯に突っ込む。それを追って無数の散弾マテリアル砲も追いかけるが、第一波を初め、第三波までの散弾マテリアル砲は針を縫う様に駆け抜けるゼロ戦の軌道に追い切れず、小惑星にぶつかり四散する。


「あがくんじゃねえよ、戦闘機風情が!」


 百発百中の自慢のマテリアル砲が当たらないことに苛立った相手チームの一機が砲塔を構えたままゼロ戦に近寄ってくる。今度は六つの砲門はもちろんのこと、コンテナをモチーフとしたバックパック及び胸部のカバーが開かれる。奴の目的は近距離からの全武装によるフルアタックであった。


「とっとと落ちてしまえ、ロートルが!」


 六門による砲撃とバックパック弾倉、それに加えて胸部から無数のロケット弾が放出される。ゼロ戦を覆い隠さんと勢いよく放たれたロケットランチャーの雨が回避行動を制限されてしまった。普通ならば弾丸の雨によってあえなく撃沈されていたであろう。

 けど、彼らは知らない。カイセイには唯一使用が許されているパイロットスキルがある事に。

 さぁ、相手に度肝を抜かせてやろうか。見逃すんじゃないぞ、と息巻く。


「悪いが、そう簡単に落とされる訳にはいかないんだよ!」


【アルクスター・ドライブ起動】


 カイセイがこの世界に来て唯一得る事が許されたパイロットスキル【アルクスター・ドライブ】を発動される。


「なっ!? なんだと!」


 攻撃を繰り出した敵が驚愕の声を上げた。

 当然だろう。何せ、敵からしてみれば瞬きをした直後にカイセイのゼロ戦が忽然と姿を消したように見えたはずだ。ご自慢の探索レーダーにも感知されていないはず。

 事実、カイセイの唯一のパイロットスキルである【アルクスター・ドライブ】は直径十メートル間を自由自在に空間移動出来る特技技法だ。そう簡単に見破られたら困る所の騒ぎではない。


「上だ、チェスター!」

「遅い!」


 独断先行をした仲間の援護に来たのだろう。攻撃をした敵の上空に空間移動したカイセイは、無防備な敵の機体にありったけのマテリアル弾を浴びせる。威力は奴らのマテリアル砲に比べたら大した程ではないが、無防備に攻撃を受けてただで済むような軟な攻撃ではない。

 カイセイのゼロ戦が放ったマテリアル弾は敵のバックパックに着弾すると、盛大に爆発が起こった。どうやらバックパックのロケット弾に引火したのだろう。機体の動力源とされているマテリアルコアから解き放つマテリアル砲やマテリアル弾と違い、追加武装のロケット弾が実弾である事が災いしてしまったようだ。ご自慢の魔兵機は木端微塵に爆散し、緊急脱出マテリアルプログラム、エスケープが発動された。


「よ、よくもチェスターを!」

「死んでいないだろ、あんたのチームメイト!」


 このゲームで仲間がやられたのは初めてなのだろうか、加勢に来た敵はありったけの攻撃をゼロ戦に放つ。けど、ろくに標準を合わせていない攻撃など機動力に優れているゼロ戦が当たるわけがない。弾幕を潜り抜け、光の雨を掻い潜り、敵に目掛けて一直線に突っ込んでいく。


「はっ! バカめ。火力と装甲に優れたこのジオットに特攻しても――」

「んな訳ないだろうが」


【アルクスター・ドライブ起動】


 再びアルクスターが発動する。アルクスターの効力によって特攻を仕掛けたゼロ戦が一瞬にして姿を消し、敵の長距離使用、重装魔兵機ジオットの背中から爆発が起こる。

 特攻と見せかけて、アルクスターで背後に回ったカイセイは、ありったけのマテリアル弾をジオットのバックパック目掛けて射出したのだった。狙いはバックパックに搭載されているロケット弾。敵の弾丸を利用して火力不足と言う欠点を補おうと試みたのだった。


「くっ。なんだよ、そのスキル。反則もいいところだろうが!」

「金にものを言わせて、魔兵機を魔改造しているお前らに言われてくねえよ」


 流石は装甲が厚いと自慢するだけあって、今のマテリアル弾で行動不能にまでさせることは出来なかったらしい。先ほどと同様にパックパックに備わっているロケット弾に引火させられればと思ったのだが、そうそう上手くいくわけがなかったようだ。

 次の一手を考えている俺のモニターに危険信号のシグナルが表示される。どうやら、後方で待機していたもう一体のジオットが何やら企んでいるようだ。敵のマテリアルゲージが異常値を示している。


「クラース! 俺の【ラスターカノン】で仕留める。お前は奴の動きを制限させろ」

「りょ、了解!」


 後方のジオットは全ての武装を解除させる。その意図を見極めたい所であったが、目先にいるジオットの砲撃を回避する事で手一杯で分析する余裕はない。


「おらおら、どうしたよゼロファイターさんよ。ご自慢の飛行技術で俺のジオットを倒して見ろよ!」

「っ。そんな挑発には乗らねえよ!」


 バックパックから放たれる弾丸の暴風をよけながら、妙な動きを見せるジオットに近寄ろうと操縦するのだが、敵も近寄らせまいと弾幕を張って対抗して見せる。


「くっ。アルクスター・ドライブを使えば簡単だが……」


 カイセイのパイロットスキル、アルクスターは一回の戦闘で三回しか使うことが許されていない。先ので既に二回使ってしまった故に、この戦いでアルクスターは後一回しか使えない。

 敵を落すにはアルクスターの力が絶対に必要になる。火力に乏しい戦闘機が魔兵機を落すには奇襲による強襲以外方法がない。いまここで使ってしまったら、鉄の塊であるサイクロプスもどきを落せなくなってしまう。


「ほらほら、さっさと逃げないと落ちてしまうぞ!」


 胸部を展開させて、更にロケット弾を射出させる。だが、弾丸の軌道はゼロ戦から大きく上方へ逸れて行くと閃光と放ちながら爆発する。


「これは、閃光弾か!?」

「いまだ、隊長! やってしまえ」

「おう、よくやった。この戦いが終わったら存分に報酬をくれてやる!」


 奇妙な動きを見せていたジオットの準備が終わったのだろう。

 敵は一度解除した砲塔を連結させ、一丁の巨大ライフルとさせて変形させていたようだ。

 どうやらあれが奴のパイロットスキルのようだ。あんな変形機構など物理的に近い。


 ……やばい。


 カイセイの直感が「あれはやばい」と訴えてきている。

 あの巨大ライフルから放たれるマテリアル砲がどれほどの威力を誇っているか想像できないが、あれが敵の切り札であることは確かだろう。火力と装甲を重視しているだけあって、あの巨大ライフルの一撃は今までの砲撃以上だと推測できる。どうにかして回避しなくては紙装甲のゼロ戦だと木端微塵どころか灰と化してしまうかもしれない。


「バレル展開。マテリアルゲージ150%。セーフティー解除。いくぜ、出来損ないのブレイバー。これでデュカリオン聖国は俺達のものだ!」


【ラスターカノン・ドライブ起動】


 巨大ライフルから特大のマテリアル砲が放出される。ラスターカノンの前を遮る障害物は悉く光の脅威によって飲み込まれ塵芥と化していく。威力もさることながら、一番の脅威はゼロ戦に迫り寄ってくる弾速であった。今の今までのマテリアル砲と比べると倍速以上の速さでカイセイのゼロ戦に迫り寄ってくる。


「……避けきれるか」


【アルクスター・ドライブ起動】


 最後の一回であったアルクスターを起動させる。一瞬にして十メートル下方に移動する事が出来たが、それでも敵のラスターカノンの威力範囲からまだ逃げ切れていなかった。最大速度でラスターカノンを避けようと試みるのだが、尾翼の一部がラスターカノンの衝撃によって破損されてしまう。

 尾翼を失った事で機体バランスが崩れ始める。そんな隙を見逃す事無く引き止め役をしていたジオットが両腕の砲塔からマテリアル砲で追撃を図る。回避する事ままならず敵のマテリアル砲はゼロ戦の両翼を貫いて行った。

 翼をもぎ取られたゼロ戦は徐々に力を失いつつある。ダメージ表示しているモニターからもこれ以上の戦闘行為は不可能であると訴えていた。けど、カイセイは諦める訳にはいかなかった。


「まだだ! まだだ、ゼロ。お前が落ちたらお終いなんだ。お前が負けたら、誰があの星を護ってやれる。まだ何一つ恩を返せていないんだぞ、ゼロ!」


 このふざけたゲーム、プラネットウォーに負けてしまうとカイセイを拾ってくれた惑星の住人達が敵の惑星の奴隷となってしまう。

 もともと何度も負け続けてしまったせいで資源や財産の殆どを搾り取られてしまったから、いずれこうなる運命だとあの人達は笑っていたが、夜な夜ないずれ訪れる不幸に恐れ悲しみに苛まされている姿をカイセイは見てしまった。

 イクシオン皇国に召喚され、使えないと分かるとゴミの様に捨てられたカイセイを救ってくれたのがデュカリオン聖国の姫様であった。


『こ、ここで見捨てたら後味が悪いじゃない。し、仕方がないから助けてあげるわ』


 彼女はついでに助けたと言っていたが、それでも命を救われた事に変わりはない。

 訪れる死の恐怖から救ってくれた彼女には感謝してもし足りなかった。


『えへへ。料理には少し自信があるのよ』


 貧富で苦しんでいるはずなのに、少ない食料で作ってくれたスープの味を今でも鮮明に覚えている。

 自分の取り分が半分以下になってしまった事に申し訳なさで一杯であった。


『父様と母様が亡くなった今、私が頑張るしかないんだから。……がんばれ、私』


 一人で自国を支え続けていくことを決意し、頑張り続けていた彼女の力になりたいと思ってしまった。


『私一人でデュカリオンが復興出来るなら、よろ……よろごんでぇ、ごのみを――』


 隣国星、ダモクレス帝国の皇子から復興の手助けを餌にして、姫君の身を捧げろと言われた時も迷わず自分の身を捧げる事をいとわなかった愛国心に心を打たれた事か。


『そんな、約束が違います。復興するために我が国民を捧げろなんて聞いていません』


 そんな彼女の愛国心を利用して、国の隷属化を企むダモクレス帝国の皇子の非道な考えにどれほど怒りを覚えたことか。


『私達、デュカリオンはダモクレスにプラネットウォーを仕掛けます。……カイセイ、あなたはこのゼロに乗って別の惑星に逃げてください。関係ないあなたを巻き込みたくありません』


 自国の危機にも関わらず、最後の最後まで関係ないカイセイの身を案じてくれた姫君の為に戦う事を決意したのだ。勝利の栄光を捧げると彼女の誓ったのだ。借りた恩を返すと不安げな顔を見せた姫君に「任せろ」と豪語してしまったのだ。


 ――だからこそ!


「お前も、スクラップ当然だったところを救ってくれた姫さんの為に、俺と一緒になって戦ってくれているんだろ! 最後まで根性を見せろ、誇り高きゼロよ!」


 けど、どんなに思いの丈を告げた所でゼロが蘇る事はない。

 感情を高ぶらせた所で奇跡がそう簡単に起きない事は当然のこと――だと思っていた。


 ――ホシゾラ・カイセイはレベルアップしました。

 ――ホシゾラ・カイセイは【トリックスター・ドライブ】を習得しました。

 ――【アルクスター・ドライブ】がレベルアップしました。

 ――零式戦闘機がレベルアップしました。

 ――零式戦闘機が【雷電システム】を習得しました。

 ――零式戦闘機が【マテリアル弾弐】を換装しました。


 次から次へと信じがたい言葉が表示されていく。

 確かにイクシオン皇国に呼び出された時、ステータスを見る方法は教えてくれたが、レベルを上げる手段は教えてくれなかった。

 それに加えて、相棒であるゼロ戦にもレベルが存在している事など知らなかったのだ。本来ならば直ぐにステータスを表示させて情報を得るところであるのだが、今は余裕がない

 ご都合的な展開だと思いつつも、それでも起きた奇跡に感謝する。


「行こうぜ、ゼロ! もう一度、もう一度! この銀河を駆け抜けるぞ! 【雷電システム】及び【トリックスター・ドライブ】起動!」


***


「……おかしい」


 未だに緊急脱出マテリアルプログラム、エスケープが発動しない事に怪訝に思ったのだろう。隊長と呼ばれたジオットの乗り手は自分の傍まで移動してきたチームメイトに「気を抜くな」と命令する。


「隊長、最後まで気を抜くなと言うのは分かりますが、奴は既に虫の息。ここは俺のパイロット・スキル【クラスター・ドライブ】でとどめを刺すことを進言致します」


 隊長は「なるほどな」と頷く。チームメイトであるクラースのパイロットスキル【クラスター・ドライブ】は銀河の星屑を集めて、弾丸を作り出して相手に放つ攻撃スキルだ。

 威力は絶大であるのだが、代わりに発動するための時間が有し、使用回数も一回と厳しめな条件であるが為に使用を控えさせていた。

 けど、この状況だったらクラースのスキル【クラスター・ドライブ】は最大の威力を発揮してくれるだろう。隊長は彼の進言を許可し、許可を受けたクラースはスキルの発動を始める。


「これで、我が皇子もお喜び――。ん、なんだ、あれは!?」


 今の今まで身動きを見せていなかったゼロの周囲に光が集まり始める。その光景を見た隊長はよくない傾向と思ったのだろう。

 何せ似た様な光景を見た事があるのだ。もし、その予想が当たってしまったら、最悪な展開である。


「あれは……。くそっ! まだか、クラース!」

「もう少しです、隊長」

「急げ! 敵の動きに変化が出たぞ。あれは、ギミックスキルの輝きだ!」

「もう少しで……出来た!」


【クラスター・ドライブ起動】


 宇宙にちりばめられていた星屑を集め、無数の弾丸を作り出す。一発一発はマテリアル砲やロケット弾と比べると微々たるものであるが、膨大な数によるクラスター弾は十分脅威に値する実弾である。それに加えて、これらの弾丸はクラースの思い通りに軌道を描いて放出させることが出来る。


「いけ、クラスター弾! あいつの息の根を止めろ!」


 無数の実弾の雨がゼロへ降り注がれる。数の暴力によりゼロは機体が穴凹だらけになると二人は思っていたのだが、光に包まれたゼロは四つの光となって四方に飛び、クラースの攻撃を避けきったのであった。


「……どう言う事だ、これは何のギミックスキルなんだよ!」

「落ち着け、クラース。敵のスキルに惑わせられるな」

「冷静になれなんて無理だぜ、隊長。貴様、なんだよそれ。なんで姿形が変わるんだよ! 一気に四機に増えるなんて反則にも程があるだろうが!!」


 クラースが戸惑うのも無理はなかったであろう。

 隊長である自分も俄然に広がる光景を見せられて、唖然としてしまうぐらいなんだから。


「……反則? 失礼な。これは俺とゼロが新しく手に入れたスキル、零式戦闘機Ver【雷電】と【トリックスター・ドライブ】の効果がもたらした恩恵だ。新しいゼロの力、とくと拝んで行け!」


 新たなる姿、ゼロ雷電が再び銀河を駆け抜ける。

 しかも、今度はトリックスターによって作られた三体の虚像機も追従する形となって。

 四機編成で編隊を組んだゼロ雷電は先ほどの二倍近くの速力でジオットに突撃する。


「いくら新しい力を手に入れた所で、俺達のジオットに勝てる訳がないんだよ。クラース、もう一度【ラスターカノン】をぶつける。お前はもう一度奴の動きを封じろ」

「了解です!」


 どんな優れたスキルを習得した所で、絶大なる力のラスターカノンの前では無力。

 こちらも使用回数二回と厳しめな条件であるが、放つことができれば確実に落す自信があった。再びラスターカノンを放つ為に隊長機は後方へ下がり、クラースのジオットが前に出て大量のロケット弾で牽制を行う。


「同じやり方が通じると思うなよ!」


 弾幕で動きを制限されると再び強大なマテリアル砲の餌食になってしまう。それを未然に防ぐためにゼロ雷電は新しく換装されたマテリアル弾弐で迎撃を始めた。


「お前のマテリアル弾の連射速度よりも俺のロケット弾の射出速度の方が上だ」

「あいにくだな。このマテリアル弾弐は炸裂型なんでね」

「なんだと!?」


 ゼロ雷電から射出されるマテリアル弾弐は一定の距離で炸裂すると、近くにあるロケット弾を巻き込んで爆散していく。通常弾のマテリアル弾よりも射程距離は短めであるが、威力と威力範囲が広がっているため、ジオットのロケット弾を打ち払うのに十分の効力を発揮していた。


「くっ。なら、こいつはどうだ! お前の機体の装甲だと当たれば即エスケープだ!」


 ロケット弾による弾幕戦法が通じないと知ると、六門の砲塔をゼロ雷電に向けて砲撃を始める。弾速はロケット弾よりも劣るが、散弾型のマテリアル砲ならば広範囲に渡って攻撃をすることが可能。加えて、このマテリアル砲には追尾システムも搭載されている。故にどんなに機動力に優れている機体でも全砲撃を回避する事は不可能だ。


「言ったはずだ。同じやり方が通ると思うなよ!」


【トリックスター・ドライブ起動】


 二度目のトリックスターが発動される。今度はそれぞれの機体から五体ずつ虚像を生み出し、合計二十体のゼロ雷電が新たに生み出される。


「悪いな、虚像達! 囮となって、敵の砲撃に突撃しろ!」


 命令を受けた虚像ゼロ雷電達が本体を狙う砲撃に突貫する。砲撃を受けた虚像ゼロ雷電達は砲撃を受けた直後に消え去ってしまう。自ら受けた砲撃と共に。


「な、なんだと」

「これがトリックスターの効力。虚像を生み出し、虚像を受けた攻撃は共に効力を失う!」


 トリックスター・ドライブは虚像と言う実態を生み出す能力。更に虚像が受けた攻撃は虚像と共に効力を失い無効かさせる追加能力を有していた。

 カイセイはこの能力を使い、全ての虚像を囮としてジオットの散弾型マテリアル砲の全てを無効化させたのであった。

 弾幕のバリアが無くなったのを気に、ゼロ雷電をジオット目掛けて突撃させる。クラースは直ぐに迎撃を図ろうとするのだが、ゼロ雷電の機動力が想像以上に上がっていたせいで、間合いを詰められてしまう。

 長距離型ジオットは近接戦闘に優れていなかった。マテリアルソードを実装しているとは言え、それはあくまで万が一に備えただけ。距離を開けて攻撃する戦法に慣れていたクラースは経験したことのない間合いのせいで、判断を鈍らせてしまう。その隙はわずか一秒足らず。けれど、戦闘で一秒の隙は大きかった。ジオットがマテリアルソードを展開させようとした直後、ゼロ雷電のマテリアル弾弐が射出される。三点射されたマテリアル弾弐はジオットの頭部へ正確に放たれ、頭部は炸裂型の効力で砕け散ってしまう。


「全センサーが頭部に搭載されていたんだろ? これで、ご自慢の魔兵機も十分に発揮できないな!」


 カイセイの言うとおり、ジオットの全モニターが頭部に搭載されている。

 その為、頭部が破損されてしまうとシステムの大半が機能不全を起こしてしまうのだ。

 操縦席にいるクラースは全モニターがダウンした事に苛立ちつつ復旧を試みるのだが、一向に改善される様子がなかった。


「くそっ!? ただの戦闘機に俺達ジオット兵団が負けるなんて……。認めない、俺は認めないぞ!」

「認めなくて結構。だが、あんたは俺とゼロ雷電の敵ではなった。それだけだ」

「ちっくしょぉぉおおおおお!」


 悔しがるクラースのジオットを通り過ぎ、厄介な一撃の準備を行っている隊長機へ突撃する。


「クラースすら倒したか。敵ながら中々見上げた奴だ。どうやら、お前を甘く見過ぎていたようだな」

「俺程度で驚いているなら、イクシオン皇国のブレイバー達はさぞかし驚く事だろうな。奴らは全員化け物みたいだぜ」

「なるほど、そのようだな。ならば、なおさらお前の様な出来損ないのブレイバーに負けられなくなってしまったな。俺のラスターカノンの餌食となってもらおう」

「甘いな。同じ相手に二度も同じ方法が通じると思うなよ。お前の部下はそれで負けたんだぜ」

「かもしれないな。だが、俺のラスターカノンは理解しても免れない攻撃だ。通じないと言うならば、見事に避けて見ろ。デュカリオンのブレイバー、ホシゾラ・カイセイよ!」

「あぁ、行くぜ! ダモクレスの英雄、クレス・バルバラード!」


【ラスターカノン・ドライブ起動】

【アルクスター・ドライブ起動】


 再び、光の奔流となって闇夜を飲み込むラスターカノン。

 アルクスター・ドライブを使った様子が見られたが、分析結果によるとゼロ雷電が飛べる空間全てをラスターカノンで撃抜けたはず。たとえ、どんな所へ飛んだ所で、回避する事が不可能なはずだ。

 だがらジオットのセンサーから「後ろを振り向け」と信号を受けた時、まさかと思ってしまった。

 そのまさか、振り向いた先には何の損傷も受けていなかったゼロ雷電の姿があった。


「そんな、バカな。どうやって、どうやって俺のラスターカノンを避けきった。お前のアルクスターでは避けられないはずだろうが」

「言ったはずだ、同じ攻撃は通じない。俺のアルクスターは先の戦いでレベルアップしたんだよ。移動距離も幾分か伸びたおかげで、こうしてお前にとどめを刺せる!」


 レベルアップした恩恵で、一度の戦闘でアルクスターが発動できる回数が一回増えたのであった。同時に移動可能距離も十五メートルと増大したおかげで、クレスの背後にジャンプする事が出来、ジオットの頭部を破壊する決定打となったのであった。


「……俺の勝ちだ。いや、俺達の勝利だぁぁあああああ!」


 これが後に語り継がれるゼロ・ブレイバーのデビュー戦であった。

 今後、彼はゼロ戦と共に数多くの人型魔兵機と相対し、数多のパイロットスキル【スター・ドライブ】シリーズを駆使して勝利をもぎ取る事になる。

普通に考えて宇宙空間でプロペラ駆動型戦闘機が動くわけないだろうが、とご指摘すると思われますがそこはスルーの方向で。

スペックで劣る戦闘機が人型ロボットをバッタバッタ薙ぎ払ったら格好よくありません?

え? 思いませんって? それは失礼しました。

そんなコンセプトで書いたなんりゃって宇宙戦記物でした。

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